日産には世界市場で売れるクルマがない 復活の鍵を握る中国市場、そしてホンダとの関係は今
2025/11/29 16:00 J-CASTニュース

日産自動車は大丈夫なのか。熱烈なファンならずとも、クルマ好きならだれでも気になる。日産はこれまで何度も経営危機に陥ってきたが、今回は深刻だ。果たして日産は復活できるのだろうか。
北米でEVは売れず、人気のHVがない商品展開
日産は2025年3月期の連結最終損益が6708億円の赤字(24年3月期は4266億円の黒字)となり、4期ぶりの赤字に転落した。このため世界で2万人の人員や7工場の削減など大規模なリストラを進めている。26年度に自動車事業で営業黒字化を目指すというが、道のりは険しい。
経営不振の理由は簡単だ。日本を含む世界市場で売れるクルマがないからだ。自動車産業は「水商売」と言われる。飲食店のように、客の人気や贔屓(ひいき)に商売が左右され、収入が不安定で盛衰が激しい。鍵を握るのは商品そのものだ。
日産は米国やカナダが主力市場で、2023年度は営業利益の6割近くを北米が占めていた。ところが24年度は一転し、北米の営業損益が赤字に転落した。米国の販売不振が原因だ。
日産は北米で「リーフ」や「アリア」など電気自動車(EV)の販売を優先するため、ハイブリッドカー(HV)の投入を見送る戦略をとってきた。24年度はガソリンエンジンの「キックス」や「ムラーノ」などの新型車を発売したが、いずれもヒットしなかった。北米でEVは売れず、人気のHVがない商品展開は結果的に失敗だった。
日本航空の経営再建、大胆なリストラに学ぶべし
そこで日産は大規模なリストラを発表した。これは日本航空の経営再建と似ている。かつての日本航空は、国際線はもちろん国内線も過剰な機材と路線を抱えていた。各路線とも毎回満席ならよいが、そうはいかない。繁忙期を除き、搭乗率が低いまま運航を続ければ、当然経営は悪化し、赤字が膨らむ。需要に対し、輸送能力(供給力)が大きすぎたのだ。
そこで日本航空は大胆なリストラを実行した。路線や運航便数を縮小し、機材も小型化して、冬場の閑散期でも採算を割らない搭乗率を確保することで、赤字とならない水準まで経営規模を縮小した。
その結果、日本航空は復活した。もちろん、夏の繁忙期などは多くの乗客を輸送できないため、思うように稼げないジレンマはあった。全日空などライバルに客を奪われるのは覚悟のうえで、まずは赤字を出さず、確実に黒字が出せる水準までリストラを優先したのだ。
中国での新車販売台数は6月以降5か月連続プラス
今回の日産のリストラも日本航空と同じだろう。工場の生産規模を実際に世界で売れるクルマの最低水準に合わせ、人員も整理する。2017年度に600万台に迫った日産の世界販売台数は、2025年度に325万台まで縮小する見込みだ。今回のリストラが確実に実行されれば、日産は「身の丈」に合った経営となり、黒字になるだろう。
問題は、リストラによる最低水準の生産規模を当面は維持しながら、将来的に反転できるかだ。
暗い材料ばかりではない。日産にとって北米に次ぐ主力市場の中国で反転の兆しがある。中国で日産は合弁ブランド「東風日産」を展開、25年4月に発売したEVセダン「N7」は好調だ。現地主導で、中国のユーザーのニーズに合わせた開発を行ったのがヒットの理由という。デザインや装備も中国のユーザーの嗜好に合わせ、手ごろな価格も実現した。
さらに、中国で新型のプラグインハイブリッドカー(PHV)のセダン「N6」の予約販売を始めた。こちらも現地主導で開発し、低価格で発売するという。日産の中国での新車販売台数は25年5月まで前年同月割れが続いていたが、6月以降は5か月連続でプラスとなっている。
新型スカイラインの開発に期待したいが
もちろん中国だけで楽観はできない。日産は米国向けの一部車種を日本などから輸出しており、米トランプ関税の影響が直撃する。25年度の営業利益でトランプ関税が2750億円の押し下げ圧力になるという。
将来の鍵を握るのはホンダとの協業だろう。日産のイバン・エスピノーサ社長は日本経済新聞に対し、米国でホンダと車両開発を検討していることを明らかにしている(25年11月13日電子版)。
日経新聞によると、エスピノーサ社長は「米国でホンダと共同で車両やパワートレインの開発をできないか議論している」と述べたが、「現時点で決まったものはない」という。
エスピノーサ社長は25年5月、新たな事業再生計画を発表した記者会見で、「大事なのは日産の心臓の鼓動を取り戻すことだ。日産のブランドを活用し、ワクワクするハートビートモデルでブランド力を強化したい」と述べ、最初に投入するモデルの一つは新型「スカイライン」だと明かした。
スカイラインは「フェアレディZ」や「GT-R」と並び、かつての「技術の日産」を象徴するモデルだ。エスピノーサ社長も再生計画で示した「日産のDNAを体現するアイコニックな車種」として、スカイラインとともにフェアレディZを例示した。
とりわけスカイラインは、50歳代以上のクルマ好きにとっては、思い入れのある高性能車で、ブランド力が高い。実際に新型スカイラインは日産車内で「開発コードナンバー」が与えられ、開発が進んでいると聞く。
新型スカイラインは、かつてのスカイラインの再来ではなく、時代のニーズに合わせ、ライバルを圧倒するような先進性と魅力がなくてはならない。
官僚的な社内体質が魅力的な商品開発を遅らせていないか
日産は3代目となる新型リーフを発表したが、残念ながら米テスラや中国の比亜迪(BYD)を凌ぐほどの先進性はなかった。日産は2010年に世界初の量産EVとして初代リーフを発売したパイオニアのはずなのに、なぜテスラやBYDの後塵を拝すのか。これでは世界市場で戦えないのではないか。
ホンダに比べ、日産は意思決定のスピードが遅く、部長や課長の裁量もホンダの方が多いと聞く。日産は官僚的な社内体質がホンダとの協業を妨げ、結果として魅力的な商品開発が遅れているのではないか。
いまの日産に必要なのは、時代のニーズに合わせ、ユーザーがローンを組んででも買いたくなるような魅力的なクルマだろう。その試金石が新型スカイラインなのではないか。
筆者は先のジャパンモビリティショーで新型スカイラインのプロトタイプの展示があるのではないかと期待したが、出品の目玉は4代目となる新型「エルグランド」だった。エルグランドもかつて日産のドル箱だった。まずは26年夏に発売するという新型エルグランドの売れ行きに注目するしかないか。
(ジャーナリスト 岩城諒)









