JR東日本、来春値上げで「ライバル路線」との金額差がエグい 渋谷-八王子は京王線より400円ほど高くなる
2025/10/13 12:00 J-CASTニュース

JR東日本は2026年3月14日より運賃制度を改め、「電車特定区間」「山手線内」をなくし「幹線」に一本化する。この日より新しい運賃が適用される。
すでにJR東日本の公式サイトでは、改定後の運賃検索をすることができ、その結果でJRとライバル鉄道との差がありすぎることがインターネット上の話題となっている。
そこで、筆者はJR東日本と地下鉄・私鉄がライバル関係になっているところを取り上げ、JR東日本の新運賃が実は結構高いものになってしまい影響も大きいのでは、ということを示してみたい。
山手線・東京-池袋は地下鉄より44円高
まずは山手線内エリアの運賃である。新宿駅から東京駅までは、中央快速線と東京メトロ丸ノ内線の2通りのルートで乗り換えなしで行くことができる。
JR東日本の現在の運賃は、交通系ICカード使用で208円(以下はすべて交通系ICカード使用で算出)だ。いっぽう、東京メトロは209円。たった1円の差だとどちらを使うかは「場合による」としかいいようがない。
しかしJR東日本の新運賃では、253円となる。45円も値上がりになる。となるとメトロを使おうか、という人もいるのではないだろうか。
池袋駅から東京駅は、山手線と東京メトロ丸ノ内線の2通りのルートがある。渋谷駅から上野駅でも、山手線と東京メトロ銀座線の2ルートだ。いずれもJRの現行運賃は208円、東京メトロの運賃は209円、JRの新運賃は253円となる。
都心部は全体的に運賃が値上げするため、JRから東京メトロに流れる人も多いのではないだろうか。
新宿-八王子は今でもJRが京王に勝てないのに
ネットでよく話題になっていたのは、JR東日本と京王電鉄のライバル関係である。
新宿から八王子(京王八王子)まではJR東日本の現行運賃は492円、京王の運賃は409円。これだけでもJRは運賃では京王に勝てない。JR東日本の新運賃は616円になり、京王とは207円の差がついてしまう。
新宿から高尾となるともっと露骨だ。JR東日本の現行運賃は571円、京王の運賃は409円、そしてJR東日本の新運賃は715円となる。
渋谷から八王子となると運賃の違いはすごくなる。JRの現行運賃は736円、京王の運賃は409円であってどう見ても京王を選びたくなるのだが、JRの新運賃では803円となっている。
近距離でも差が出てくる。吉祥寺~渋谷間は現在ではJRも京王も230円だが、JRの新運賃では281円となる。中央線方面ではかなり京王に利用者が流出するのではないか。
神奈川県方面は多くの利用者が私鉄に流れる恐れ
JR東日本と私鉄は、神奈川県方面でバッチバチのライバル関係になっている。
渋谷から横浜までは、JRのライバルは東急電鉄だ。JRの現行運賃は406円、東急電鉄は309円であり、現在でも東急優位だ。しかし来春3月14日からはJRは440円となる。
品川から横浜までは、JRと京急電鉄がし烈なデッドヒートを繰り広げている。JRは303円、京急は313円と、実は京急のほうが高い。京急電鉄の横浜より先の利用者は横浜までは京急、横浜でJRに乗り換えるという利用パターンの乗客が多い。しかしJRの運賃がこんど341円となり、京急を品川まで利用する人が増えると考えられる。
京急は、遠方となると横須賀線とのライバル関係が発生する。品川から久里浜(京急久里浜)までは、JRは945円、京急は710円で、すでに差がある(JRのほうが遠回りという事情もある)。だが新運賃では京急は1221円となり、もうJRは選ばれないことになりそうだ。
湘南方面はJRと小田急が競合している。新宿から藤沢までは、JRは990円、小田急は607円で、現在でも小田急が圧勝であるものの、JRの新運賃は1034円となる。
神奈川県方面は、多くの利用者が私鉄を利用することになると予想する。
来春3月14日からのJR東日本新運賃では、地下鉄や私鉄との運賃差の大きさに、多くの人が驚いてJR東日本を避けようとする動きが出てくるのではないか? それとも、いまどきは多くの人が交通系ICカードを使用しており、運賃のことは気にしない、という人も実は多いのか?
いずれにせよ鉄道利用者がどう動くか、興味深いものがある。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)。