中国からの訪日客減で「経済損失1.79兆円」をカバーできるかも 台湾や韓国、欧米の観光客は増え日本人も国内旅行に
2025/11/28 19:10 J-CASTニュース

高市早苗首相が2025年11月7日の衆議院予算委員会で、台湾有事をめぐり「存立危機事態」に言及して以降、中国政府が態度を硬化させ、日中関係が冷え込んできた。
政治的対立の影響が、経済・市民レベルの往来にまで波及し、とくに観光分野への大きな影響が懸念されている。多額の経済損失を予測する専門家もいるが――。
「訪日自粛」で旅行客のキャンセルが続く
中国外務省は11月14日、「今年に入ってから、日本の治安は悪化」していると、訪日自粛を呼びかけた。
さらに同26日夜には日本の中国大使館が、日本への渡航自粛を再度呼びかけ、日本にいる中国国民に対して注意喚起を促すまでに至っている。
これらの通達は渡航を禁止するものではないが、中国国民に与える影響は極めて大きい。
実際、中国国内の旅行プラットフォーム「携程(Ctrip)」など複数の大手旅行会社は、日本旅行の販売を停止している。
国内の航空・旅行会社では、中国発の団体旅行キャンセルが相次ぎ、港湾寄港の変更も進行中だ。
中国発の複数のクルーズ船は日本寄港を取りやめ、韓国・済州などへ迂回し始めたという動きも報じられている。
香港当局も、地震・台風などの自然災害、クマによる襲撃事案などを含め、「政治的要素に限定されない"広義の安全リスク"」があるとして、渡航への注意喚起を行っている。
今年1~9月における訪日客数全体の23.7%
こうした傾向から、近年"爆買い"などのキーワードに象徴されるように、増加傾向にあった中国から日本へのツアー客が減少することが見込まれる。
観光立国を掲げる日本にとって、看過できない事態である。
野村総合研究所(NRI)の木内登英氏は11月18日、中国からの訪日客数が昨年10月から今年9月までの922.1万人、さらに今年1~9月における訪日客数全体の23.7%と、国別最大であることを指摘。そのうえで、中国・香港からの日本旅行が1年間で25%減少した場合、経済損失は合計1.79兆円、名目GDPを0.29%押し下げると試算している。
この数字には、宿泊・交通・小売といった旅行関連消費に加え、地方への波及効果も含まれる。
短期的には、中国・香港発のキャンセル集中や手配解約によるコスト増、さらに観光業に関わるスタッフやアセットの遊休化も収益を圧迫する可能性が高く、これは観光地の受け皿を整備してきた事業者ほど大きな痛手を被ることになる。
"量から質"への転換で中国客への依存構造を打開
とはいえ、ひとつの光明を示す数字もある。
日本政府観光局(JNTO)の調査によれば、2025年10月の訪日外客数は389万6000人で10月として過去最高を更新した。
そのうち韓国・台湾・アメリカなど13市場が「10月として過去最高」を記録している。
円安による購買力の高まりを背景に、これらの国の旅行者は長期滞在型へと移行し、中所得層のリピーターも戻りつつある。
すなわち、観光業としての新たな「伸びしろ」は、これらの国々にあると考えられる。
また、観光庁による2024年の「訪日外国人の消費動向」によれば、観光・レジャー目的の訪日客の旅行手配方法は「個別手配」が84.2%を占め、団体から個人へ、旅行スタイルの変化が見て取れる。
一般客の1人当たりの旅行支出は平均22.7万円と、コロナ前の2019年に比べて43.1%増加しているという。
観光庁は宿泊業の高付加価値化と経営力強化を後押ししており、観光業は"量から質"への転換をはかっている途上にあるといえる。
つまり、この転換を進めて、中国客の一極依存構造から脱却し、より多くの国から個人客を求めていく方向を模索していけば、打撃を最小限に防ぎ、中長期的には観光業の発展に導く方策となる可能性があるのだ。
また、オーバーツーリズムを嫌気して国内旅行を避けていた日本人が戻って来る可能性もあるだろう。
中国からの渡航自粛は、短期的に観光業へ大きな打撃を与えることは避けられない。
とはいえ、早期の関係改善を望みつつも、"量から質へ"の転換を加速させる契機として捉えることが、長期的な成長への道となる可能性がある。









