2024年のIPOは134社、大型上場やプロマーケット伸長で高水準 東証、アジア企業誘致や地方企業支援に注力 ITイベントレポート:TIDE&WAVE
2025/1/2 5:05 ジョルダンニュース編集部
LINEヤフー傘下delyなど「スイングバイIPO」が2件あったのも特徴だ
2024年の新規上場企業数は、一般市場とプロ向け市場のTOKYO PRO Marketへの上場を合わせて134社となった。最近10年では、2021年の136社に次ぐ水準となり、活況を呈したと言えそうだ。件数では、新興企業向け市場であるプロマーケットへの上場増加が全体を押し上げた。
通常の市場への新規上場企業数は84社だった。市場別では東証グロース市場が63社と最も多かった。これは、スタートアップ企業にとって、東証グロース市場が資金調達の場として、存在感を増していることを示していると言えるだろう。
2024年は大型上場が目立った。時価総額1,000億円を超える企業は、東京地下鉄(初値時価総額9,470億円)を筆頭に6社あった。いわゆるスタートアップのグロース市場への上場としては、6月に上場したアストロスケールホールディングスが238億円を調達し、初値時価総額1448億円、7月のタイミーが538億円を調達し、初値時価総額が1760億円となった。
上場社数を増やすための東証の戦略が実を結んでいる。アストロスケールホールディングスは、シンガポールから日本に本社を移転し日本企業として上場した。東証は3月、「東証 アジア スタートアップ ハブ」の立ち上げを公表した。日本と縁のあるアジアの有力企業にフォーカスし、スタートアップの成長を支援するエコシステムの整備を通じて、日本市場でのビジネスの拡大や日本企業との連携を後押しし、その結果として東証でのIPOを支援する取り組みだ。
6つの国と地域(シンガポール、台湾、韓国、マレーシア、インドネシア、ベトナム)から、いわゆるユニコーン企業を含む14社を支援対象企業として選定している。これらの企業は、ドローン、ヘルスケア、 AI、IoT、SaaS、フィンテック、インバウンド、コンテンツ・ビジネスなど、将来性を有する業界に属しており、日本の顧客との取引拡大を通じた事業成長を目指している。有力な上場予備軍として支援する。
東京以外の地域からの上場も増やしたい考えだ。2024年は、東京以外の地域からの新規上場は23社(プロ向け市場込みでは49社)だった。東証は全国各地で、地域でのIPOが継続的に誕生する環境づくりのための「IPO経営人材育成プログラム」を運営している。札幌・仙台・新潟・名古屋・京都・大阪・広島で導入済みであり、2025年には福岡などで導入予定だ。
上場に至る道筋として、いわゆる「スイングバイIPO」が2件あったことも2024年の特徴だ。スイングバイIPOとは、スタートアップが大企業のサポートを得て成長しIPOに至ることを指す。いったん、子会社になって、そこから上場を目指す。3月、KDDIの傘下にあったソラコムが上場した。ソラコムは2017年のKDDIグループ入り当初から「スイングバイIPO」の実行を標榜していた。12月にはLINEヤフー傘下にあったdelyが上場した。
順調に見える日本のIPOだが課題もある。グロース市場のIPO企業の平均像(中間値)は、売上高17億円、経常利益1億円、調達金額15億円、初値段階の時価総額87億円。昨年と比べると、規模は縮小傾向にあり、小ぶりだ。プロマーケットの上場数が増えているのも、IPOが小粒になっていることの証左の一つでもある。IPOの社数だけでなく、ユニコーン(時価総額10億ドル)クラスのスタートアップを育てられるか。日本のスタートアップエコシステム全体の力量が問われている。
(ジョルダンニュース編集部)