「AI民主化元年」だった2025年、1200人調査で実態明らかに なぜ浸透?企業が直面「最初の関門」とは

J-CASTニュース

   2025年は「AI民主化元年」──。生成AIが本格的に生活へ浸透した1年だったとして、AIナレッジデータプラットフォームを提供するHelpfeel(本社・京都市)がこう評価した。詳しい実態を同社に取材した。

身近なシーンで「相談相手として受け入れ」進む

   Helpfeel社は12月9日に「AI利用の実態調査結果」を発表した。AIは生活者に寄り添う存在に変化しつつあるといい、こうしたAI受容の実態と、AIと人の新たな相談行動を明らかにする目的で調査を行ったとしている。

   AIの利用経験がある20代以上男女1203人を対象に、日常の悩みや困りごとを「AI」と「人」のどちらに相談するか、14項目のアンケートを実施した。AIが支持されたのは、Excelなどの関数の使い方(81.2%)、献立決め(69.2%)、お金の増やし方や投資(65.8%)など。全体的に情報・判断・効率はAI、共感は人といった傾向で、「すでに生活者が多くの身近なシーンでAIを相談相手として受け入れている」と分析した。

   では、なぜ2025年になって「AI民主化元年」を迎えたのか。Helpfeel広報担当は16日にJ-CASTニュースの取材に応じ、次のような観点から背景を伝えた。

   実態として、総務省が7月に発表した「令和7年版情報通信白書」では「個人の生成AIサービス利用経験」の国内結果が23年度調査で9.1%、24年度は26.7%だったと説明。前年比約3倍で、Helpfeel広報は「世界的に見るとまだ低いが、伸びとしては大きい」という。

   そもそも生成AIのエポックメイキングは、23年3月に「ChatGPT」のAPIが公開されたことだと振り返った。これを皮切りに企業が同APIを活用して続々とシステムやツールを開発し、24年にtoB中心で実装が進み、25年になってtoCにも浸透してきたとみている。

「サイレントAI」や無料サービスの台頭、自律型AIも

   生活者へ浸透してきた理由は何か特別なきっかけや意識の変化があったわけではなく、徐々に伝播し、さまざまに使われてきたと考えている。

   ひとつには「サイレントAI」──例えばGoogle検索でAIによる概要が表示されるような、無意識的な利用シーンが増えてきた影響を指摘した。ほかには、無料で使えるサービスが広がり、より身近になったとも。情報をラジオ番組風に音声化できると話題になったGoogleのAIリサーチアシスタント「NotebookLM」や、Geminiの画像生成AI機能「Nano Banana」、OpenAIの動画生成「Sora」がSNS上で流行ったといった例も挙げた。

   この広報担当者によると、25年はエンジニア界隈にとって「AIエージェント元年」でもあった。自律的に判断・実行するAIのことで、上半期ごろは米Cognition AI, Inc.が開発した「Devin」が話題に。Helpfeel社ではAI開発の社内実験として花見の準備を任せ、Devinがフードデリバリーの手配、乾杯のあいさつ、余興のオリジナルゲームまで提供する働きぶりをみせた。

   目覚ましい進化を遂げているAIだが、26年以降はどう発展していくか。個人利用の面ではタスクの効率化を図ったり、相談相手・パートナー・推しといった精神的な支えになったりと、「生活を豊かにするためのAI」が伸びてくるのではないかとした。

   ビジネス面では業務への活用に伸びしろがあり、特にコスト削減や売り上げ増加に結びつく可能性がある。他方、AI時代に合わせたコンテンツ作りも求められるとしている。

「最初の関門」AIに取り上げられるか

「AIにオススメされないと、なかなか選んでいただけない、最初の関門を突破できないという勿体なさがある」

   先のアンケートでは、AIへの相談時に期待していることを尋ねる設問があった。最も選ばれた選択肢は「正確で信頼できる情報や答えがほしい」(60.8%)で、前出の広報担当者は、過半数の人がスピードよりも確かな答えを求めている点を興味深く感じたとのことだ。

   答えとして届けられやすい=AIが学習しやすいデータでもあるという。FAQシステムを手がける同社の知見をふまえ、企業のウェブサイトはAIの参照元になるとしたうえで、AIが情報の窓口になりつつある今、FAQを整備・更新していくことは「選ばれやすさ」、つまり競争力につながると指摘した。

   AIをめぐっては、人の仕事がなくなるのかとの議論がたびたびあるが、「一時的に消える仕事は、もしかしたらあるかも知れませんが、人間の仕事という大きな粒度では残ると思っています」という。昔はなかった「YouTuber」や「プロゲーマー」のように、新しい仕事が出てくるだろうと推測した。

   AIエージェントの存在に関しても、「AIが自律的に判断するものではありますが、どれだけAIが情報を渡しても、最終的に意思決定するのはやはり人。そこは絶対残る」とみている。

記事提供元:タビリス