モータースポーツの最高峰「世界ラリー選手権」愛知・岐阜で開催 日本は今、スポーツカーの黄金期かもしれない

J-CASTニュース

   世界ラリー選手権(WRC)の第13戦「ラリージャパン」が2025年11月6日~9日、愛知・岐阜県内で開かれる。多くのファンが現地を訪れるほか、ラリージャパン公式チャンネルなどで世界中のモータースポーツファンがリアルタイムの走りを観戦する。そんなモータースポーツの魅力とは何だろうか。

目の前を超スピードでコーナリングして行く迫力

   WRCはF1(フォーミュラ・ワン)と並ぶ世界のモータースポーツの最高峰だ。いずれもFIA(世界自動車連盟)の主催で、世界を転戦し、年間のチャンピオンを決定する。現在、WRCのトップカテゴリーに参戦しているのはトヨタ自動車、韓国の現代自動車、英国のMスポーツ・フォードの3チームだ。

   かつてF1の日本グランプリは毎年秋に開催され、最盛期は地上波のテレビで生中継される秋の風物詩だった。近年の日本グランプリは毎年春の開催となり、モータースポーツファンにとって秋はWRCのシーズンとなった。

   F1がF1専用のレーシングカー(フォーミュラカー)でサーキットを周回するのに対し、WRCは競技のために閉鎖した公道を一般の市販車を改造したラリーカーで走る。

   F1は何台ものレーシングカーが同時にサーキットを走り、速さを競う。これに対して、WRCは「スペシャルステージ」と呼ぶ閉鎖した公道などをラリーカーが1台ずつ走り、合計のタイムを競う。街中で見かける市販車をベースとしたラリーカーが目の前の舗装路や林道を、想像を超えるスピードでコーナリングしていく迫力は満点だ。

日本はスポーツカーを生産する稀有な国

   日本ではバブル崩壊以降、若者のクルマ離れが進んだといわれる。世界的にもミニバンやSUVが新車販売のトレンドで、日本ではクーペタイプのスポーツカーの需要は年間新車販売台数のわずか1%とされる。

   野球やサッカーなど人気のプロスポーツに比べ、F1やWRCを愛するモータースポーツファンは日本では圧倒的に少ない。それでも日本は今も多くのメーカーがスポーツカーを少数ながら開発・生産する稀有な国だ。

   欧米メーカーと比較しても、日本は車種の多様性に富んでいる。トヨタ自動車はGR86、GRヤリス、スープラ、日産自動車はフェアレディZ、ホンダはプレリュード、シビック・タイプR 、SUBARU(スバル)はBRZ、WRX-S4、マツダはロードスター、スズキはスイフトスポーツ、ダイハツ工業はコペンなど枚挙に暇がない。日産GT-Rに続き、トヨタスープラやダイハツコペンも近く生産中止になるようだが、ホンダプレリュードのように往年の名車が復活するケースもある。

コンマ1秒さえ削るのは難しいと痛感できる魅力

   かつて「スポーツカー冬の時代」などと言われたが近年は一転、現在の日本はスポーツカーの黄金期かもしれない。多くのモデルに6速マニュアルミッションも存在する。

   なぜ少数ながらスポーツカーが存在し、モータースポーツも存続するのか。それはプロ野球を見るのも楽しいが、自分で草野球をやる方がさらに楽しいからだろう。

   この場合のプロ野球とはF1やWRCなど観戦するモータースポーツであり、草野球とはジムカーナやダートトライアル、サーキットのタイムアタックなど自分が参加するモータースポーツだ。

   筆者もスバルのWRX-STIとBRZを所有し、静岡県の富士スピードウェイでジムカーナの練習会やショートコースのタイムアタックに参加している。ノーマルのスバルWRX-STIでショートコースのベストタイムは36秒台だ。草野球とはいえ、サーキットで1秒はもちろん、コンマ1秒さえ削るのは難しいと痛感する。まさに真剣勝負のスポーツだ。

街中を走ってもスポーツ気分を味わえる

   もちろんサーキットなど走らなくとも、スポーツカーで走ること自体が楽しい。ブリヂストンのPOTENZA(ポテンザ)、ヨコハマのADVAN(アドバン)のようなハイグリップタイヤを履き、ゆっくり交差点を曲がるだけでも楽しい。

   タイヤのグリップの変化を、ステアリングホイールを通して手のひらに感じる。マニュアルミッションでヒール&トウを駆使してシフトダウンを決め、交差点を曲がれば、スロースピードでも、ちょっとしたスポーツ気分になる。

   先日、筆者は全日本スーパーフォーミュラ選手権第10戦の取材で富士スピードウェイに出かけた。あいにく濃霧のため、第10戦の決勝は中止となったが、観戦に訪れたファンのクルマを駐車場で眺めるのは楽しかった。ミニバンやSUVが多い。しかし、トヨタGR86、日産GT-R、フェアレディZ、ホンダシビック・タイプR、スバルWRX、BRZ、マツダロードスターなど多くのスポーツカーが駐車場を占拠していた。懐かしい三菱ランサーエボリューションのラリーカーの姿もあった。

市販車の技術がラリーカーに導入される時代

   国内最高峰のモータースポーツ、全日本スーパーフォーミュラ選手権を観戦に来るファンの愛車なのだから、当たり前だが、一般の街中の駐車場に比べ、明らかにスポーツカーの比率が高かった。少数ながらもモータースポーツを愛し、スポーツカーを愛するファンが日本に存在することを実感した。

   ジャパンモビリティショー(旧東京モーターショー)でも、各メーカーが出品するコンセプトカーの花形はスポーツカーだ。かつてはモータースポーツに参戦するレーシングカーの技術が市販車にフィードバックされると言われたが、現在は逆にスポーツカーを始めとする市販車の技術がレーシングカーやラリーカーに導入される時代だ。モータースポーツよりも市販車の技術競争の方が激しいらしい。

   筆者が取材で出会う自動車メーカーの社長や開発エンジニアにもクルマ好き、スポーツカー好きが多い。少数ながらモータースポーツファンが存在する限り、日本メーカーから「走って楽しい」スポーツカーが消えることはないだろう。

(ジャーナリスト 岩城諒)

記事提供元:タビリス