農業事故の死者、年300人、就業人口あたりで建設業の2倍
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高齢者に多く、事故件数は年7万件

山田 優 (農業ジャーナリスト)(News Socra)

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 都会の消費者にとって、農業にはなかなか見えない部分がある。そ の一つが農作業に潜む危険性だ。毎年300人以上が農作業中の事 故で命を落とす。物損やけがなどを含めた事故件数は7万件と推計 されている。多くの農家がヒヤリ・ハットに直面しながら農作業を こなしている。とっさに対応しきれない高齢者が、主な犠牲者だ。

▽年300人以上の死者

 農水省は毎年、農作業死亡事故の発生状況を公表している。201 6年は312人が犠牲になった。その7割は農業機械の操作に関わ っている。統計の残る過去50年近く、毎年300~400人が農 作業事故で死んでいる。16年もその延長線にあるが、408人だ った直近のピーク09年から、7年連続の減少となった。

 事態はわずかながら改善の方向にあるが、農水省の見方は少し慎重 だ。

 「農業従事者の減少でそもそも農作業をする人が年々減っている。 死者数は減っているが、危険性が改善されたとは言い切れない」( 生産資材対策室)。実際に産業別就業人口10万人当たりの事故死 者数は、農業が建設業の2倍で、 しかもその差は広がる傾向にあるという。

▽死亡の8割が65歳以上

 なぜ、農業で事故が相次ぐのか。第1は農業従事者の高齢化の進行 だ。農業就業人口175万人の中で120万人が65歳以上だ。人 手不足の中で農業機械を利用する場面が増え、高齢農家がトラクタ ーなどの操作を誤って転倒するような事例が増えている。 農作業死亡者に占める65歳以上の割合は80%を超し、 80歳以上でも38%だ。高齢者に焦点を当てた対策が求められる 。

 第2には農作業そのものに潜む危険性がある。野外の自然環境で働 くため、雨の中で傾斜地や溝を走行したり、大きな牛を扱ったりす ることが少なくない。背の高い果樹で収穫中のはしごから転落、家 畜飼料の切断中に腕が巻き込まれるなどのケースも多種多様だ。「 農業が最も危険な産業」というのは、先進国共通の現象でもある。

 第3は他産業で一般的な労災対策が浸透していないことが挙げられ る。建設現場では作業前に安全ミーティングが義務づけられ、労働 者はヘルメットや安全靴などの装着が当たり前。ところが農家の多 くは自営業で、対策は多くが自己責任だ。

▽農水省はプッシュ系対策

 第4は情報共有の弱さが挙げられる。他産業の場合、労災制度によ って、軽微なものも含めて事故はすべて報告が義務づけられる。厚 労省傘下の団体が中心となって事故の分析や防止対策をまとめ、企 業や業種を超えて共有する。

 重大な事故に至るまでには、数多くのヒヤリハットの経験があると される。軽微な事故も含めた教訓を、農業関係者すべてで共有する ことが大切だろう。

 情報共有という点で、新しい試みが最近始まった。JA共済連が、 共済金支払いデータを使って農作業事故発生状況を調べ、8月上旬 に公表した。年間の農作業事故発生件数が、7万件と見込まれるこ とが、この調査で初めて分かった。脚立からの転落やチェーンソー による傷害など、死亡に至らない事故の状況を類型化。行政機関と 協力しきめ細かい対策に結びつけるという。

 農水省は、9月1日から秋の農作業安全確認運動を全国で行う。従 来のポスター掲示など「呼び掛け系」対策に加え、地域の実情に合 わせた「リスク・カルテ」作成など対象者の行動を求める「 プッシュ系」対策を充実させる方針だ。

▽若い参入者への訓練も

 田村孝浩宇都宮大学准教授の話 農作業安全の対策は今後さらに重要になる。現在は高齢農家の事故 が目立つが、作業者は急速に世代交代する。新しく農作業に携わる 人たちは農業機械などの経験が少ない。高齢者だけではなく、若い 新規参入者に対する教育や訓練が必要になるだろう。

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