「カープ女子」はどこへ? ピーク時からは落ち着く広島カープ観客動員...変化の背景とは

J-CASTニュース

   2010年代半ば、「カープ女子」という言葉が世間を賑わせた。赤いユニフォームに身を包んだプロ野球・広島東洋カープのファンが球場を埋め尽くし、ビジター球場でも「スタンドの半分が赤」になると話題になった。

   しかし近年、その熱狂は徐々に落ち着きを見せている。プロ野球全体が観客動員数を伸ばす中、広島の数字は横ばいが続く。何が起きているのか。

ホームもビジターも「赤」に変化が?

   日本野球機構(NPB)の公式データによれば、2025年シーズンの広島主催試合における1試合平均観客数は2万8356人。19年は3万1319人だったが、コロナ禍の影響で大きく減った20~21年を経て、22~24年は増加傾向にあったものの、25年は前年を割り込み、コロナ前の水準にまで回復していない。

   25年の広島の1試合平均観客数は12球団中8番目。プロ野球全体の観客動員数がコロナ禍から回復し、多くの球団が過去最高水準を更新する中、対照的な動きだ。

   変化はビジター戦でも見られる。16年頃から、東京ドームや甲子園球場といった他球団の本拠地で、広島ファンがスタンドの半分を赤で埋め尽くす光景がSNSで繰り返し話題になった。しかし最近では、そうした様子は以前ほど目立たなくなっているようだ。

   もちろん、地元・広島や中国地方をはじめ全国には依然として熱心なファンが数多く存在する。満員の試合も珍しくない。ただ、かつて「県外からの遠征ファン」や「SNSでつながった若年層」といったキーワードが取りざたされていた頃と比較すると、落ち着きを見せている。

成績だけではない「構造的な課題」

   背景として、チーム成績の変化が挙げられるだろう。16年から18年にかけてリーグ3連覇を果たしたものの、その後は優勝から遠ざかっている。ただし、成績だけが観客動員数を左右するわけではない。セ・リーグで近年下位が続く中日ドラゴンズは、23年以降は毎年、1試合平均3万人超を記録するなど、観客動員を伸ばしている。

   球団運営の違いも影響しているとの見方もある。チケット販売について、広島の本拠地「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」での試合は抽選方式が中心で、申し込み方法も複数の経路に分かれている。当日券の販売枠も限られており、「その日に思い立って観戦する」といった行動へのハードルがやや高いのかもしれない。

「試合が見られない」...配信環境の差

   配信環境の差も指摘される。たとえば、広島の主催試合は12球団のなかで唯一、スポーツ専用動画配信サービス「DAZN」での配信がない。地上波も広島ローカル局が中心で、県外のファンが試合を視聴する手段は限られる。「広島を応援したいが試合が見られない」という声は、SNS上でも散見される。対照的に、各球団はDAZNでの配信のほか、さまざまな手法によって全国へコンテンツを提供している。

   ブーム時に獲得した新規ファンを、いかに定着させるか。勝敗にかかわらず応援し続けてもらうには、配信などで手軽に試合を見ることができる手段の提供や、チケット販売をはじめ球場で観戦しやすい環境づくりが不可欠とされる。

   広島カープには、地元の熱心なファン層という強固な基盤がある。ただ、ピーク時に全国から集まった「カープ女子」たちを含む新規層が、どれだけ定着したのか。その答えは、今後の観客動員の推移に表れることになりそうだ。

記事提供元:タビリス