東証、グロース市場の上場維持条件「5年後に100億円以上」 厳しく変更 スタートアップやベンチャーキャピタルに逆風か ITイベントレポート:TIDE&WAVE
2025/4/8 10:57 ジョルダンニュース編集部

東京証券取引所がスタートアップ企業向け市場であるグロース市場について、企業価値向上を促すため、上場維持基準の大幅な強化に乗り出すことが明らかになった。2030年以降、上場から5年で時価総額100億円を達成することが求められる。これまでは上場後10年間は時価総額40億円以上を維持すれば上場を続けられた。日本の株式市場は近年、世界で最も上場しやすい市場とみられている。時価総額が数十億円程度の小粒上場が相次ぎ、年間100社近い数の上場が続いている。新ルールが適用されると、上場社数の減少など、スタートアップや投資元のベンチャーキャピタルについて逆風が吹くことになりそうだ。
4月2日に開催された自民党の資産運用立国推進議員連盟(会長 岸田文雄前首相)の会合で、東証が改正案を提示した。
この新基準は、上場後も成長が期待したほどではなく、小規模なまま時価総額が低迷する企業が多い現状を打破することを目的としている。スタートアップ企業向け市場である「グロース市場」は本来、日本経済の成長を牽引するはずだ。しかし、その現状は、期待とは裏腹に、多くの企業が低迷する「小粒上場」のレッテルを貼られ、投資家からの期待も薄いという厳しい現実がある。
こうした状況を打開すべく、東京証券取引所は、グロース市場の抜本的な改革に乗り出そうとしたわけだ。その目玉となるのが、上場維持基準の大幅な厳格化である。現行では上場後10年後の時価総額を40億円以上としているが、これを5年後に100億円以上へと大幅に引き上げるという、まさに劇薬とも言える改革案だ。
東証グロース上場企業のうち、時価総額で100億円を下回るのは440社(4月4日終値)、40億円を下回るのは247社にも達する。40億円以下は、スタンダード市場で救済されることもない。 今年東証グロース市場に上場した企業は13社で、そのうち時価総額が100億円を上回るのは5社、3社が40億円を下回る。
今年東証グロース市場に上場した企業の時価総額
社名 | 上場日 | 時価総額 (単位 百万円) |
技術承継機構 | 2/5 | 34,366 |
フライヤー | 2/20 | 1,845 |
ブッキングリゾート | 2/21 | 7,630 |
TENTIAL | 2/28 | 16,411 |
TalentX | 3/18 | 5,789 |
ミーク | 3/21 | 8,051 |
ミライロ | 3/24 | 4,975 |
ビジュアル・プロセッシング・ジャパン | 3/25 | 2,282 |
ダイナミックマッププラットフォーム | 3/27 | 26,176 |
ZenmuTech | 3/27 | 6,413 |
プログレス・テクノロジーズ グループ | 3/28 | 10,774 |
トヨコー | 3/28 | 11,411 |
ジグザグ | 3/31 | 3,657 |

なぜ東証はこれほど大胆な改革に踏み切ろうとしているのか。それは、現在のグロース市場が抱える課題の根深さにある。多くの企業が上場後も時価総額が低迷し、資金調達もままならない状況が続いている。これでは、成長を期待して投資した投資家にとっても、市場の活性化を期待した東証にとっても、望ましい状況とは言えない。
そこで、今回の改革では、企業に早期の成長を促し、市場全体の質を高めることで、機関投資家をはじめとする投資家にとって魅力的な市場へと生まれ変わらせることを目指している。厳しい基準をクリアできるだけの成長力を持つ企業だけが生き残り、より多くの資金と注目を集めることができるようになるというわけだ。
しかし、この改革は、グロース市場に上場する企業、そして上場を目指す企業、投資するベンチャーキャピタルにとって、大きな試練となることは避けられない。 5年後という短期間で時価総額100億円を達成するには、これまでの延長線上ではない、飛躍的な成長戦略が求められる。具体的には、革新的な技術やサービスの開発、海外市場への積極的な進出、M&Aなどによる事業規模の拡大など、従来以上に大胆かつスピーディーな経営判断が必要となる。同時に、投資家に対して、その成長性を明確に示していくためのIR活動の強化も不可欠となるだろう。
ジョルダンニュース編集部