短期連載 中国の身近なIT事情 キャッシュレス先進国 物乞いもQRコードで

ジョルダンニュース編集部(ジョルダン)



 筆者は2000年の始めに日本に留学し、大学院卒業後、テレビの特派記者として、日本の事情を中国に伝える仕事に7年間携わった。留学から数え、日本滞在の18年間に中国は目覚ましい発展を遂げた。その間、何度か日中間を行き来し、最終的に2019年の秋、帰国した。現在は発展が遅れていると言われる西南部貴州省の省都、貴陽の大学で日本語を教えている。母国では、いくつも驚かされたことがあったが、その中でもスマホが暮らしの隅々まで浸透していることが衝撃だった。
 スマホで電話をかける、メールやチャットをする、ウェブ検索をする。これは日本でも当たり前だった。これに加え、中国では、お金の支払い、受け取りの機能も有し、電子財布のような役割を果たしている。

 貴陽の街角で物乞いをしていた男を見かけた。道路に座り込んだ男が片手に金を入れてもらう容器を持ち、印刷されたQRコードを首からかけていた。施しをしようとする人は、自分のスマホで、そのQRコードをスキャン(読み取って)して金額を書き入れれば、物乞いのスマホに電子マネーが支払わる仕組みだ。
 このほか、お寺でもお賽銭を電子マネーで払うこともできる。小銭を賽銭箱に投げ入れた時のチャリンという音がありがたみを増。しかし、電子マネーだと、仏様の功徳を得られるのかなと感じる向きもあるだろう。



孫への小遣いスマホでください! お年寄り受難


 日本でも、交通系カードのスイカやパスモで買い物から飲食店の支払いなど、幅広い支払いができるようになっている。しかし、中国では、もう一歩、いや数歩、キャッシュレス化が進み、現金を持たずに暮らすことが一般的になってきた。筆者も財布は持たなくても、スマホを持たずに外出ことなど考えられない。QRコードの読み取りのほかに、指紋や顔認識での支払いもできる。

 ただ、14億人の中国人全員がスマホを使いこなすとは限らない。お年寄りからは「使いこなせない」との嘆きも聞こえてくる。孫に小遣いをあげるのにお金を渡そうとしたら「おばあちゃん、スマホに電子マネーで振り込んでくれよ」と言われた。

 子供のころから、スマホに馴染んだ世代が増えるに連れ、スマホを使いこなせないという現象は減るだろうが、あと何年かはお年寄り受難が続くだろう。

李海(り・はい) 1982年中国四川省生まれ、2001年に来日。2014年名古屋大学文学博士号。東京で約7年間香港メディアの特派員。2019年9月中国に戻り、現在、貴州省の貴州民族大学外国語学院準教授。著書に『日本亡命期の梁啓超』など。