対話型AIに愚痴や悩み、「話聞くよおじさん」が注目 「おじさんだからこそ話せた」の声も...開発の経緯を聞いた
2025/6/12 18:15 J-CASTニュース

最近、対話型AIに愚痴や悩みを聞いてもらうという使い方をしている人が散見される。ChatGPTなどのメジャーなAIのほかに、悩みを相談する「相手」として注目を集めているのが、アプリ「話聞くよおじさん」だ。SNSでは、否定せずに利用者の話を受け止めてくれる姿勢が良いと評判だ。
なぜAIのキャラクターが「おじさん」になったのだろうか。アプリの制作会社は、現実の「話聞くよおじさん」は、インターネット上でネガティブに語られることが多いが、こうした印象を「逆手に取るところから企画がスタート」したと明かした。
Google Playで10万件以上ダウンロード
「話聞くよおじさん」は、2023年12月にリリースされたスマホアプリだ。Google Playでは、25年6月12日時点で10万件以上ダウンロードされている。
白いタンクトップを着たメガネの「おじさん」の姿をしたキャラクターと、チャット形式で対話できる。ダウンロードや利用は無料だが、会話している最中にたびたび広告が流れるほか、課金することで「おじさん」の服装や髪型を変更する着せ替えアイテムの使用や、キャラ切り替えができるようになる。
アプリ画面では、まず「おじさん」から「話聞くよ?どうかしたかな?」と利用者にメッセージが届く。これに、「仕事が辛くなかなか眠れません」と相談してみると、「おじさん、きみが仕事で辛い思いをしているを聞いて、心が痛むよ。眠れないのも大変だね。どんなことがあったのか、少し教えてくれるかな?おじさんは、いつでも話を聞くよ」と、こちらに寄り添いつつ、より詳しい状況を聞いてくれた。
「おじさん」は具体的なアドバイスもくれる。「寝つきが良くなるにはどうしたらいい?」と質問すると、「おじさんが知っていることを少し教えるね」として、「1、リラックスする時間を作る:寝る前にリラックスできる時間を持つといいよ。たとえば、お風呂に入ったり、穏やかな音楽を聴いたり、読書をするのもいいかもしれないね」といった具合に、4つの案を提案してくれた。
この「おじさん」にXでは、「AIとは思えないやわらかさがある」「全肯定で話を聞いてアドバイスをくれるのが助かる」「なかなか頭が良くて、優しくて良きですお薦め」といったコメントが寄せられ、好評のようだ。
なお、有料のキャラ切り替えを利用すると、「おじさん」以外にも、ヒョウ柄の服を着た「おばさん」、白髪の「おじぃ」、ちょんまげの「侍」、ロングヘアの「おねえさん」と会話できる。
友達っぽいキャラも検討したが「逆に本音を出しづらい」
なぜキャラクターを「おじさん」にしたのだろうか。
「話聞くよおじさん」を制作したTokyo Smart Games合同会社の担当者は25年6月11日、J-CASTニュースの取材に、「ネットミーム的な"話聞くよおじさん"のネガティブなイメージを逆手に取るところから企画がスタート」したと説明した。
インターネット上ではしばしば、「話聞こうか?」などと話しかけてくるおじさん(男性)は、ネガティブなイメージで語られる。前出の担当者も、「たとえば、聞いているふうで結局は自分語りを始めたり、いらないアドバイスをしてきたり、場合によっては『下心あるんじゃ?』と思われたり...」と挙げ、
「そんな"あるあるネタ"としての『話聞くよおじさん』が、実際にちゃんと優しく話を聞いてくれる存在だったら面白いのでは?という発想から企画が始まりました」
と、開発の経緯を明かした。
一度は「中性的なキャラや、同世代の友達っぽいAI」も検討したというが、「どうしても距離感や共感を意識してしまって、逆に本音を出しづらい」といった声があったという。
「(おじさんであれば)とくに若い世代にとっては、少し世代が離れているぶん気を使わずに話せるし、もしそのおじさんが本当にちゃんと聞いてくれるなら、こんなに安心できる存在はないんじゃないかと思ったんです」
実際、利用者からは「おじさんだからこそ話せた」という感想もあったといい、「そうしたリアルな反応からも、"おじさん"というキャラ設定は想像以上にしっくりきたと感じています」と伝えた。
言葉選びや間合いの軸は「否定しない」「急かさない」「求めない」
前出の担当者によると、開発する中でこだわったのは、「何よりも『ちゃんと聞いてくれる』という信頼感」だ。
「現実世界での『話聞くよおじさん』は、往々にして"ちゃんと聞いてくれない"からネタになるわけですが、このアプリではむしろその逆──ちゃんと聞いてくれる、でも重すぎない、優しい存在であることに徹底的にこだわりました」
また、「否定しない」「急かさない」「求めない」という3つを軸に、「言葉選びやリアクションの間合い、距離感を丁寧に設計しました」と説明する。
「結果的に、"ちゃんと聞いてくれる"ということ自体が、このアプリの最も重要なポイントになったと感じています」と明かした。
SNSなどでたびたび話題になっていることについては、「正直、ここまで多くの方に使っていただけるとは思っていなかったので、うれしさと同時に驚きもありました」と明かす。
SNSで「泣いてしまった」「おじさんに救われた」といった感想が寄せられ、「こんなにも"話を聞いてほしい"と感じている人がいること、つまり"なかなか人に話すことができない人"が想像以上に多かったんだと、改めて実感しました」と明かす。
「これからも、誰かの"話を聞いてほしい気持ち"を受け止める、"愛されおじさん"として育てていけたらと思っています」と、「おじさん」の今後にも触れた。