「AIに仕事を奪われる」が現実に...アマゾン1.4万人削減 新人の業務を代替→若者が就職難に苦しむ時代へ
2025/10/31 18:29 J-CASTニュース

アメリカのアマゾン・ドット・コムは現地時間2025年10月28日朝、1万4000人の従業員削減を発表した。これは人工知能(AI)で業務の自動化を行い、経営の合理化を図ることが目的だという。
「AIによって人間の仕事が奪われる」流れが本格化しているのではないか、という懸念が起こっている。
エントリーレベルの労働者雇用が激減する社会
スタンフォード大学が8月26日に発表した論文によれば、アメリカではプログラミング職などのソフトウエア開発、カスタマーサポートといったAIが補助する作業が多い職種において、22~25歳の新人、および最初の仕事に着いた人といった、エントリーレベルの労働者雇用が直近3年で約13%減少したという調査結果が出ている。
また『World Economic Forum』(2025年4月30日)は、「調査・市場分析・資料作成」といったホワイトカラーのエントリーレベルの社員は、AIやロボティクスの導入で代替率が50%以上に達する可能性を示唆している。
加えてアメリカ『フォーブス』誌(2025年8月12日)は「新人を一から育てるより、即戦力を少数採用する」方針に転換する動きがあり、結果として"新人枠"が縮小していると指摘。定型的な反復作業をAIに置き換える方向が強まっているとし、60%以上の経営層が「AIをエントリーレベルの作業に使う予定」(LinkedIn調査)と報じた。
こうした風潮を、同じくアメリカの『Harvard Business Review』(2025年9月16日)は次のように批判している。
「エントリーレベルの社員をAIで削るのは短視的だ。これらの役割は将来のリーダーを育て、組織文化を豊かにするものである」
AIによって消えるのは、若手の人材を育てる場
どのような仕事でも、誰もが最初は新人である。定型の仕事を反復し、そして応用しながら立場を作り、成長していく。
だが、こうしたエントリーレベルの仕事がなくなるということは、単に若い人材が仕事にありつけないだけではなく、仕事の経験を積む機会を失い、キャリアをスタートさせるための足場がなくなることを意味する。
会社としても、試行錯誤しながら人材を育てる場が消えるとなれば、就職難だけでなく将来の中堅・管理職を育成することも不可能となる。
こうした地殻変動はアメリカだけにとどまらず、日本にも波及しそうだ。
国連機関の国際通貨基金による日本労働市場研究では、今のところ、職業ごとに割合は異なるものの、現在は先進国と比較してAIによる業務AI代替の依存度は低いとされている。
しかし、厚生労働省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、AI技術導入後の労働環境変化に関して、すでに日本でもAI導入による業務の変化が起きているという指摘がなされている。
つまり、AIへの業務転換がはかられれば、初職にすらありつけない時代がやって来かねない、ということになる。
AIを使える人材を育てるには
となると、若年層がこれから職を決めようという際には、AIに代替されやすいか否かを見極める必要が出てくる。
AIを使えるスキルではなく、AIを使いこなすスキル――たとえば横断的にコミュニケーションをとる対人技術や、それらを判断する能力などを身につけねばならない。
そして大学・専門教育の段階から、AI時代を前提としたキャリア設計が必要となってくるだろう。
また、企業の側もAIで人材を削減することではなく、AIを使える人材を育成することを念頭に置かねばならない。若手に成長機会を提供することが、中長期的に企業だけではなく、社会全体にもリターンが大きいはずである。









