台風21号と北海道地震、「想定外」は危機管理の欠陥【舛添要一の僭越ですが(107)】苫東厚真火力への一極依存のツケ

舛添 要一 (国際政治学者)(News Socra)

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共同通信

 台風21号による被害、とりわけ関西空港の機能麻痺に対して、官民挙げて対応策を講じているときに、北海道が大地震に襲われた。9月6日未明に、胆振地方を震源とする最大震度7の地震が大きな被害をもたらした。余震もまだ続いており、警戒が必要な状況である。

 前回(106)の本欄で、関空被害に関して、危機管理の盲点について述べたが、北海道の地震もまた、大きな教訓を残している。

 私は、今回多くの犠牲者が出た厚真町の近くの白老町を拠点に、20年もの間活動してきたので、胆振地方はよく知っているし、友人もたくさんいる。メールなどで現地の情報を入れてもらっているが、停電によって日常生活が不可能になっていることが最大の問題であった。とくに医療機関では、人工透析をはじめ患者の生命に関わるような深刻な事態が生じた。

 ブラックアウト、つまり北海道のほぼ全域の約295万戸が停電となる事態を、資源エネルギー庁も北海道電力も考えていなかったようである。危機管理に「想定外」は許されない。

 震源地近くにある苫東厚真火力発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、道内の使用電力の約半分を供給している。これが停止したため、急激に供給電力が減り、電力の需給バランスが乱れて周波数の低下をもたらしたのである。

 これをそのまま放置すると、発電機のタービンを破損するので、稼働していた他の火力発電所も一斉に停止したのである。自己保存のためのシステムになっているが、これがブラックアウトを発生させたのである。

 2011年の東日本大震災のときには、計画停電によって需給バランスの乱れを防いだが、今回はそのような措置をとる前に、深刻な事態になってしまった。

 もう一つの問題は、207万キロワットの発電能力を持つ泊原子力発電所が再稼働していなかったことである。そのため、北電の電源構成を見ると、火力が75%、再生可能エネルギーが19%、水力が4%、その他が2%という歪な形になっている。この点での反省は、電源構成をもっと多様化し、バランスのとれたものにするべきだということである。原発が稼働しておれば、長期にわたる停電は避けえた可能性がある。

 原発再稼働については賛否両論があるし、再生可能エネルギーの活用などで長期的には依存度を減らすべきであろうが、今回のような事態を念頭において問題を考えることも必要である。

 以上の点については、集中型システムの弱点が露呈したのであり、分散型システムのメリットを活かす発電所配置や電源構成を再構築すべきであろう。

 さらに次の問題は、他の電力会社との連携である。今回は、本州と北海道の間で電力を融通しあう「北本連携線」を機能させることができなかった。それは、受け入れ側の北電が全面停電したために、直流・交流変換設備が作動しなかったからである。

 要するに、ブラックアウトという事態を想定に入れてなかったことが、危機管理上、大きな失敗だったのである。関西空港を水没させた高波が「想定外」だと空港関係者が述べたが、それでは困るのであり、今回の停電についても同様である。

 その点では、本欄の(104)で紹介した東京の江東、江戸川、葛飾、足立、墨田の江東5区広域推進協議会の「江東5区大規模水害広域避難計画」は、危機の想定については評価してよい。荒川と江戸川が同時に氾濫した場合、最悪のケースでこの地区の9割以上が水没し、約100万人が住む江戸川区西部と江東区東部などでは2週間以上浸水が続き、浸水の深さは10メートルにも達するという。

 それから、関空については、空港内に孤立している乗客や従業員の数の把握が遅れてしまった。当日のマスコミは3000人と5000人の二説を流し、後になって運営会社は8000人と発表した。

 対象になる人々の数を、大まかで良いから把握することは、危機管理の第一歩である。これを私はアメリカの危機管理専門家に徹底的に鍛えられた。人数についての情報が錯綜すれば、救助計画も立てられないからである。今回の人数把握は、空港運営会社の責任である。

 9.11の東日本大震災も、今回の台風21号も北海道地震も、日本の危機管理の欠陥に警鐘を鳴らしていると言わざるをえない。災害大国である日本、どこでまた「想定外」の災害が起こるか分からないからである。

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