「レアアース」中国が止めたら...半導体産業は不安 製造能力や生産計画に影響し「最悪のシナリオ」の恐れも
2026/1/19 19:00 J-CASTニュース

2026年が明け、レアアース(希土類)を巡る日中間の緊張が再び高まっているとの報道が複数見られる。
中国が対日向けのレアアース輸出管理を強化しはじめたとの観測が報じられ、日本の製造業、特に半導体関連産業には警戒感が広がっている。
尖閣諸島中国漁船衝突事件の教訓
ただし、この問題は過去にも発生しており、日本にとっては再び直面するリスクだといえる。
2010年、尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁巡視船が衝突する事件が発生し、その後中国から日本向けのレアアース輸出が実質的に停滞したと報じられた。
中国側は公式には輸出停止を認めなかったが、当時の通関統計では輸出量が急減しており、日本の一部企業では輸入の遅延が顕在化し、供給不安が広がった。
数週間~数か月の入手遅延が生じるだけで、製造ライン全体が計画通りに動けなくなるリスクがあったためである。
この事件は、外交摩擦がサプライチェーンを直撃する典型例として国際的に注目された。
後に日本政府は、アメリカやEU(欧州連合)とともに中国の輸出規制をWTO(世界貿易機関)に提訴し、2014年には中国がその措置を撤回する結果になった。
この事件を教訓に、多くの企業が供給源の分散化やリサイクル技術の強化を進めた。
レアアース以外の重要素材も輸出管理拡大か
そして現在、中国はレアアースを含む軍民両用品目の輸出管理を強化する制度を発表している。
懸念される半導体分野については、素材としてレアアースが大量に使われるわけではない。
半導体デバイスの製造には、シリコンやフォトリソグラフィ用化学品、ガス類、金属配線材料などが中心だ。
ただし、半導体製造装置の一部にはレアアース磁石を利用する高性能モーターや精密制御機器が存在し、装置部品の供給遅延が生産計画に間接的な影響を与える可能性がある。
レアアースの入手に支障が出ると、設備の保守・増設・立ち上げが滞り、結果として製造能力や生産計画に影響する。
さらに悪いケースとして、中国がレアアース以外の重要素材(半導体用化学品やシリコン前駆体など)にも輸出管理を拡大する懸念がある。
これが連鎖的に重なれば、半導体産業にとって致命的な供給網の断絶につながりかねない。
「国産レアアース」は時間とカネがかかる
こうしたなか、海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年1月から南鳥島沖でのレアアース試験採掘を進める方針を発表した。
日本の海底にはレアアースを含む資源が存在するとされ、特に放射性物質が少ないレアアース泥が注目されているという報道もある。
しかし、これは中長期の供給多角化策であり、短期的な供給不安を即座に解消するものではない。
採掘、精製、分離といったプロセスを構築するには、数年以上の時間と巨額の投資が必要とされるのだ。
同じように、G7各国が中国へのレアアース依存度低減を政策目標に掲げている取り組みも、短期的な問題解消にはつながらない。
日本は依然として国内総供給の大部分を中国に依存しており、仮に中国が供給を大幅に制限した場合、主要産業に深刻な影響が及ぶだろう。
現在の世界情勢は、極めて不安定な状況にある。
そんななかで、日本は再び供給網の見直しと、産業政策の再構築を迫られている。
特に半導体産業は、レアアースが直接の主要材料でなくとも、装置部品の供給停滞という「見えにくい部分」で影響を受ける可能性がある。
この構造的な課題にどう対応するかが、今後の日本産業の命運を左右するだろう。









