250億円のアートを1億人が250円でシェアすることが可能に アートが変える社会と経済

ジョルダンニュース編集部


アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来

本記事は書籍「アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来(著:倉田陽一郎)」の内容を抜粋したものです。

250億円のアートを1億人が250円でシェアすることが可能に

ところがWeb3の世界になると、この構造が変わる可能性が出てきます。アートをシェアリングするということがブロックチェーンで容易になり、その所有形態がWeb3により大きく変化するかもしれません。20世紀後半、資本主義が成熟していくプロセスの中で、富裕層が購入するアート作品の価格が異常に高くなっていきました。世界の富の独占が加速していく中で、富裕層の金銭感覚もどんどん上がっていったのかもしれません。今では20世紀の偉大なアーティストたちの作品のマスターピースは、100億円以上で取引されるようになっています。

上海在住の有名なアートコレクター夫婦が250億円もの金額でモジリアーニの作品を落札して有名になりましたが、1枚の絵画が250億円というのは、冷静に考ると驚くべきことでしょう。250億円あれば、立派なビルが丸々一棟購入できます。そして、そのビルから生まれてくる家賃収入も膨大になるはずですし、大きな利潤を得ることができます。ですが、絵画から利潤は生まれません。絵画は、所有する名誉と将来的な値上りが期待される程度で、資産としての価値があるだけです。
私たち一般の人間からすれば250億円の絵画と言われても、高額すぎてピンとこない金額です。素晴らしいアートの所有は昔からお金持ちの専権事項で、一般の人とは異なる世界であったのは間違いありません。しかし、これだけ社会が高度に進化して数多くの人たちがアートを楽しむ知性を身につけるようになった現代社会では、あまりにもかけ離れた世界に違和感を覚える人たちが出てきているのも確かだと思います。

そこで、250億円のモジリアーニの作品を1個250円のトークンを発行して売り出せば、1億個のトークンでモジリアーニをシェアすることが可能になります。

NFTアートはメタバース上で新たな価値を生む

この新たな所有形態には長所短所があり、さまざまな議論が必要になります。しかし、少なくとも、お金持ち一人が所有する場合とは大きく異なり、誰もが250円で、250億円もの価値のあるモジリアーニをシェアできれば、数多くのモジリアーニ・トークンの所有者とその作品との関わりが深まることになります。これまでの絵画の分割所有は、ただ単に投資目的で美術品の一部の権利を所有するというものです。しかし、シェアリングにはコミュニティが活発に稼働して、シェアリングしている人たちの情報交換や購入が深まります。さらにトークンを持つ人は、その絵画との関わりの中で、人生の有意義な時間をシェアすることができるようになるのです。

そしてアートをトークン化してシェアリングという保有形態が成立すると、アート展示の可能性にも変化が生じます。まず、トークン保有者全員が投票することによって、アートを保管する方法が決まります。数多くのトークン所有者による投票を行うため、基本的にトークン所有者たちが美術館やギャラリーに寄託して、誰もが見られるところに保管する判断がなされることになるでしょう。同時に、そのコミュニティがメタバース上に作品画像を展示して、NFT化した作品が見られます。そうすることで作品の価値は、現物の作品と同時に「メタバース上のNFT」として新たな価値が生じるのです。

となると、トークンホールダー同士で寄託された絵画を観に行くツアーも可能ですし、その作家に関するさまざまなイベントを開催してトークンホールダーたちの交流を深めることもできます。わずか250円でその美術品のオーナーの一人になることができ、オーナーたちと交流を持てるのは楽しいことです。

このようなブロックチェーンによるトークン管理によってアートを所有していく在り方は、まだ一般的ではありません。しかし一人の保有者がアート作品を所有するよりも大きな広がりがあり、アートの価値の在り方も変わるのです。さらに、株式市場の時価総額的な考え方でアートの価値が決まるようになると、オークション以上にアートの価値に客観性が生まれます。そのような場所が有名になっていけば、アーティストが連動してメジャーになっていく可能性もあります。

今やインターネット内ではYouTube から有名人が生まれたり、TikTok からヒット曲が誕生したりということが起こっています。「Web3」の世界でも、「その作品が好き」という人がプロデューサーになったり、マネジャーになったりして、1人のアーティストがスーパースターになることもありうると考えます。


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電子書籍もあります。
記事提供元:タビリス