しまむら、タイ初進出...海外展開でユニクロ追う 「世界のしまむら」になるには?課題はなにか

J-CASTニュース

   国内でファーストリテイリングと並ぶ大手アパレルチェーンのしまむらが、海外展開を本格化させようとしている。

   2025年12月2日、タイ・バンコクの商業施設「サイアムパラゴン」にポップアップストア「SHIMA Park(シマパーク)」を開店した。同社にとってタイへの出店は初めてで、11月にはタイ向けの自社ECサイトも開設している。

   海外展開を積極的に進めるファストリと比べるとまだ規模は小さいが、同社の海外事業の強化には注目が集まる。

国内店舗数ではファストリを上回るも、海外はまだまだ

   しまむらが運営する国内店舗数は、アベイルやバースデイなど全業態を合わせると2000店舗以上(25年2月期末現在)に上る。一方、ファストリの国内店舗はユニクロやGU、海外ブランド事業のセオリーなどを含めて約1800店舗(25年8月期末現在)であり、国内の店舗数ではしまむらが上回っている。

   しかし海外に目を向けると、状況は一変する。ファストリはユニクロを海外に1700店舗以上展開しており、売上規模では世界のアパレル業界で3位、数年以内に2位のスウェーデン・H&Mを上回る可能性も指摘されるほどの勢いで成長している。まさに「世界のユニクロ」となっている。

   一方、しまむらはこれまで海外展開をあまり進めてこなかった。現在、海外で運営しているのは台湾の「思夢樂」約40店舗のみで、2010年代に進出した中国市場からはすでに撤退している。今回のタイ進出は、しまむらにとって本格的な海外展開拡大の入口となる。

徹底したマニュアル主義とローコストオペレーション

   しまむらの特徴として、店舗の大部分は郊外のロードサイド店などで、ユニクロやH&Mのように都心や駅近の一等地に大規模店舗を構えることは少ない。これによって出店・運営コストを抑えている。

   同社は公式サイト上で、「小売業にとって、チェーンストアを高いレベルで効率的に運営するためには、『ローコストオペレーション』を業務の隅々にまで浸透させることが基本であると考えています」としている。

   また、特徴的なのは徹底したマニュアル主義だ。しまむらの公式サイトでは、「しまむらグループはマニュアルを全ての業務の根幹と位置付けており、全ての部署でマニュアルを基本に業務を行うことで、標準化と合理性を追求しています」と説明されている。

   さらに、「しまむらグループの従業員の8割以上がM社員(パート社員)です」「高い能力のM社員と、マニュアルに基づいた店舗運営により、店長1名とM社員6?10名程度という少人数での店舗運営を実現しています」という。

   こうしたビジネスモデルによって、安売りと店舗網の拡大を実現しながらも高収益を維持してきたのが、しまむらの強みだ。

   一方で、海外出店となれば、多額のコストがかかり、リスクも高い。パート社員がマニュアルに沿って業務を遂行することで実現されてきた効率的な店舗運営が、海外の現地人材を採用してどこまで再現できるのかは未知数といえるだろう。

ブランド力の構築がカギに

   海外進出に向けて、大きな課題となるのが、ブランドとしての認知度だ。

   海外ではユニクロは世界的なブランドとして認知されており、価格面だけでなくブランド価値の面でも消費者から評価されている。

   一方、しまむらは海外ではあまり認知されていない分、低価格を武器に勝負する必要があるが、特にアジアの国々には現地の安売り店舗が数多く存在する。しまむらがどこまで日本でのような「価格面でのアドバンテージ」を発揮できるのか注目だ。

   そして、しまむらが低価格を実現するとともに、どこまでブランドとしての独自性やステータスを訴求できるかが、海外展開成功のカギを握ることになりそうだ。

3カ年計画で海外事業強化へ

   こうした課題がある中でも、しまむらは27年2月期までの3カ年中期経営計画で海外事業の強化を掲げている。今回のタイ進出は、その第一歩といえるだろう。

   タイの新店舗はポップアップストア(期間限定店)という形態で、まずは市場の反応を確かめる狙いがあるとみられる。手応えがあれば常設店の展開につなげていく可能性もありそうだ。

   国内市場が成熟化する中、海外展開は避けて通れない道だ。しまむらが「世界のしまむら」、あるいは「第二のユニクロ」になれるのか。その挑戦の行方が注目される。

記事提供元:タビリス