ヤクルト1000、ブーム終わり急失速...業績に打撃の「三重苦」 問われる次の成長戦略
2025/11/1 19:00 J-CASTニュース

一時は品薄状態が続き、社会現象にまでなった機能性表示食品の乳酸菌飲料「ヤクルト1000」シリーズが転機を迎えている。
ヤクルト本社の2025年3月期決算は、営業利益が前期比12%減の553億円と減益となった。売上高は4996億円とほぼ横ばいだったが、主力の国内飲料・食品セグメントの営業利益は同24.4%減の374億円と大きく落ち込んだ。
背景には、ブームの一巡に加え、日清ヨークなど競合他社の類似商品の登場、さらには中国市場での販売不振という「三重苦」があった。
新工場稼働直後にブーム失速、販売計画を未達
21年に全国発売されたヤクルト1000には、店頭専用商品の「Y1000」と宅配専用商品の「Yakult1000」があり、「睡眠の質向上」や「ストレスの緩和」をうたう機能性表示食品として登場。マーケティング戦略の成功やテレビ番組での紹介をきっかけに爆発的にヒットした。22年には、供給が追いつかず宅配の新規申込みを休止するほどの人気ぶりを見せた。
これを受け24年度の宅配専用商品の販売計画は前期比6%増の1日あたり230万本、店頭専用商品は同27%増の130万本に設定されたが、結果はそれぞれ196万本、105万本と計画未達となった。供給不足解消のために設立された静岡県の富士小山工場が24年1月からフル稼働した直後に、ブームがひと段落してしまった。
「安い」を前面に押し出す競合商品が台頭
ヤクルト1000の苦戦の一因として、競合商品の登場が挙げられるだろう。日清ヨークが22年9月に発売した「ピルクル ミラクルケア」は、ヤクルト1000と同様に睡眠の質改善と日常生活の疲労感軽減を訴求する機能性表示食品で、発売わずか1年で累計出荷数2億本を突破する大ヒットとなった。
最大の武器は価格競争力だ。195mlボトルで希望小売価格139円(税別/25年10月現在)、65ml×8パックで実売価格350円前後と、ヤクルト1000より手頃な価格設定だ。お笑いコンビの「錦鯉」を起用したCMで「安い!」を直接的に訴求するという大胆な戦略を取った。毎日続けやすい価格帯が、消費者の節約志向とマッチしたと見られる。
頼みの中国市場でも低迷
海外事業が売上高・営業利益の約半分を占めるヤクルト本社にとって、中国市場の低迷は痛手だ。
23年1月には中国で「ヤクルト」などの乳酸菌飲料を約1割値上げしたが、経済の先行き不透明感、景気減速が響き、23年1~9月期は1日の販売本数が前年同期比で20%以上減少した。
中国では健康志向の高まりから乳酸菌飲料市場が拡大する一方、類似商品が数多く登場しており、また「ヤクルト」の糖分含有量を問題視する声も出ている。
ヤクルト本社は7月、26年3月期の営業利益見通しについて、国内での「ヤクルト1000」シリーズの販売不振に加え、中国やインドネシアでの販売回復の遅れを受けて、従来予想から50億円下方修正し535億円とした。現在の株価は2000円台前半あたりと、ヤクルト1000ヒット前の水準まで下落している。
一時は「眠れるドリンク」としてブームとなったヤクルト1000だが、次の成長戦略が問われている。









