運営会社も「驚き」、「Yahoo!天気」の利用法が想定外すぎる 殺伐SNSで重宝される「脱力感」

J-CASTニュース

   LINEヤフーが提供する天気予報アプリ「Yahoo!天気」が大きな注目を集めている。このアプリには、現在地の天気に関する状況を投稿・閲覧できる「みんなの投稿」という機能がある。本来の用途から外れた使い方をする投稿が相次いでいるのだ。

   アプリをスマートフォンで開くと、「今起きた」「カレーしか勝たん」などの日常的な投稿が地図上に表示される。X上では、こうしたコメントを面白がる声が広がった。LINEヤフープロダクトPR部の担当者は2025年7月14日、「投稿数が増えているのはありがたいのですが、同時に想定以上の反響をいただき、驚いているのが率直な感想です」と取材に明かした。

「みんなの投稿」の本来の使用用途とは?

   「Yahoo!天気」アプリに「みんなの投稿」が追加されたのは25年2月5日のことだ。初めにAndroid版に搭載され、iOS版が続いた。LINEヤフーは同月5日の発表で、追加した背景と狙いをこう説明する。

「近年、ゲリラ豪雨、雹やあられといった突然の悪天候が多く、こうした情報をいかに早く正確に知るかは多くのユーザーにとって重要です。(中略)これにより、ユーザーは各種レーダーに加え、同地点にいる他のユーザーの実体験・感覚も参考にすることで、より精度の高い天気の予測と身支度などの行動に役立てられます」

   この機能を使用する方法はこうだ。まず、アプリ下部にある「雨雲」を選択。すると、現在地付近の雨雲レーダーが表示される。さらに、この画面の最下部にある「投稿」をタップすると、さまざまな地点で投稿されたコメントが閲覧できる。各テーマに絞って投稿を見ることもできる。たとえば、「いまの天気」「体感気温」「アイス」のテーマがある。

   「みんなの投稿」は、天気に関する多くの情報が発信されると、より精度が増す仕組みになっている。だが、X上で注目を集めたのは、「今起きた」「カレーしか勝たん」「お腹いっぱい」などの日常的なコメントだった。こうした穏やかな内容に対して、「昔のSNS感あって好き」「こういう平和な投稿が見たい」「次世代のSNS」などと喜ぶ声も上がった。

LINEヤフー担当者は感謝を示すも「ルールと節度」を呼びかけ

   SNS上での大きな反響について、LINEヤフー担当者は、「驚いているのが率直な感想」だと取材に明かした。また、天気以外の話題を投稿する動きがあることについて、次のように説明した。

「『みんなの投稿』については、天候や季節の移ろいを共有し合うことで、天候の備えへの判断材料としていただく場の意味合いで提供を開始しました。そのため、その話題以外の投稿に関しては、本来想定した用途からは異なっている側面はあります」

   この機能では、「利用のルール」の確認を促す表示が投稿時に出る。その中には投稿が禁止されている内容もあり、「虚偽の投稿」も、そのひとつだ。例えば、「(台風接近で大雨、強風など明らかな荒天にもかかわらず)今は晴れているので田んぼを見に行っても大丈夫」といった内容だ。

   そのほか、「イタズラの意図がくみ取れる投稿」も禁止。この一例として、「明日、東京に隕石が落ちます」という投稿を挙げている。さらに、人を不快に感じさせたり、悪質なリンクを掲載したりする投稿なども禁止している。

   担当者は取材に対し、「ユーザーの皆さまには、ぜひ今後とも当社が定めるルールと節度を守った上でサービスをご利用いただきますようお願いいたします」と呼びかけている。また、誹謗中傷や虚偽などの明確に不快を与える投稿は、見つけ次第削除するとも説明した。

   一方、「新たにご利用いただけるユーザーが増えていることはとてもありがたく思っています」と、利用者に感謝もしている。先述した「体感気温」「アイス」などのテーマを設けたのは、毎日アプリを通じて天気の変化や季節を楽しんでもらうためだとし、「楽しんで使っていただいていることは嬉しく思っています」と強調する。

   しかし、「これまで本来用途で利用いただいている方の中には、天気や季節などの本来の使い方以外の投稿に困惑している方がいらっしゃるのも事実です」という点についても指摘している。

   担当者は、今後の方針について次のように説明している。

「現状を慎重に見極めて判断したいと考えています。具体的にはこれから検討していきますが、利用ルールの見直しなどの検討可能性はあり得ます」

殺伐としたSNSに「飽き飽き」する人たち

   「Yahoo!天気」アプリに実装された「みんなの投稿」の本来の用途から外れ、日常的なコメントが投稿されていることを多くの人々が面白がる背景には何があるのか。

   ITジャーナリストの井上トシユキ氏は7月15日、批判や誹謗中傷などが広がっている殺伐とした昨今のSNSの状況に飽き飽きしている人たちが、素朴に共感できるコミュニケーションに共感を示す風潮があると指摘する。

   ネット掲示板「2ちゃんねる」の文化にも、議論が白熱しているスレッド内で「お腹が空いた」というコメントが出てきて、ほかのユーザーが「チャーハン作るよ!」というアスキーアート(AA)が貼る流れがあったという。

   こうした過去の事例から、今回の「Yahoo!天気」アプリの流れは、「昔からあるネット的な振る舞いだ」と井上氏は述べる。また、日常的なコメントが面白さを増す理由についても次のように分析した。

「本来なら豪雨や落雷など緊張感のある状況で情報共有するべきアプリで、本来の目的から逸脱する使い方をする人はいないと多くの人が思っていた中で、『腹減った』みたいな日常的なコメントがあって、脱力感を感じて、面白さが増したと思います」
記事提供元:タビリス