韓国エアプサン、香港航空の航空火災事相次ぎ モバイルバッテリーの旅客機持ち込みルール厳格化...注意点は?

J-CASTニュース

   2025年7月、日本の航空業界で極めて大きな動きがあった。「モバイルバッテリーの機内持ち込み厳格化」である。

   モバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、なにかしらのきっかけで発火するリスクが高いといわれている。もしもフライト中の機内でモバイルバッテリーが原因の火災が発生すると、乗員乗客は逃げ場がない。今年はモバイルバッテリーが原因と思われる航空火災事故が立て続けに発生している。

   日本の国土交通省、そして日系航空会社もモバイルバッテリーの持ち込みに関する新ルールを急遽導入するに至った。

収納棚にモバイルバッテリーを入れないで!

   国土交通省が7月1日に行った報道発表によれば、モバイルバッテリーの旅客機への持ち込みに関して同省は次のような見解を示す。

スマートフォン、タブレット端末やゲーム端末等の携帯用電子機器の普及拡大により、モバイルバッテリーを持ち運ぶ方が増えていますが、モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、外部からの衝撃等による内部短絡や過充電等により発熱、発火等のおそれがあります。
(中略)
こうした中、国土交通省では、機内におけるモバイルバッテリーの発煙・発火等への対応を強化し、客室安全の一層の向上を図るため、航空関係団体(定期航空協会)と連携し、本邦定期航空運送事業者の統一的な取組として、本年7月8日から、以下の2つを協力要請事項として新たに講ずることとしましたので、ご理解ご協力をお願いいたします。

[1] モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと。
[2] 機内でのモバイルバッテリーから携帯用電子機器への充電又は機内電源からモバイルバッテリーへの充電については、常に状態が確認できる場所で行うこと。

モバイルバッテリーを収納棚に入れないで!~7月8日から機内での取扱いが変わります~-国土交通省

   旅客機の座席の真上には、乗客の手荷物を入れる収納棚がある。ある程度まとまった荷物はここに入れなければならないが、その中からモバイルバッテリーを取り除くようにと国交省が航空会社に要請した。

   モバイルバッテリーの機内持ち込み自体は禁止されていないが、それを携帯する場合はすぐに取り出せる状態で持っていなければならないというルールになったのだ。

相次ぐ火災事故の衝撃

   2025年1月、韓国・金海空港で発生したエアプサン391便火災事故は、多大な衝撃をもたらした。

   この火災事故の原因は、モバイルバッテリーと見られている。韓国の交通当局は事故を受け、3月までにモバイルバッテリーの機内持ち込みに関するルールを再定義した。収納棚にモバイルバッテリーを入れるのを禁止し、乗客が直接持つか座席前のポケットに入れなければならなくなった。

   だが、韓国政府がその決定を下した直後、今度は香港航空115便でまったく同様の火災事故が発生した。これは収納棚に入れていたモバイルバッテリーが発火したものと見られ、客室乗務員と乗客が収納棚に水をかけて必死に消火する様子の動画が拡散された。

   そうしたこともあり、中国政府は6月から認証マークのないモバイルバッテリーの国内線機内への持ち込みを禁止した。さらに国際便の乗客や中国経由便(行き先は国外)の乗客に対しても、厳格な手荷物検査を実施するようになった。

安売りのモバイルバッテリーに注意!

   日本を含めた各国の措置は、それだけ低品質のモバイルバッテリーが氾濫しているということの表れといえるだろうか。

   ネットで購入する場合には注意が必要だ。「有名メーカーの製品か」「日本の政府機関の認証マークがあるか」を予め見極める必要がある。安いからといって簡単に購入してしまうことは気をつけたい。

   今後の展望を考えるなら、モバイルバッテリーの機内持ち込み・利用はさらに厳格化していくだろう。世界に目を向けると、すでにシンガポール航空、タイ国際航空、エアアジアなどはモバイルバッテリーを使った携帯機器への充電を禁止している。こうした流れに日系航空会社も同調する可能性はあるだろう。

(澤田真一)

記事提供元:タビリス