キャッシュレス決済をやめた地方スーパーの決断 手数料負担、設備費用は重荷に...今後は広がるのか

J-CASTニュース

   物価高が生活を圧迫している。米、野菜、インスタント食品、燃料、モバイル機器、その他諸々。備蓄米も話題になっているが、本当に米の販売価格は下がるのか。生活のうえでさまざまな不安が広がっている。

   一方で、中小の店舗や地方のスーパーマーケットにも意外な影響を与えている。キャッシュレス決済を取りやめ、現金のみの対応に戻る店舗が現れたのだ。

「ワクワクしていただけるようなお店を目指して」

   宮城県仙台市のスーパーマーケット「生鮮館むらぬし」が2025年3月7日、インスタグラムで発表した内容が、全国的な話題になった。

   その投稿では「お客様へ大切なお知らせです」「とても心苦しい決断ではありますが、ご理解いただけますと幸いです」として、次のように説明した。

【キャッシュレス決済終了のお知らせ】
いつも生鮮館むらぬしをご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、2025年3月31日をもちまして、キャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など)のご利用を終了させていただくことになりました。
手数料の負担が大きくなり、苦渋の決断ではありますが、よりお得にお買い物いただける方法を考えた結果です。
その分、キャッシュレス廃止によって削減できたコストを活かして、商品の価格を少しでも下げ、お客様の生活を応援します。
さらに、物価高が続く中、少しでも地域の皆さまのお役に立てるよう、新しいサービスやお得な企画もどんどん考えていきます。
「あ、今日はむらぬしに行ってみよう!」とワクワクしていただけるようなお店を目指して、これからもチャレンジしていきますので、ぜひご期待ください!
お客様の「頑張れ、むらぬし!」という応援が、私たちの何よりの力になります。
これからも地域の皆さまに愛されるお店を目指してまいりますので、変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願い申し上げます。

   クレカ、QRコード支払い等のキャッシュレス決済にかかる手数料は店舗の負担になっており、結果的にその分が利用客の負担になりかけているというわけだ。その上、4月には4000品目に及ぶ食品の値上げ。「生活防衛」が叫ばれる中、キャッシュレス決済は「重荷」になってしまっている。

   手数料の負担はスーパーマーケットのみならず、非小売のサービス業店舗にも同様の問題が発生しているようだ。さらに、ある業界関係者によると、QRコード決済の導入において、利用客のスマホに表示されたQRコードを店側のレジが読み取る「ストアスキャン方式」を採用する場合、これにかかる設備更新費用も相当な負担だという。

「現金決済の割合も多いのに、新たな手数料負担のあるQRコード決済を導入するとなると......そうするメリットを想定できないのが現状です。地方のスーパーがキャッシュレス決済を取りやめたという話題も、決して驚くべき話ではないのです」

存在感を増す「独自Pay」

   そんな中、より安い手数料のキャッシュレス決済サービスを求めて「独自Pay」の導入を試みる店舗も現れている。

   ペイクラウドホールディングス傘下のバリューデザイン社が手がけるクラウド型独自Pay発行サービス『Value Card』が、長野県に29店舗を展開するスーパーマーケット『長野県A・コープ』に採用されたという。

   これにより、長野県A・コープは4月から電子マネー機能付きポイントカード『A'kubo(え'くぼ)カード』の提供を開始するに至った。

   同社のプレスリリースには、独自Pay発行のメリットが記載されている。

・独自Payによる再来店促進と、それに伴う売上アップ
・独自Payの利用を促すことによる、レジ処理スピードアップなどの業務効率化
・クレジットカードなどの汎用決済に比べ、独自Payは低い手数料率のため店舗負担が軽減

   このように、極力手数料を抑えることができる上、「そこでしか使えないPay」だからこそ再来店を促すことにつながりやすい。

   こうしたメリットや止まらない物価上昇も考慮すると、今後、キャッシュレス決済はそれぞれの店舗の独自Payが大きな存在感を発揮するかもしれない。(澤田真一)

記事提供元:タビリス