観光を起爆剤に誇れるわが街に 渡部晶(財務省勤務) 「旅行・観光開発指数」で世界首位となったが……

ジョルダンニュース編集部(ジョルダン)

観光名所となった香川県三豊市 の父母ヶ浜(ちちぶがはま)。地元住民そして観光客の交通の便の確保が課題 写真提供:三豊市観光交流局

 日本の観光をめぐる最近のうれしいニュースは、スイスのダボス会議の主催団体として知られる「世界経済フォーラム」が5月24日に発表した「旅行・観光開発指数」で、調査開始以来、初めて世界1位に評価されたというもの。日本は交通インフラストラクチャ―の利便性や自然や文化の豊かさなどが評価された。「交通インフラ」は高評価ではあったが、実は、観光関係者の間で大きな課題とされているのは「二次交通」である。

旅行・観光開発力のランキング


1日本
2米国
3スペイン
4フランス
5ドイツ
6スイス
7オーストラリア
8英国
9シンガポール
10イタリア
※世界経済フォーラム調べ

 「二次交通」とは、「拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通のこと」(JTB総合研究所)である。拠点となる空港や鉄道の駅から、目的とする観光地に行くためには、二番目の交通機関を使うことからこのように言われている。二次交通が便利なら、その観光地を根城に近隣の観光地を訪れることも可能になり、滞在日数が増える効果も期待できる。

課題は二次交通、危機に瀕する地域の足


 しかし、これを担う地域交通は、いま、コロナ禍による影響もあって危機に瀕している。最近、地方のローカル鉄道の廃止の議論が大きな注目を集めていることはよく知られている。国土交通省では、地域交通の持つ価値や役割を見直し、移動サービスの質・持続性を向上するため、地域の多様な関係者による「共創」に関する実地伴走型の研究会(アフターコロナ時代に向けた地域交通の共創に関する研究会)を昨年11月にキックオフし、今年3月に中間整理を公表している。
 この研究会の中で好事例に取り上げられたのが、香川県西部にある県内3番目の人口を有する三豊市である。市内の父母ヶ浜(ちちぶがはま)が、潮が引いた干潮時の夕暮れには南米ボリビアの「ウユニ塩湖」のような写真が撮れるとInstagramで有名な話題の観光地となった。観光客も年間1万人にすぎなかったが、コロナ禍前には、50万人の観光客を集め、海外メディアも注目するところとなった。

観光と交通は車の両輪、香川・三豊市で実証実験


 三豊市は市域のほぼ全域に地場の路線バス事業者が存在していない。地域の生活・観光のために移動手段の確保が大きな課題となり、地元企業が「ちょい乗り」サービス(注)を地元企業で「共創」して支える仕組みづくりを図ることになり、実証実験を今年スタートさせた。
 この6月7日に閣議決定された、日本政府の経済政策の今後1年の大きな方向性を決める「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる「骨太の方針」)では、この点について「(前略)持続可能で多彩な地域生活圏の形成のため、交通事業者と地域との官民共創等による持続可能性と利便性の高い地域交通ネットワークへの再構築に当たっては、法整備等を通じ、国が中心となって交通事業者と自治体が参画する新たな協議の場をもうけるほか、規制の見直しや従来とは異なる実効性のある支援等を実施する」と記載されている。
 観光と交通は車の両輪といっていい。観光客が地域交通を大いに利用してくれれば地域住民の交通手段を確保することにもつながる。今後の地域交通をめぐる政策動向は観光関係者にも見逃せないものになっている。
(本稿は個人的見解である)

(注)「ちょいのり」サービスのmobi(AIシェアリングモビリティサービス)は、半径2kmの生活圏内の移動において、自転車や短距離のマイカー利用に代わるエリア定額乗り放題サービス。高速バス「WILLER EXPRESS」や京都丹後鉄道を運行するWILLERとKDDIが、これを運営する合弁企業「Community Mobility」を本年4月に設立。

渡部晶(わたべ・あきら):1963年福島県平市(現いわき市)生まれ。京都大学法学部卒。1987年(昭和62年)大蔵省入省。福岡市総務企画局長を30代で務めたほか、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)、沖縄振興開発金融公庫副理事長を経て、現在、財務省大臣官房公文書監理官。いわき応援大使。デジタルアーカイブ学会員。産業栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラム「読書の時間」を執筆中。