日本でEVはなかなか売れない トヨタ、日産、海外メーカーを総点検、問題点を探ってみた
2025/11/30 13:00 J-CASTニュース

ファーストカーとして電気自動車(EV)を選ぶ場合、日本車は意外と選択肢が少ない。セカンドカーと目される軽乗用車では従来の日産自動車、三菱自動車工業に加え、ホンダが参入するなど選択肢が増えたが、ファーストカー向けの小型・普通車は驚くほど車種が限られる。
トヨタの日本販売EVは「bZ4X」しかない
トヨタ自動車が日本国内で販売しているEVは「bZ4X」しかない。トヨタはレクサスブランドでは「RZ」と「UX300e」を発売しているが、ちょっと車格が異なる。bZ4Xが480万円からなのに対して、UX300eは650万円から、RZは820万円からとなっている。トヨタは軽乗用車よりも小さく、二人乗りの「シーポッド」を法人やリース用に発売していたが、24年夏に生産と販売を終了している。
EVは電池(バッテリー)だけでモーターを駆動して走行するため、BEV(バッテリーEV)とも呼ばれる。トヨタは広義の電動車として、ハイブリッドカー(HV)やプラグインハイブリッドカー(PHV)のほか、燃料電池車(FCV)も市販する世界でも数少ないメーカーだ。
トヨタは世界で先鞭をつけた「プリウス」などHVはもちろんのこと、EVとHVの中間ともいえるPHVも注力している。「クラウン」「ハリアー」「RAV4」「アルファード」などPHVはバリエーションが多い。
急速充電を繰り返すと電池の劣化を早める
これに対して、トヨタのEVがbZ4Xだけというのは少々さみしい気がするが、それがトヨタの戦略なのだろう。bZ4XはトヨタがSUBARU(スバル)と共同開発したEVで、22年5月に発売した。スバルはbZ4Xの姉妹車を「ソルテラ」として発売している。
トヨタbZ4Xとスバルソルテラは当初、リチウムイオン電池を保護するため、容量の80%を超えて電池を急速充電する場合、充電量を抑制していた。
このためbZ4Xやソルテラで高速道路を長距離移動する場合、なかなか満充電できない使いにくさがあった。このため何度か急速充電しても航続距離が限られ、結果的に米テスラや韓国の現代自動車、日産などライバルメーカーの最新EVに比べて充電回数が増え、目的地に到着するまで時間がかかるといったデメリットが指摘された。
トヨタとしては、ユーザーが急速充電を繰り返すことで、電池の劣化を早めることを防ぐ狙いがあったようだ。トヨタは「短期間に急速充電を複数回実施し、電池への負荷が一定量を超えた場合、電池へダメージを与えない速度まで急速充電の速度を遅くし、電池へのダメージを抑制する制限をかけている。そのため急速充電の速度が大幅に低下する」と説明していた。
トヨタは日産の新型リーフを意識している?
しかし、ユーザーから「使いにくい」という声が挙がったため、トヨタは電池の制御を改良した経緯がある。23年10月のマイナーチェンジでは「駆動用電池充電警告灯点灯からSOC(State of Charge=充電量)約80%までの充電時間を最大30%削減した」と発表した。
さらにトヨタは25年10月9日、bZ4Xのマイナーチェンジを行った。航続距離は従来比25%増の746キロ(WLTCモード)と、国内勢では最長となった。ライバルの日産が26年1月に発売する新型「リーフ」の航続距離は702キロだ。実際の走行では大きな差がないともいえるが、カタログ数値上はbZ4Xが新型リーフを上回った。
さらに今回のマイナーチェンジで、トヨタはbZ4Xを70万円値下げし、480万円からとした。新型リーフは518万円台からで、トヨタが新型リーフを意識しているのは間違いないだろう。
航続距離を延ばそうとすると充電に時間がかかる矛盾
日本国内で購入できるEVとしては、米テスラ「モデル3」が航続距離766キロで531万円台から。中国・比亜迪(BYD)の「ドルフィン」は同123キロで299万円台から、「アット3」は同470キロで418万円台からなどとなっている。
このほか日本勢では日産がリーフの上級車として「アリア」を発売している。ホンダとマツダは国内でもEVを発売していたが、現在はカタログから消えている。軽の乗用EVは日産、三菱自、ホンダが発売しており、BYDも26年夏に参入する予定だ。
EVの航続距離は、搭載するリチウムイオン電池の容量の違いといえる。電池の容量が増えれば、航続距離は伸びるが、満充電まで時間がかかる。車重や車両価格が上がるというデメリットもある。
このため、軽EVは航続距離が短く、小型・普通車は価格の高い上級車ほど航続距離が長くなる傾向にある。
通勤や買い物など、近距離移動のセカンドカーとして軽のEVは使いやすいかもしれない。しかし、ファーストカーとしてbZ4Xやリーフなど小型・普通車のEVを購入するには、ちょっとした「覚悟」がいるだろう。
自宅が一戸建てで、ガレージに普通充電器を設置できればよいが、マンションなどでは難しい。
普通充電は3~6kWの出力で、満充電まで数時間から10時間以上、場合によっては20時間以上かかる。電池容量の少ない軽EVから短時間で済んでも、bZ4Xやリーフなど小型・普通車のEVでは、一晩以上かかるかもしれない。自宅やマンションに普通充電器がなければ、近所の充電施設を探さなくてはならないだろう。
現状の日本ではEVの充電に時間がかかる
急速充電も注意が必要だ。トヨタは最大出力150kWの急速充電器を使えば、bZ4Xを約28分で充電できると説明している。最大出力が90kWなら約40分、50kWなら約60分かかるという。
しかし、日本の高速道路のサービスエリアなどにある「CHAdeMO(チャデモ)」方式の急速充電器は、1回当たり30分の利用が基本だ。しかも、最大出力90kWや150kWの急速充電器は少なく、今なお最大出力20~50kWが主流だ。1回30分では充電量が限られる。
このため、土日午後のサービスエリアやショッピングセンター、自動車ディーラーなどの急速充電器は混雑し、順番待ちとなることもある。つまり、現状の日本ではEVの充電に時間がかかる可能性が高いということだ。
もしも、あなたがEVを購入するなら、EVの性能はもちろん、自宅や周辺の充電インフラなどを調べ、じっくり検討した方がよい。日本でEVがなかなか売れず、HVやPHVが人気なのも理解できるだろう。
(ジャーナリスト 岩城諒)









