ソフトバンクG、OpenAIと連携 「日本発」企業向けAI開発へ AIの覇者になれるか ITイベントレポート:TIDE&WAVE
2025/2/18 19:53 ジョルダンニュース編集部
ソフトバンクグループ(SBG)は2月3日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米OpenAIと共同出資会社「SB OpenAI Japan」を設立すると発表した。ソフトバンクグループ側とオープンAIが50%ずつ出資する。営業戦略の立案や顧客対応の自動化、意思決定の支援など、企業活動を幅広く支援するAIエージェントとしての活用を見込む。
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新サービスの名称は「クリスタル・インテリジェンス」。SBGの孫正義会長兼社長は、同日開いた法人向け説明会で、水晶玉(クリスタル)を手に持ちながら、講演した。「大企業向けの最先端のAIを、世界で初めて日本から始める」と意気込んだ。ソフトバンクの宮川潤一社長によると、会場には「日本の時価総額の半分以上の企業のトップ」が出席しており、孫氏の講演に聴き入っていたように見えた。宮川氏は「進化を続ける生成AIやAIエージェントが、企業経営にどのような革新をもたらすのか」と期待感を表明した。
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孫氏が大企業から生成AIの普及を目指すには理由がある。「大企業には圧倒的な量の良質なデータが蓄積されている。このデータを活用することで、AGI(汎用人工知能)のトレーニングや推論が可能となる。適切な環境と資金がある企業から、AGI革命は始まる」という。まずは自社グループで利用し、そのうえで、日本の大企業への導入を働きかけるという。
同席した、米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は「今、AIにとって重要な時期が訪れている。非常にすばらしい発表になった。日本を皮切りに世界展開を目指す」と語った。
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孫氏は、AIに関する事業戦略を、グローバルで急ピッチに進めている。
説明会を終えた後には、孫氏とアルトマン氏は、首相官邸で石破茂首相と面会し、クリスタル・インテリジェンスなど事業計画を説明するなど意見交換した。日本企業の参加を募るため、政府も取り込む考えだ。トランプ米大統領との首脳会談を7日に控えた石破首相から、「日本と米国がAI(人工知能)分野の協力を深め、世界が平和で豊かで安全になるよう努める」との言質を引き出した。
今回の発表に先立つ1月、トランプ米大統領とともに発表したのは、スターゲートプロジェクトだ。同じく、米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)と組み、今後4年間で5,000億ドルという巨費を投じて、米国内に新たなAIインフラストラクチャーを構築する計画だ。単なる技術投資にとどまらず、数十万人の雇用創出、経済効果の波及、そして国家安全保障の強化といった多岐にわたる目標を掲げているという。 孫正義氏は会長に就任し、プロジェクトを統括する。資金面では両社のほか、米ソフトウエア大手のオラクル、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の投資会社MGXの2社もパートナーとして巻き込んだ。今後も大手ファンドなどから資金を募る。技術面では、アーム、マイクロソフト、NVIDIA、オラクルなどが参画する。すでにテキサス州ではインフラ構築が始まっているという。
スターゲートについては、トランプ大統領の側近でもあるイーロン・マスク氏が「資金の準備が足りない」などと懸念を呈したうえで、反対を表明した。それだけ、気になるプロジェクトであることは確かなようだ。その後、オープンAIの買収も打ち出した。
孫氏の構想は実現するのか。課題は二つ。本当に資金が続くのか。調達できるのか、その条件はどうなるのか。一方で、オープンAIは技術的な優位性を確保し続けられるのか。1月、中国のAI企業、DeepSeek(ディープシーク)が低コストのAIモデルを開発し、アプリも一気にダウンロードされた。カオス状態のAI戦線では、伏兵が一気に躍り出る可能性はまだまだあるようだ。
AIの覇権争いは激化する一方だ。米中を巻き込んだ国家間の思惑など、乗り越えるべき壁は数多い。それでもなお、孫氏が描くAI革命の行方は、世界が注目する未来図であることに変わりはない。孫氏の挑戦は始まったばかりだ。
(注)写真はソフトバンクグループ提供
ジョルダンニュース編集部