「スマホ依存」60歳以上に広がっている 家族との会話減りSNSに没頭していないか...心身が病む恐れも

J-CASTニュース

Ö

   寝る直前までスマホを見てしまう。食事中も手放せない。子や孫からのLINEが気になってしかたない。「スマホ依存」の兆候だ。60歳以上のシニアにも広がっていることを裏付けるデータが増えている。

60代女性でスマホ時間が1.5倍に

   NTTドコモのモバイル社会研究所が2025年1月に全国の60~84歳の男女1300人から回答を得た調査によると、60代の女性のスマホ利用時間は「たった2年で1.5倍(32分)も増加している」ことがわかった。

   2023年には1日平均1時間10分だった。それが2025年には1時間42分にのびた。60代の男性も1時間7分から1時間19分へと長くなっている。そのぶん、読書や趣味の時間、家族との会話の時間などが減った可能性がある。

   「スマホ依存」が注目されはじめたのは2010年代前半だった。長時間スマホを使う若者の睡眠不足や視力低下、学業や仕事、対人関係への影響が懸念された。その後、コロナ禍の「巣ごもり」などをきっかけに、中高年もゲームやSNSに没頭し、食欲不振やうつ症状を訴えるケースも報じられた。

依存を自覚するシニアも10数%

   スマホ利用層は、シニアの所有率が2015年からの10年で約4倍に増えたことで大きく拡大した。2025年1月の調査で60代の所有率は94%、70代85%、80代前半も66%となっている。「サービスの面から見ても、『情報検索』や『災害情報』あるいは『LINE』は4人に3人、『動画・音楽の視聴』は約半数が利用している」(モバイル社会白書2024年版) 。

   モバイル調査機関「MMD研究所」は2024年7月、18~69歳の1万人を対象に「あなたはスマートフォンに依存していると思いますか?」とたずねた。「かなり依存している」と自覚する人は60代で男性16.8%、女性14.3%。全体平均の23.4%を下回るとはいえ、依存がシニアにも深まりつつあることをうかがわせる。

夜、布団の中でスマホいじる人、注意!

   大正製薬は、脳神経外科医で『スマホ脳の処方箋』などの著書がある奥村歩医師の監修によるコラムをホームページに掲載し、こんな10項目のチェックリストを紹介している。

(1)スマホはいつでも手に取れる場所にスタンバイ
(2)1分の時間があればスマホを取り出す
(3)思い出せない名前などがあると、すぐスマホで検索する
(4)バスの時刻表はスマホで「写真」を撮る
(5)初めての場所にスマホなしでたどり着く自信はない
(6)調べ物はほぼスマホやPCに頼っている
(7)年中忙しく、時間に追われている
(8)情報に乗り遅れることに不安がある
(9)スマホの着信音やバイブレーションの空耳が聞こえることがある
(10)夜、布団の中でもスマホを見ている

   判定は、該当する項目が0~2個なら青信号、3~5個なら黄色信号、6個以上は赤信号という。

検索する前に1分間考えてみよう

   では、スマホ依存から抜け出すためにどういう注意が必要か。6つの「~しない」を大正製薬のコラムは勧めている。

(1)すぐに検索しない(「思い出せなかったらすぐ検索する」ではなく、1分間は考えるクセをつける)
(2)お風呂、トイレ、寝室にスマホを持ち込まない
(3)食事中や会話中はスマホを触らない
(4)ネットサーフィンはしない(息抜き目的のネットサーフィンは脳を疲れさせ、脳の中がごみ屋敷になってしまう)
(5)誹謗中傷サイトは見ない
(6)なるべくナビに頼らない(ナビ機能に頼り切っていると、脳の空間認知能力が低下する。事前に地図で確かめる)

「ながらスマホ」は止めましょう

   奥村医師は別のインタビュー記事で「『だらだらスマホ』や『ながらスマホ』はやめましょう」と注意を呼びかけている。さらに「ぼんやりする」時間をつくる大切さを強調する。脳科学的に「ぼんやりする」ことは脳の疲労を軽減させるからだ。創造性の回復、ストレス対策、記憶力の維持につながる。

   スマホの便利さは言うまでもない。もしチェック項目に該当しても自分を責めないこと。そして、小さな一歩、たとえば寝室に持ち込まないことから始めてはどうだろう。

(ジャーナリスト 橋本聡)

記事提供元:タビリス