Z世代は地域社会とつながる旅を志向。調査で分かった地域貢献意識の高さや地方移住の動きを解説

SUUMOジャーナル

宿やホテルを予約できる「じゃらん」のじゃらんリサーチセンターでは、宿泊旅行についての大型調査「じゃらん宿泊旅行調査」を定期的に行っている。今回、Z世代に焦点を当てて、Z世代の価値観や旅行への意識について再分析した結果を公表した。それによると、Z世代は「地域貢献意識」が高く、「地方への移住を考える旅」も実施しているという。地方移住の鍵になると見られるZ世代の意識について詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
じゃらん宿泊旅行調査を再分析/リクルート じゃらんリサーチセンター

Z世代で多い「地域体験交流タイプ」、女性は「効率・欲張りタイプ」も

公表されたリリースでは、「Z世代」を調査対象の20代(18歳~29歳)として分析している。調査対象全体をクラスター分析すると、「1.地域体験交流」「2.地域訪問」「3.話題性重視」「4.効率・欲張り」「5.リピートなじみ」「6.計画」「7.こだわりなし」の7タイプに分類できる。

なかでも、「地域体験交流タイプ」は、Z世代男性で29.6%、女性で15.8%の出現率となり、他の世代よりも多いことが分かった。このタイプは、観光したら終わるといったものではなく、「地域や地元の文化や生活習慣を深く理解し、地域社会とのつながりを築くことに重点が置かれている」点に特徴があるという。

また、「地域体験交流タイプ」は男性が多いのに対して、「効率・欲張りタイプ」は女性が多く、なかでもZ世代の女性は22.6%と最多だった。効率・欲張りタイプの特徴は、効率よくできるだけ多くの場所を回り、新しい場所への好奇心が強いタイプだという。女性のほうが、友人や恋人との旅行比率が高いことも影響しているそうだ。

●宿泊旅行に対する意識 クラスター構成2023(性年代別)

宿泊旅行に対する意識 クラスター構成2023(性年代別)

出典:じゃらんリサーチセンター「じゃらん宿泊旅行調査再分析」より転載

Z世代の「地方への移住」を考える旅は実施フェーズに

じゃらんリサーチセンターによると、Z世代に多い「地域体験交流タイプ」で強く見られる因子が「地域志向性」だという。「地域志向性」と相関の強い6項目(ⅰ地域のためになること、貢献できることを選ぶ、ⅱ将来の移住やライフスタイルの参考になりそうな旅をする、ⅲ地元の人に積極的に話しかけて情報を聞いたり交流する、ⅳ旅行先の風土や生活習慣を体験する、v自ら主体的に参加する・体験する、ⅵ暮らすように旅をする)を可視化すると、次の画像のようになり、Z世代の地域志向性の高さが分かるという。

●Z世代の地域とのかかわりへの意識と実施(男女別)

Z世代の地域とのかかわりへの意識と実施(男女別)

出典:じゃらんリサーチセンター「じゃらん宿泊旅行調査再分析」より転載

また、コロナ禍を経てZ世代で最も変化した項目は、「地域のためになること、貢献できることを選ぶ」で、男女ともに「地域貢献意識」が大きく上昇したという。

ほかにも、「地方移住」はコロナ禍で注目度が一気に高まったキーワードだが、コロナ禍前後を比べると「将来の移住やライフスタイルの参考になりそうな旅をする」ことへの関心が高まり、実施ポイントも増加していることから、関心にとどまらず実施フェーズへの移行の兆しが見られるという。

増加が期待される「地方移住」について、Z世代が関心を持ち、動き出しているとは、なんとも頼もしい限りだ。

Z世代の価値観は、地域で活躍することがかっこいい!?

この分析を担当した同研究員の池内摩耶さんは、分析結果を「とーりまかし別冊 研究年鑑 2024」で詳しくまとめている。そこで池内さんは、「なぜZ世代は『地域とのかかわり』を求めるのか」についても考察している。

「①オンラインやリモートなど学び方、働き方が柔軟になったことで移住含め地域がより身近な存在となったこと。②Z世代の三大都市圏居住率は年々高まり約6割で地域を知る機会に乏しいこと。③地域に居を構え地域活性に向き合う若手への注目など、コロナによって「地域」というものを強く意識する機会が増えたこと。主にこれらの要因が、Z世代が地域とのかかわりを求める動機付けとなり、地域で活躍することへの憧れ・かっこよさのような志向性が表れていると考えられる」という考察だ。

Z世代がこれからの地方移住の核になりそうだ、という結果については頼もしいと思うが、一方で受け入れ側の体制の改善にも期待したい。地方自治体が予算を取って地方移住を呼び込むさまざまな対策を用意しているが、地域特性を生かした魅力的な対策でなければ、「選ばれる地方」にならない。また、受け入れる地元の住民が「よそもの」意識を持っていると、移住は進まない。

人口減少、急激な高齢化が進むなか、移住先としての地方の選別がなされるようになるだろう。こうした課題を解決していかないと、地域志向性の高いZ世代に注目されることが難しいかもしれない。

●関連サイト
じゃらんリサーチセンター「じゃらん宿泊旅行調査を再分析」
じゃらんリサーチセンター「とーりまかし別冊 研究年鑑 2024」

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記事提供元:タビリス