アート作品の価格形成が変わり始めている アートが変える社会と経済

ジョルダンニュース編集部


アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来

本記事は書籍「アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来(著:倉田陽一郎)」の内容を抜粋したものです。

誰もが気軽にアートコレクションができるようになり、アート業界でその影響力が高まってきたのが、アートコレクターです。

アートコレクターには、美術商よりもお金持ちの富裕層もいます。しかも、アートコレクター自らが美術大学の卒業展などに出向き、そこで若い作家を見出し、パトロンとして育成に務めている人も出てきています。変化の激しい時代の中で、最も変化したのは「アート作品の価格形成の在り方」です。前述したように、以前は目利きの美術商が主体となり、百貨店や画廊やギャラリーでアート作品を売って、アート作品の価格を決める時代でした。信頼できる美術商から購入することが最も安心できるコレクションの在り方でした。1990年代以降、時代はオークションとアートフェアの時代になり、アートコレクターはアートフェアでアートの価格を一つ一つ確認できるようになりました。そして、オークションの価格を確認すれば、今のおおよその市場価格が把握できるようになったのです。そのため、オークションの価格は、美術商がつける値段ではなく、アートコレクターが競りをして価格をつける値付け方式となりました。

しかし、オークションはセカンダリーマーケットで換金ができるほど、すでに世の中で相当認知され、評価と価値が定まったものだけにしか値段がつきません。美術商が展開するアーティスト育成のためのプライマリーマーケットでの値付けは美術商が担い、評価の定まった流通可能な作品はオークションで市場価格が見える時代になったのです。オークションでの価格形成は、公開の会場で、アートコレクター同士が競り上げるので、公正な取引として、価格の客観性が高まったと言えます。

アート作品の価格が高騰するわけ

オークションの価格形成にも穴があります。それは、落札を勝ち取る者(ウィナー)と、最後に諦める者(アンダービッダー)の二人により価格が決まるということです。たとえばビル・ゲイツとジェフ・ベゾスのような大富豪の二人が、まだ新人で、何の大した価値も付いていないアーティストの絵を気に入ってしまった場合、オークションでは二人の勝負になってしまいます。意地の張り合いで、どんどん値段が上がり、市場価格をはるかに超えて競り上がっていきます。

本来であれば100万円くらいの市場価格の作品が、大富豪二人の意地の張り合いでオークションパドル9を下ろさなくなることで、1億円以上の値段に跳ね上ったとしても、オークションではそれが落札価格として記録されることになります。当然その結果、市場では大富豪コレクター二人が意地の張り合いでついてしまった値段だと語り継がれることになりますが、オークション価格というのはあくまで富裕層のコレクターが二人で価格形成する形態であるという事実も残ります。

当然、ほとんどの参加者は、そのアーティストの市場価格や作品の状態など、さまざまな要因を知ったうえで参加します。そのため、通常は市場価格の範囲内で落札されることがほとんどです。しかし、あくまでオークションという価格形成の方式は、現代の資本主義を象徴するかのような競争原理の中で、価格が決まっていくということなのです。


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記事提供元:タビリス