外資系ブランド、日本から撤退続く地殻変動 ナイキ原宿、アヴェダ南青山店...旗艦店を閉店する事態に
2025/8/23 12:00 J-CASTニュース

近年、外資系有名ブランドの旗艦店や主要店舗が日本から姿を消す事例が目立つようになってきた。
2025年8月4日には、日本のストリートファッション文化を文字通り足許から支えてきたナイキ原宿が月内で閉店することが報じられた。ここ1?2年に限っても、アメリカンイーグル、ローラ メルシエ、アヴェダ、ドミノ・ピザといった大手が日本市場からの撤退、あるいは規模の大幅な縮小を発表している。
その背景には、消費行動の変化やECシフト、都心店舗の高コスト化、業界間競争の激化など、複合的要因があるとみられる。ブランド店舗は今、体験価値やコミュニティ形成など、新たな役割の模索を迫られている。
海外ブランドが日本からどんどんいなくなる
ナイキ原宿は2009年、同社のブランド戦略を担う旗艦店として開店した。世界的なインテリアデザイナーである片山正通氏による空間演出や、1600足のシューズソールを使った「FOOTWEAR WALL」、近年はアプリ連動型店舗という最先端の試みまで導入し、東京のカルチャーやグローバルなスニーカー文化を牽引した象徴的な店舗だった。
しかし2025年8月31日に16年の歴史に終止符を打ち、移転や新展開もアナウンスされないまま閉店を迎える。
米国のカジュアル系ファストファッションブランド・アメリカンイーグルの日本初進出は2012年だった。一時は国内33店舗まで拡大するが、2019年末に国内外の事業不振で撤退。3年後の2022年にリアル店舗の再出店を試みた(2022年渋谷フラッグシップストア・池袋ピクナル店、23年東急プラザ表参道原宿店・ららぽーと立川立飛店)。
しかし従来のアメリカンカジュアル路線では、日本の多様化する消費者ニーズに十分には応えることができなかった。再上陸からわずか1年半の2024年1月末までにはまた全店舗閉鎖となり、EC中心の体制に移行した。
NY発のコスメブランド・ローラ メルシエは、資生堂ジャパンによる正規輸入販売という強固な体制もあり、長年にわたり消費者から支持を受けてきた。だが、2025年10月末をもって日本市場から完全撤退。クッションファンデやコンシーラーといった定番商品への固定ファンも多く、SNSでは惜しむ声が多く見られた。撤退の背景には、若者の「デパコス離れ」による需要の減少や、ブランド戦略の見直しがあったことなどが報道されている。
コスメ・エステ分野では新興ブランドの勃興も多く、各社は激しい競争環境に晒されている。エスティ ローダーカンパニーズ傘下のナチュラル系化粧品ブランド・アヴェダの南青山店は2025年6月30日に閉店。22年と長い歴史を持ち、最終日はたくさんの固定ファンが訪れて閉店を惜しんだという。南青山店はブランドの旗艦店の役割を担っていたが、その閉店には親会社の業績悪化にともなうブランド再編の意向があったと報じられている。
コロナ禍によるデリバリー特需を当て込んだ結果が裏目に出たのが、宅配ピザ最大手のドミノ・ピザだ。2019年から3年で400店を新規出店する攻めの経営を選択したが、出店ペースに人材確保・教育が追いつかずオペレーションが崩壊。2025年2月、同社は年内に国内約1000店舗のうち172店舗を閉鎖すると発表した。
「一強」から「分散」「群立」へ
外資系大手ブランドの旗艦店閉鎖や規模縮小の理由を見ていくと、一時的な現象ではなく、グローバル企業側の戦略的な構造改革、日本市場での事業最適化(ローカライズ)の限界、消費者行動の劇的変化などが複合した、ごく構造的なものであることが見て取れる。
日本でも十分になじみ、成功したブランドだとしても、いまや消費行動はリアル店舗だけでなく、ECも存在感を発揮する。そんな中にあって、リアル店舗でのブランド体験やコミュニティ形成といったバリューは、相対的にその評価を減じていったことは否めないだろう。消費者の志向を敏速かつ的確に捕捉できる店舗設計でなければ、雇用を含む総体的なコスト最適化の流れから閉店は免れまい。
不動産専門誌では、すでに10年以上も前から、青山や渋谷、原宿など都心商業地は、特定ブランド旗艦店の一強時代から、分散した体験型複合商業地や、群立する新興ブランド店舗へと姿を変えつつあることが指摘されている。今後、リアル・デジタルを交えたハイブリッドコミュニティ形成や、コラボレーションによる新たな価値創造を模索することがより求められるだろう。