東京メトロ、号車ごとのリアルタイム混雑状況を表示

ジョルダンニュース編集部

 東京メトロは、千代田線の北千住駅と町屋駅の駅コンコースにディスプレイを新設し、号車ごとのリアルタイム混雑状況を表示すると発表した。

 北千住駅コンコースでは、「乗車後の各駅の混雑予測」を2024年12月16日(月)から、町屋駅コンコースでは、「到着する列車の実際の混雑」を2025年1月中旬からそれぞれをディスプレイに表示する。東京メトロ千代田線の代々木上原方面行きが対象となる。これによって利用者はディスプレイの表示をもとに、空いている号車を選択することが可能となる。
 混雑状況は、北千住駅のホームに設置したデプスカメラ(奥行きの情報を取得する深度センサーを内蔵したカメラ)で撮影した画像を、人工知能(AI)により分析して号車ごとに算出する。
 東京メトロによると、デプスカメラと人工知能(AI)を用いた列車混雑計測システムは、鉄道事業者で導入しているのは東京メトロのみであり、ダイヤ策定時等に基礎データとして活用している。
 これまで東京メトロでは、2022年度に東西線早稲田駅、2023年度に半蔵門線青山一丁目駅で実証実験を実施しており、リアルタイムに混雑情報を提供することで空いている号車への移動を促す効果が認められたとしている。

「乗車後の各駅の混雑予測」…なぜ北千住

 なぜ北千住なのか。利用者のどの車両に乗るかの判断によって、混雑緩和の効果を生み出しやすいからだろう。
 北千住は混雑する駅だ。
 国土交通省の「都市部の路線における最混雑区間の混雑率(2023)」によると千代田線の町屋から西日暮里までの区間で混雑率が150%となっており、東京メトロで2番目に混雑が激しい。
 北千住駅は多くの路線が発着していることで知られている。東京メトロ千代田線、日比谷線、JR常磐線快速、JR常磐線各駅停車、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレス線。また、半蔵門線、東急田園都市線直通の列車にも乗車することもできる。東京メトロ130駅の中でも3番目に乗降人員が多く、混雑している区間であることは間違いない。

 今回、北千住駅のディスプレイは東武スカイツリーラインから千代田線に乗り換える通路の途中にあり、階段を降りるとすぐ千代田線の10号車ののりばとなる。千代田線は10両編成で、いちばん綾瀬よりの車両となる。
 実は千代田線は10号車が出口に近い駅が多いのだ。駅掲示ののりかえ出口案内では、出口や他社への乗り換えに便利な車両がピンク色で示されている。それを見ると10号車がピンク色に塗られている駅は15/20駅ある。例えば、町屋の京成線、東京さくらトラム乗換も10号車、新御茶ノ水のJR乗換も10号車が便利で、このピンクの10号車は北綾瀬~日比谷まで12駅続く。
 一方で、9号車、8号車、7号車がピンクになっている駅はそれぞれ5駅、8駅、6駅であり、少し前の車両に移動するだけで、混雑から逃れられる可能性がある。実際過去に東京メトロが公表していたデータでも、10号車は「かなり混雑している」でも、9、8、7号車は「混雑している」列車も多く、西日暮里では、ほぼ全て「かなり混雑している」が、8号車だけが「混雑している」列車も多かった。
 それだけ偏りが発生している路線のため、別の車両への移動が混雑緩和の特効薬になり得るのだ。

「到着する列車の実際の混雑」…なぜ町屋

 これまでの実証実験では「次に到着する列車」の混雑状況を表示だったものが、「到着する列車の」混雑情報になった。これまでの実証実験と今回の一つの大きな違いはここだ。
 北千住で撮影し、町屋で混雑状況を表示する。これは、北千住と町屋の駅間が、2.6kmと他のメトロの区間に比べて長いことも影響しているだろう。
 千代田線には、常磐線各駅停車と直通運転する列車と、綾瀬で分岐し北綾瀬に行く二種類がある。利用者が多いのは前者だ。一般的に北綾瀬始発や綾瀬始発の車両の方が空いている。
 千代田線の朝ラッシュ時は北千住駅を2分ごとに発車する。北千住から町屋に到着するのにおよそ3分かかる。つまり、次に到着する列車とその一本後の列車の混雑の比較ができる。場合によっては北綾瀬始発の方が空いているから一本見送ろうという選択が可能になるのだ。
 これまでの実証実験と違い、どの電車に乗るかの選択も混雑緩和効果を生み出す。この違いは非常に大きい。

混雑予測…メリットは?

 国土交通省が2020年12月に行った鉄道利用者へのアンケート調査によると、通勤時にどの電車に乗るかを選ぶ際の重要度は、「混雑していない」が「時間に間に合う」に次いで2番目に高く、「早く到着できる」や「座れる」を上回った。どの車両に乗るかでは、「混雑していない」は最重要となった。
 『東京の都市鉄道における混雑緩和方策に関する提言』の2023年のアンケート調査によると、混雑率150%相当で不快・やや不快と感じるのは9割以上となった。さらに、「過半数の利用者が不快に感じる混雑率」は2019年(コロナ禍前)、2021年(コロナ禍中)と比べても低下した(不快に感じる混雑率のラインが下がった)という。提言では「鉄道利用者全体がコロナ禍で一時的に混雑が緩和した状況に慣れた結果、混雑を不快に感じやすくなっていると考えられる」と分析している。
 混雑予測によって、空いている車両が選べるのであれば利用者にとっては快適だろう。一方、鉄道会社にとってはどのようなメリットがあるのだろうか。
 まず、当然安全のためでもある。混雑によって思わぬ事故が起きる可能性もある。
 そして、利用者の快適性向上も一つである。
 なにより、ダイヤの乱れの抑制につながる。たとえば大勢の人が10号車に集まり、1号車ががらがらというような状況の場合、ドアをなかなか閉められないことになる。鉄道ダイヤは秒単位で組まれている。乗客の乗り降りに時間がかかり、所定の時間より遅れて出発するとなると、当然次の列車にも影響し、ダイヤが乱れてしまう。そしてそのダイヤの乱れは直通運転先にも波及してしまう。
 東京メトロは、お客様により安心して快適に地下鉄をご利用いただけるよう、引き続き、分散乗車・混雑平準化に関する取組みを進めてまいりますとしている。

(ジョルダンニュース編集部)

記事提供元:タビリス