CES2025 AI分野が注目集める 日本企業も存在感 パナソニックやトヨタ、ソニー ITイベントレポート:TIDE&WAVE

ジョルダンニュース編集部

スタートアップでは、BionicMのパワード義足「Bio Leg」がベスト・オブ・イノベーションを受賞

世界最大のテクノロジー見本市「CES2025」が米ラスベガスで1月7~10日(現地時間)、開催された。生成AI(人工知能)の実用化が加速する中、AIと家電・自動車など既存製品を組み合わせた新サービスが多く発表された。環境・エネルギー、ウェルビーイング・高齢化などの領域でもイノベーションが進み、具体的なソリューションが注目を集めた。日本企業もパナソニックホールディングスやトヨタ自動車、ソニーなどが講演、スタートアップも多数出展し、存在感を示した。

「『Panasonic Go』というパナソニックならではのAIをさまざまな領域で活用する」パナソニック ホールディングスの楠見雄規社長兼グループ最高経営責任者(CEO)は現地時間7日、オープニングキーノートに登壇した。オープニングキーノートは、パナソニックグループとしては2013年以来、12年ぶりのことだった。

CES2025で基調講演するパナソニック ホールディングスの楠見雄規社長

「Panasonic Go」はAIを含むソリューション事業を大幅に強化する事業構想を示しており、2035年までに売上高の30%をAI関連とする目標を掲げた。具体的には、傘下のBlue Yonderのサプライチェーンマネジメントソリューションや2025年に米国で提供を始める家庭向けウェルネスサービス「Umi」を挙げた。目標の実現のため、AI開発スタートアップのAnthropic社と戦略提携したことも明らかにした。脱炭素社会への取り組みでは、「Well into the future」というテーマを掲げた。水素エネルギー事業や全館空調システムの北米展開、車載電池のリサイクルなどの取り組みを発表した。

トヨタ自動車の未来都市「ウーブン・シティ」がいよいよ始動する。トヨタ自動車は豊田章男会長が5年ぶりに、本番会期に先だって開催されるプレスカンファレンスに登壇した。5年前、同じくCESで発表した実証都市「ウーブン・シティ」のフェーズ1の竣工を発表。富士山の麓に位置するこの街は、環境に優しいモビリティやロボット、AIなど未来技術の実験場となる。

5年ぶりにCESで、ウーブンシティについて説明するトヨタ自動車の豊田章男会長

「単なる居住空間ではなく、あらゆるプロダクトやアイデアが生まれる場」と豊田会長は説明する。住民はトヨタ従業員や研究者など約2,000人で、ペットも同伴可能だ。自動運転、空飛ぶクルマ、家事ロボットなど、ワクワクするテクノロジーを街全体で実証。外部との連携も強化し「掛け算による発明」でイノベーション創出を目指す。ウーブン・シティは、トヨタにとって収益をもたらすプロジェクトではないかもしれない。しかし、「グローバル企業市民として、未来への投資、そして人々を幸せにする責任がある」と豊田会長は強調した。その実現のため、スタートアップなど外部との連携も強化していく方針を示した。「我々はこれを『掛け算による発明』と呼んでいる。一緒に不可能を可能にしよう」と力強く呼びかけた。

ソニーグループは、エンターテインメントとテクノロジーの融合を打ち出した。十時裕樹社長が初めて、プレスカンファレンスに登場し、10年後のソニーの姿を示す長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」をテーマに講演した。「ソニーは、テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニーであり、クリエイターの創造性を解き放ち、IPの価値最大化の取り組みを進める」と強調した。

NFLとの協業を説明するソニーグループの十時裕樹社長(左)

プレスカンファレンスは通常、マンダレイベイホテルの宴会場で開催されるが、ソニーは現地時間の1月6日夕方、ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)の自社ブースで実施した。講演後、参加した記者らに自社サービスを体験してもらう狙いだ。カメラ画像から3DCGを生成するサービス「XYN(ジン)」は、アニメーションやメタバース制作を効率化できる。ナショナルフットボールリーグ(NFL)のコミッショナーがゲスト登壇し、映像コンテンツの活用で協力することを強調した。海外向けのアニメ配信を手がけるCrunchyroll(クランチロール)では、新たに漫画の配信も始めることを明らかにした。

スタートアップでは、BionicM(東京都文京区、孫小軍社長)のパワード義足「Bio Leg」が、Accessibility & AgeTech部門の最高賞であるベスト・オブ・イノベーションを受賞した。同社は北米を代表するテックとカルチャーのイベント、SXSWでも受賞経験がある。高い評価を背景に、2024年8月に米国での販売を開始した。

主催者の全米民生技術協会(CTA)は、CES2025の開催に先立ち、「CESは世界で最もパワフルなテクノロジーイベント」であり、「イノベーションを加速させ、これからの1年のテクノロジーの方向性を示していく。ゲームチェンジをもたらすAIや最先端のデジタルヘルス・ソリューション、サステナビリティ分野でのブレークスルー、次世代のモビリティ、量子コンピューティングなどに関して、業界のリーダーや企業がビジョンを披露する」と説明した。

CTAのCEO、Gary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏(右)。中央はNVIDIAのジェンスン・ファンCEO、左はCTA会長のKinsey Fabrizio(キンゼイ・ファブリツィオ)氏

CTAのCEO、Gary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏は「CES 2025では、何百万人もの人々の生活を向上させ、新たな雇用を創出し、世界経済の成長を促進するイノベーションをご覧いただけます。CESは未来が始まる場所です。ビジネスを加速させるようなパートナーシップが築かれ、取引が成立し、世界を変えるアイデアが主役になる場所なのです」とのコメントを寄せた。

写真は各社およびCTA提供

(ジョルダンニュース編集部)

記事提供元:タビリス