米中で北朝鮮という「駒」取り合い
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【舛添要一の僭越ですが(116)】日本は同盟関係にとらわれない外交を

舛添 要一 (国際政治学者)(News Socra)

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6月の米朝首脳会談=Reuters

 11月6日の中間選挙を前に、2回目の米朝首脳会談を開催する準備が進んでいる。ポンペオ国務長官は、7日に北朝鮮で金正恩委員長と会談したのみならず、その前後に日本、韓国、中国を訪ね、首脳会談のお膳立てに奔走した。

 一方、北朝鮮は対米交渉担当の崔 善姫(チェ・ソニ)外務次官が、6日にモスクワ入りし、ロシアや中国と協議を行っている。また、年内にも金正恩の初訪露を実現させるための準備も始めたようである。

 金正恩の外国訪問については、先月の平壌での南北首脳会談後の記者会見(9月19日)で、「早い時期にソウルを訪問することを約束した」と自ら表明している。

 ポンペオ米国務長官は、平壌で金正恩委員長と会談した際に拉致問題も提起したと説明した。日朝首脳会談を成功させるためには、拉致問題の解決が不可欠であることを主張したと思われる。

 また、会談では、北朝鮮は坑道などを爆破したとされる豊渓里核実験場の査察団を受け入れるという。とりわけ、6月のシンガポールでの一回目の米朝首脳会談で合意された諸事項、とりわけ北朝鮮の非核化を実現できるかが焦点となる。

 北朝鮮としては、アメリカとの首脳会談を開き、核実験やミサイル発射も中止したにもかかわらず、何らの見返りがないのが不満である。せめて経済制裁の緩和を求めたいところだが、非核化を実行しないならば、それは認められないとアメリカは主張する。

 そこで、かねてからの友好国であるロシアや中国の協力を求めているのであり、金正恩の初のロシア訪問もそのような意図に基づくものである。中露のみならず、金正恩は、北朝鮮に好意的な文在寅も自らの陣営に取り込んで、何としても経済制裁の解除に漕ぎ着けたいと考えている。

 北朝鮮をめぐる国際関係の図式は、米中対立、米露対立を背景にして、<アメリカvs 中国・ロシア>となっている。北朝鮮の非核化については、三国とも賛成であるが、今後の経済制裁のあり方については、強硬派のアメリカと宥和派の中露が激しく対立するものと思われる。

 8日に北京で行われた米中外相会談では、王毅外相とポンペオ国務長官との間で非難の応酬が行われた。王毅外相は、アメリカの「誤った言動」や台湾への関与を批判し、中間選挙に中国が干渉しているというトランプ政権の主張を一蹴した。これに対して、ポンペオ国務長官は、米中には「根本的に一致しないものがある」と述べ、中国の措置には「大きな懸念がある」と応じた。

 とくに米中経済摩擦、さらには世界の覇権を巡る両国の競争は激しさを増しており、北朝鮮問題を共に解決するというよりも、北朝鮮という駒をいかにして自国に有利なように使うかという発想に変わりつつあるように思う。

 それは、朝鮮半島の統一の実現が遠ざかることを意味する。来たるべき第二回目の米朝首脳会談で、朝鮮戦争の終結宣言が出されるとしても、それが経済制裁の解除を意味しないならば、北朝鮮にとって何のメリットもない。

 首脳会談は中間選挙後になるとトランプは言明したが、短期的な外交成果を出すべく、拙速主義に陥るならば、世界にとって大きな禍根を残す。

 問題は、文在寅の韓国である。非核化などで日米と協調する姿勢は堅持しているが、朝鮮民族の統一という旗印が全てに優先するような発想が強くなっている。

 経済制裁については、心情的には中露と同様に、緩和する方向を探っているし、経済特区のような形で北朝鮮の経済成長を後押しする構えである。

 言い古されたことであるが、「北風か太陽か」という外交選択肢については、明確な太陽路線である。しかし、それが成功する保証はどこにもない。

 日本もまた問題である。自発的に日朝関係を切り開こうという積極的な姿勢が見られなかった。小泉政権は、拉致被害者奪還のために水面下の交渉を行い、一部の被害者の帰国につながったが、安倍政権も同様な外交努力を展開していることを祈るばかりである。

 北方領土問題も、四島一括返還方針を堅持し続けたため、柔軟に局面を打開するチャンスをこれまでも活かしきれなかった。これからの世界がパックス・アメリカーナになろうが、パックス・シニカになろうが、日本が生き残っていくためにどうするのか、柔軟、かつ長期的な外交戦略が求められている。

 同時に、歴史を振り返ると、一つの同盟関係がいつまでも続くわけではないことが理解できる。明治の指導者には存在したその認識が、戦後日本のリーダーたちには欠けている。

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