シャイで謙虚な大坂なおみ人気が示すグローバル人材の条件相手の気持ちや立場を理解、尊重できるか

中島 敏 (ライター)(News Socra)

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大坂なおみ選手=CC

 大坂なおみの全米オープン優勝が「世界4大テニス大会での日本人初優勝」として騒がれている。

 母親が日本人で日本国籍があるといってもアメリカ国籍との2重国籍。日本に住んだのは3歳まで、以降はアメリカ在住で英語が日常言語であり日本語は片言しかしゃべれないため、大坂なおみを日本人と言えるのかといった論調も出た。こういった意見は、本人が日本国籍を申告しているのだからという理由で「偏狭な見方」として封殺されたかに見える。

 だが、一方でこの意見は「日本人」とは何かという極めて難しい疑問を投げかけている。そしてその裏返しとして、現在の日本でもてはやされている「グローバル人材」とは何か、という疑問にも通じるものだ。本稿では、大坂なおみの性格や言動そしてそれがどのように世界に受け止められたかを見ていくことによって「グローバル人材」とは何かについて考えてみたい。

 報道によれば大坂なおみの性格は本来「シャイで完璧主義で謙虚」な性格だと言われている。典型的な日本人の性格と言われていることが全て当てはまっている。母親が日本人だということから、家庭での日常の躾や教育が反映していると考えるのが妥当だろう。そういった性格が顕著に現れた、彼女の全米オープン決勝戦後の言動はアメリカでも世界でも称賛されているという。

 こういった性格は日本で「グローバル人材」を語る際には、あまりグローバル的ではない態度と言われることが多い。「雄弁で多少のミスは気にせず自信に満ちている」人間がグローバル的な性格を持った人間と考えている人が多いのではないだろうか。そして従来の日本的な性格とこれからのグローバル人材の性格とは相容れないと考えている人も多いのではないだろうか。

 大坂なおみの活躍と彼女が人気を獲得しつつあるということは、日本的な性格であってもグローバルに受け入れられることを実証している。逆に、雄弁であっても中身が無ければ意味は無く、多少のミスは気にせず自信に満ちているのは単に向上心の欠如と自信過剰を意味しているとも考えられる。

 「そんなことは当たり前だ、大阪なおみは英語が出来るから受け入れられたんだ」と言う人がいるかもしれない。海外で活動するためには、もちろん最低限の外国語の能力は必要だ。しかし、外国語、特に英語が出来ても話せてもそれだけでグローバル人材になれるわけではない。

 日本では外国人が上手な日本語を話すと「あなたは日本語がお上手ですね」と言われるものだ。一方で、筆者のアメリカでの大学院、現地コンサルタント会社での10年以上の経験から言って、アメリカではいくら上手に英語を話しても「あなたは英語がお上手ですね」などと言われることはない。逆にいくら下手なブロークンイングリッシュでも、コミュケーションさえ取れれば「そんな下手な英語では相手にできない」と言われることもない。

 「そんなことも分かっている。グローバル人材に必要なのは外国語での交渉力だ」と言う人がいるかもしれない。だが外国語の能力と交渉力が無関係なのは自明のことだ。なぜなら、その国の言語が出来れば交渉力があるとするなら、日本語が出来る日本人は全員日本での交渉力があることになるが、実際にはそんなことは無いからだ。

 筆者がアメリカに住んでいた際の友人に、お世辞にも英語が上手いとは言えない人がいたが、その人の交渉力、コミュニケーション力は筆者よりもはるかに高かったという経験もある。

 では交渉力あるいは日本でよく言われるコミュニケーション力に必要なものとは何だろう。筆者が日本に戻ってから裁判支援のコンサルタントをしていた際に弁護士の中でも優秀だと言われる人たちと一緒に仕事をしていて分かったことは、おそらく理想的な交渉とは、喧嘩をすることでもなく、相手を脅すことでもなく、相手の弱みに付け込むことでもなく、お互いに相手を理解し合って合意に至るものだということだ。

 そのために最も重要なことを大阪なおみが身をもって示している。彼女が全米オープンの決勝で戦った相手のセリーナ・ウイリアムズはアメリカ人の人気選手で実力もあった。その相手を破ったことで大坂なおみは「悪役」の烙印を押されてしまう可能性さえあった。

 にもかかわらず彼女の決勝戦後の言動が称賛され、彼女が海外でも人気を獲得しつつあるのは、ただ単に自分の強さを誇示するのではなく、彼女がウイリアムズの気持ちをよく理解してウイリアムズを思いやった発言をし、その一方で、自分は一人のテニス選手として臆することなく戦った、と自分の立場もきちんと伝えたからだ。

 相手の気持ちや立場を理解、尊重し、そのことを相手に伝えたうえで、同時に臆することなく自分の立場を伝えること。それがグローバルに受け入れられるために必要な重要な要素であることを大坂なおみは示したのではないだろうか。 

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