連載 令和30年に思いを馳せて 未来を考える① 世界激変の中での新たな日常

ジョルダンニュース編集部



 2019年末、中国武漢市に出現した新型コロナウィルスは、あっという間に世界中に拡大した。ロックダウン、緊急事態、蔓延防止など、国、地域でやり方にはいろいろあるが、世界中で日常生活に大きな制限がつけられることとなった。2022年のゴールデンウィークを過ぎても、国内での移動ですら十分注意し、できるだけ控えるようにとのメッセージが出されている。もちろん、海外渡航には大きな制約が課せられている。また、コロナ前、あれほど日本国内に溢れていた海外からの観光客の姿も全く見当たらないままである。

 コロナウィルスは、次々と変異株が現れているが、日常生活を制約し続けるだけでは経済が成り立たず、おそるおそる規制解除に向けた動きが始まっている。しかし、そこに、ロシアのウクライナへの侵攻である。西側のエアラインはロシア上空を飛べなくなり、JAL、ANAなどの航空会社の業績の回復期待は一気に萎んでしまった。

 ウクライナ戦争は、西側陣営とロシア・中国の対立、という構図に発展、長引きそうな気配も見えている。グローバルなサプライチェーンは分断されはじめている。ロシアは原油、天然ガスの輸出国でもあり、一気にエネルギーコストが上昇、絶対量の不足もあり、この冬、計画停電が必至、といったことも囁かれはじめている。

 新型コロナウィルス、ウクライナ戦争という大きな2つのことが、ドラスチックに世の中を変えていくことはもちろんである。が、よく考えると、これ以前にも地球温暖化が大きな問題になっており、脱CO2はSDGsの17の目標として大きく取り上げられ始めていた。その流れに呼応し、移動絡みでは電気自動車(EV)、自動運転が話題になってきていた。何かが動き始めている。SDGs、新型コロナウィルス、ウクライナ侵攻は、世界大きく変わる文脈の中での一連の動きではないか。これからも意表を突かれることが次々と起こり、気づいたときには新しい日常が始まっているときではないだろうか。

 新しい動きを牽引するものは、新しいテクノロジーである。変化のための必要条件がテクノロジーであり、社会のありようが十分条件である。この20、30年では、ICT(情報通信技術)が大きく変化した。インターネットが登場し、私たちの日常は大きく変わった。日本では、年号が平成と重なる。

時価総額ランキング 伸びた企業はネットを軸


 日本の元号が平成の間に、世界を牽引する企業がどう変わったか。1989年から2019年の間の企業の世界時価総額ランキングを見てみよう。平成元年(1989年)12月末の世界の企業のトップ10は、日本電信電話(NTT)、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、IBM、三菱銀行、エクソン、東京電力、ロイヤル・ダッチ・シェルである。令和元年(2019年)4月末だと、マイクロソフト、アマゾン、アップル、アルファベット(グーグル)、フェイスブック、バークシャー・ハサウェイ、アリババ、テンセント、JPモルガン、ジョンソン&ジョンソンである。日本企業の凋落は凄まじいが、この間で伸びた企業は、インターネットを軸としている。

順位1989年2019年
1日本電信電話(NTT)マイクロソフト
2日本興業銀行アマゾン
3住友銀行アップル
4富士銀行アルファベット(グーグル)
5第一勧業銀行フェイスブック
6IBMバークシャー・ハサウェイ
7三菱銀行アリババ
8エクソンテンセント
9東京電力JPモルガン
10ロイヤル・ダッチ・シェルジョンソン&ジョンソン


シンギュラリティは3つの技術革命の融合から




 2045年というのは、米国の発明家レイ・カーツワイル博士が、AIが人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)の起こると予測した年である。1990年の著作「The Age of Intelligent Machines(知的機械の時代)」のなかで予測したインターネットの普及やコンピューターがチェスで人間に勝つことなどは、ほぼその通り実現している。2005年の著作「The Singularity Is Near : When Humans Transcend Biology(ポスト・ヒューマン誕生)」で遺伝子学(Genome Science)、ナノテクノロジー(Nano-technology)、ロボット工学技術(Robotics)の3つの技術革命が融合することで、私たちが住む社会や人生観、世界観が根本から変化するシンギュラリティが起きると述べている。*1)

 インターネットの登場、普及が平成のこの30年の大きな変化のもといである。僅か30年ではあるが、先ほど見たように、世界企業の番付は劇的に変わっている。平成元年のトップ10に入っていて令和元年には消滅している会社もあるし、令和元年のトップ10の中には平成元年にはなかった企業もある。

 2045年というのは、令和27年である。未来予測に数年の誤差はつきものでもある。シンギュラリティのおこるのを令和30年と考えて、令和30年の世界に思いを馳せてみたい。3つの技術革命というよりも、単純にAIの深化と考えた方がわかりやすい。平成の30年間のインターネットの深化に匹敵するもの、令和が始まってからのAIの深化こそが、これからの30年のキーであると思える。令和30年に私たちの日常がどうなっているか、考えていきたい。

 未来を予測するには過去の歴史を調べるべし、とはよく言われることである。筆者(佐藤)もインターネットの時代に遭遇している。身近なところでの出会い、体験を通じ、この30年を振り返るところから始め、未来を考えていきたい。

 *1)株式会社レッジが運営する国内最大級のAI(人工知能)関連メディアLedge.aiからの引用

佐藤 俊和(さとう・としかず)
1949年福島県生まれ。 東京大学工学系大学院(修士)修了。79年株式会社ジョルダン情報サービス(現ジョルダン株式会社)設立、代表取締役社長に就任。現在に至る。18年 JMaaS株式会社設立。代表取締役社長。
記事提供元:タビリス