孫正義氏「AIブームはバブルではない」 サウジアラビア系国際会議 AGI加速へ投資の重要性を強調、NVIDIA株売却は苦渋の決断
2025/12/12 18:19 ジョルダンニュース編集部

サウジアラビアの非営利財団「FII Institute(FII研究所)」が11月30日、12月1日に東京で初開催した国際会議「FII PRIORITY アジアサミット」で、ソフトバンクグループの孫正義CEOとFII Instituteのリチャード・アティアスCEOが対談した。孫氏は、人工知能(AI)の進化は止められない自然な流れであるとし、AI関連市場の急騰について「バブルではない」と断言。一方、AI分野での日本の出遅れに対し、強い危機感を示した。

アティアスCEOは、汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)の実現を阻む最大の障壁は何かとの孫氏に問いかけた。孫氏は「進行を止めるものは何もない。AGIを作るのは非常に自然な流れだ」と強調。「資金が集まり、才能が集まっている。全世界が目覚めている」と述べ、技術革新の勢いは加速する一方であるとの見解を示した。
AIブームとその後の株価の調整について「AIバブルかと問う人々は、先見の明がない」と指摘。「いずれ人間より遥かに賢くなる」と述べた。 孫氏は、スーパーインテリジェンス(超知能)と物理的なAI(ロボット)によって、世界のGDPの少なくとも10%が代替されると予測。これは年間20兆ドル(約3,000兆円)に相当する規模だという。

また、アティアスCEOから、過去に保有していたNVIDIA株を売却したことについて問われると、孫氏は「私は(NVIDIA CEOの)ジェンスン氏を尊敬しており、エンジニアを大変尊敬している。株を1株たりとも売りたくなかった」と本音を明かした。その上で、「(OpenAIなどに)投資するために、より多くのお金が必要だった」と述べ、AI分野での成長機会に巨額な資金を投じる必要があったため、やむを得ず売却に踏み切ったことを示唆した。「もし、もっとお金があれば、NVIDIAの株は持ち続けていたかった」と付け加えた。

AI開発における日本の役割について問われると、孫氏は「私は日本について、心配している」と発言。AGIの進歩を止めるものはないとしつつも、「日本の社会は、AIの活用が十分ではない、積極的ではない」と指摘。「依然として多くの人々が様子見をしている」とし、日本が世界のAI革命から取り残されることへの強い懸念を表明した。
孫氏は、ソフトバンクグループの注力分野であるロボティクスについて、従来の機械的なロボットとは一線を画すと説明。同社が目指すのは、「身体を持った物理的なAI(Physical AI with embodiment)」であるとした。
人間が他の動物よりも優れているのは、筋肉ではなく「知能」であり、道具を使う能力にあるとし、「私が関心があるのは、機械的なロボティクスではなく、知能を備えた物理的なAIが身体を持った姿(embodiment)だ」と強調した。
AIが人類を支配する可能性についての懸念に対し、「AIが非常に賢くなったとき、その超知能が人間に悪意を持つ理由はない。彼らは私たちに優しくなるだろう」と述べた。AIは人間によって発明され、人間は社会にとって重要だと認識するため、「ロボットはヒューマニストになる」と楽観的な見通しを示した。
サウジアラビアのムハンマド皇太子が主導する非営利財団「FII Institute(FII研究所)」は、アジア初となる国際会議「FII PRIORITY アジアサミット」を東京で開催する。開幕に先立ち、リチャード・アティアスCEOが記者会見を行い、日本開催の意義とアジア戦略について語った。アティアス氏は日本を「アジアへのゲートウェイ」と位置づけ、単なるシンクタンクではなく、投資を通じて実社会にインパクトを与える「Do-tank(実行するタンク)」としての役割を強調した。
FII研究所は過去6年にわたりリヤドで大規模な年次総会「FII」を開催してきた。スイス・ダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会になぞらえて、「砂漠のダボス」の異名を持つ。今回は世界のリーダーや投資家が現地に赴く地域版サミットとして東京を選定した。アティアス氏は、ソニーのウォークマンや日産の電気自動車など、かつて世界を席巻した日本の技術革新に触れ、「日本は単なる一国ではなく、一つの文明だ」と敬意を表した。
サミットには高市早苗首相をはじめ、片山さつき財務相、小泉進次郎防衛相、赤沢亮正経産相など日本の主要閣僚も登壇した。またパートナー企業として、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3メガバンクが名を連ねた。









