「自動運転バス」営業走行スタート ドライバー不足解消への期待と乗り越えるべきハードル
2025/4/6 16:00 J-CASTニュース

日本国内で「レベル4」の自動運転バスが2025年2月3日、営業運転を始めた。自動運転バスは全国で実証実験が進んでいるが、レベル4の中型路線バスの営業運転は全国初という。営業運転で実績を積むことができれば、自動運転バスは全国で普及する可能性がある。しかし、現状では運転区間が限られるなど、課題も多い。
レベル4の営業運転はBRT専用道区間のみ
全国初のレベル4自動運転のバスは茨城県日立市でスタートした。レベル4の自動運転とは「特定の走行環境条件を満たす限定された領域で、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」を指す。
営業運転を始めたのは地元の茨城交通で、同社が日立市で運営するバス路線「ひたちBRT」の専用道区間約6.1キロだ。BRTとは「バス・ラピッド・トランジット」の略で、廃線になった日立電鉄線の跡地をバス専用道として整備し、中型バスを走らせている。バス専用道のため、渋滞がないのが特徴だ。
茨城交通は2024年12月18日、茨城県公安委員会から営業車両としては国内で初めて、道路交通法に定められた「特定自動運行許可」を受けた。ただし、レベル4の営業運転は、BRTの専用道区間のみだ。専用道区間以外の一般道は従来通り、ドライバーが手動で運転する。
今回、レベル4の自動運転を行うBRT専用道区間にはバス停が14か所、一般道との交差地点が11か所ある。車道と歩道の間にはガードレールがある場所と、縁石だけで仕切られている場所が混在するなど、さまざまな走行環境が含まれているという。
茨城交通は2018年度から経済産業省と国土交通省の支援を受け、みちのりホールディングス(本社:東京都)、産業技術総合研究所(本部:東京都)、先進モビリティ(本社:茨城県つくば市、)、日本自動車研究所(本部:東京都)、日本総合研究所(本社:東京都)とともに、路線バスへの自動運転技術の導入を進めてきた。
最大時速は40キロ、交差点は11か所ある
レベル4の自動運転を行う車両は、いすゞの中型路線バス「エルガミオ」をベースに、LIDAR、ミリ波レーダー、ジャイロセンサー、GPS受信装置などの専用部品を搭載している。走行速度は最大で時速40キロという。
茨城交通は「レベル4で走行実績を積み重ね、技術開発をさらに進めることで、今後はバスの車内に茨城交通の関係者が乗車しない、国内初の無人路線バスを2026年度中に営業運行させたい」と話している。
今回の自動運転バスの営業運転について、経産省は「地域に根付いた新たなモビリティサービスのモデルとなることが期待される」と語っている。まさに人手不足に悩むバス会社の救世主となることを期待しているようだ。
しかし、今回のレベル4の自動運転は、ひたちBRTの専用道区間約6.1キロに限られている。一般道との交差地点が11か所あるとはいえ、ガードレールで仕切られた区間は、歩行者や自転車などの進入は考えにくく、もともと安全性が高い。混雑した一般道で路線バスのレベル4運転を実現するには、今回のような限定的な営業運転から始め、多くの実績を積むことで安全性を高める必要があるだろう。
(ジャーナリスト 岩城諒)