【人インタビュー】テクノロジーで未来の社会を創る──「旗振り役」ハタプログループ伊澤諒太CEOが仕掛けるAI、教育、まちづくり
2025/11/28 14:03 ジョルダンニュース編集部

【上】「日の丸を背負う」精神で挑む最先端:AIロボット開発と大企業との協業 テクノロジーで未来を築く「旗振り役」
AIロボット開発の最前線に立ち、創業15年を迎えるハタプログループを率いる伊澤諒太CEO(38)。彼の経歴はユニークだ。かつてはボクサーとしてオリンピックを目指し、世界チャンピオン経験者と拳を交えた経験を持つ「アスリート」。しかし、その挑戦の精神は、現在、AI、Web3.0、教育、そしてまちづくりといった多岐にわたるフロンティアへと向けられている。NTTドコモ、日本航空、ベネッセ、学研といった日本のリーディングカンパニーと協業を重ね、次世代の技術を社会に実装する「旗振り役」を自任する伊澤氏。複数のジョイントベンチャー設立や、港区麻布台での地域創生活動、さらには未来の起業家を育てる教育事業まで、その活動範囲は広がる一方だ。彼はなぜこれほどまでに多くの分野で「新しいこと」を起こし続けるのか。その原動力と、彼が思い描く「人」と「テクノロジー」が共生する未来像を、上下二部構成で深掘りする。

創業15年で培った「生き物のようなロボット(Bionic Robotics)」開発力
Q. まず、ハタプロがどのような会社なのか、ご紹介いただけますでしょうか。
伊澤: 私自身は、今、AIロボットの開発会社であるハタプロの創業者として、もう創業15年が経っています。スタートアップというよりは、業界で長いことやっていますね。私たちは、NTTドコモさんや日本航空さんなど、様々な大企業のAIやロボットの共同開発を多く手がけてきました。
B2C(消費者向け)事業はそんなに多くやっていないので、一般的な知名度は高くないかもしれませんが、B2B(企業向け)のAIロボット開発の業界では、様々な大企業から評価されている会社として15年やってきています。
Q. 「AIロボット」とは具体的にどのようなものでしょうか。特に貴社の得意な開発分野について教えてください。
伊澤: 私たちは、動物型のAIロボット、つまり「生き物みたいなロボット」を作るのが得意な会社です。例えば、フクロウをモチーフにした「ZUKKU(ズック)」というロボットは、NTTドコモさんと協業したり、様々な会社と共同展開しているロボットです。

また、東京大学大学院医学系研究科の教授と共同研究したAIなども搭載しており、介護施設や東京大学医学部附属病院などでも研究を行っています。
生命を理解し、創る技術が次の領域へ
Q. その「ズック」のようなロボットには、どのような機能や技術が搭載されているのでしょうか。
伊澤: ハードウェアとソフトウェア、両方とも自社で設計開発しているのがコアなノウハウとなっています。特にAIは、主にコミュニケーションや対話をするロボットとして応用範囲が広いです。
例えば、対話する時の音声の動向を分析して喉の病気を見つけたり、認知機能の上がり下がりを検知したりといったことにも使っています。
Q. 可愛らしいデザインが、教育分野でも注目を集めているそうですね。
伊澤: もともとは研究用途で、ここまで可愛くする必要はなかったかもしれませんが、デザインが可愛いということで、子どもたちにも受けが良いです。学研さんにも気に入られ、最近では学研さんの新しい幼児教室の教材として採用していただいています。子どもたちが自然とAIに触れられるロボットとして、学研さんと一緒に教室に展開しているところもやっています。
未来を見据えた大企業とのジョイントベンチャー
Q. 自社ブランドのロボット開発だけでなく、大企業側からの要望に応じた開発(ODM)も多く手掛けているそうですね。
伊澤: はい。NTTドコモさん、学研さんだけでなく、日本航空さん、リクルートさん、サントリーさんなど、様々な企業の皆様と協業しています。
私たち起点から大規模な提案をすることもありますし、大企業側から「こういうものを作ってほしい」とご依頼いただくこともあります。ハタプロの技術を応用して、例えば「自動走行するエアロボを作れないか」といった最先端領域の事業開発を、業界を牽引する大企業と行ってきております。
Q. ベネッセさんの「ミラクルロボ」の開発にも関わられたと伺いました。
伊澤: ベネッセさんとしても、おそらくAIを教材に入れたのが初めてだったのが「ミラクルロボ」だったと思います。その時の監修を弊社で行っておりました。当時としてはすごく斬新で、大人気でしたね。
そもそもハタプロの社名が、「旗(フラッグシップ)」と「プロ(プロジェクト/プロダクト)」を組み合わせた造語で、「未来への旗振り役・旗印となるプロジェクトやプロダクトを作っていくぞ」という意味が込められています。
ベネッセさんの案件や、NTTドコモさんとの「ズック」の展開も、AIが一般化される前から、そのフラッグシップを目指して先んじて開発してきた、ということをずっとやり続けているのがハタプロです。
Q. その「未来を見据えた取り組み」の一環として、大企業との共同出資会社設立にも積極的ですね。
伊澤: ハタプログループとして、例えば2023年には三井住友フィナンシャルグループのSMBC日興証券さんと共同出資会社「Proof of Japan株式会社(プルーフオブジャパン)」を設立しました。これも未来を見据えた取り組みで、Web3.0(次世代インターネット)の領域での会社です。
証券会社がベンチャーと対等な立場で共同出資会社を作るのは非常に珍しいケースです。ロボット領域も含まれますが、Web3.0という、これまでのハタプロとは異なる新しい領域で会社を設立しています。これは、「(相手先企業の)人との思いが重なり合って実現した」ケースです。

Q. 他に、公的機関との珍しい共同出資の事例があるとも伺いました。
伊澤: 2018年には、地方自治体と東京の民間企業数社、そして長崎県の地方銀行による「半官半民の共同出資会社」 を立ち上げました。
この会社は長崎県の南島原市が発起人となり、副市長が代表取締役を務めるという非常に珍しい体制です。
私たちハタプロを含む東京側の企業3社と、地方銀行からそれぞれ取締役が参画し、地域のDXと新規事業創出を担う会社として運営しています。
地方自治体と民間採用のメンバーが混在しており、“公務と民間の強みを掛け合わせた地域の課題解決チーム”になっています。
設立から7年ほど経ちますが、安定した黒字経営を続けており、 半官半民モデルとして全国的にも成功例として評価されています。

「日の丸を背負う」精神はボクシングから
Q. 伊澤さんの原点についてお伺いします。多くの人が「無理だろう」と思うような新しい挑戦を続けるそのエネルギーはどこから来るのでしょうか。
伊澤: 根本は、テクノロジーの会社の代表として最先端をやりながら、「まちづくりの未来に結びつくような領域での会社を、共同出資という形で立ち上げ、経営している」ということにあります。
ただ、多くのことをやるようになったきっかけの一つは、ボクシングですね。
Q. ボクシングをされていたのですか。意外な経歴ですね。
伊澤: 高校時代、ボクシングをやり、オリンピックを目指していました。日経新聞のカルチャー系の特集で、「リングを降りたボクサーたち」として、「後の世界王者と戦った伊澤諒太氏は、ロボット開発を手掛ける経営者になった」とフォーカスしていただいたこともあります。
ボクシングのインターハイはトーナメントなので、勝てば勝つほど、自分の実力以上の相手に必ずチャレンジすることが前提のスポーツなんです。「身の丈以上の相手や、そんなの無理だろうと思われるようなことにもチャレンジすることは苦ではない」という精神は、このボクシングというスポーツから学んだことが大きいですね。
Q. そのボクシングからIT・起業へと転身されたきっかけは何だったのでしょうか。
伊澤: 怪我などもあり、ボクシングでオリンピック選手になるという夢が破れて挫折しました。その情熱を他の領域に燃やしたいと思った時に、ITやエンジニアの世界が、実力勝負で上に上がっていけるという点で「ボクサーっぽい」と感じたんです。
当時はまだ上場前のDeNAの南場社長が、「起業したい人向けの鞄持ち」のような実践的な取り組みを募集していて、それに飛び込みました。その時、南場社長が「自分たちは日の丸を背負って、世界に挑戦する会社なんだ」と話されていたのを聞いて、「まさにオリンピック選手みたいだ」と感じました。「起業家こそが、すごいボクサーっぽい」と気づき、そこから起業に興味を持ち、勉強を始めたという流れです。
Q. その起業家精神が、今のハタプロの事業にも通じているのですね。
伊澤: 23歳ぐらいからずっと、ウェブメディアの起業から始め、常に「これから伸びる最先端の領域」で、「日本で一番の人間である」と主張できるようなことに挑戦してきました。
その中で得た大企業とのご縁が、今も続いています。当時のクライアントだったNTTドコモの方々も、今では幹部クラスに昇進され、「伊澤君は新しい最先端のことを常にしている」というイメージから、新しいことをやる時に必ず声をかけていただける。テクノロジーの会社ではありますが、「人ベースのリアルな縁」も大事にしながら行っているのが、ハタプロの特徴かもしれません。
Q. 稼いだ資金は、ご自身の事業だけでなく、様々な社会貢献的な活動にも投じていると伺いました。
伊澤: 「稼いだ資金を社会のために投じる」ということをやっています。自分の夢だけでなく、「他の人の夢を応援する」という投資です。
SMBC日興証券とのWeb3.0の共同出資会社も、私だけでなく、先方のご担当者の方がその領域で強くチャレンジしたいという思いを持たれていて、ジョイントベンチャーを作ったのは、ある意味で、その方の夢を応援する側面もありました。最先端の技術を軸に、自分の夢だけでなく、他の方の夢も一緒に達成していくということをやっています。
次週「下」につづく。









