高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 開幕間近の大阪・関西万博 経済効果は莫大、多少の赤字でも「まったく問題ない」理由

J-CASTニュース

   大阪・関西万博が2025年4月13日に開幕する。政府は会場建設や運営による経済波及効果を計2兆9155億円と見込み、国内産業の活性化につながるとアピールしている。万博への期待はどうか。

   大阪万博は25年4月13日から 10月13日までの184日間大阪市の人工島「夢洲」で開催される。万博への批判はいまだにある。ある人は、経済効果は信じられないという。赤字が出れば出るほど経済効果があがるのが、不思議でありえないという。

由緒ある枯れた産業連関分析、基本も知らずに素人が否定するのはあきれる

   大阪万博では、全国の経済波及効果について経済産業省が約2.9兆円になるとの試算を公表している。大阪府内では大阪府と大阪市が約1.6兆円になると試算している。

   経済効果試算の基礎技術は、90年ほど前にレオンチェフにより開発され、50年ほど前にノーベル賞を受賞した、由緒ある枯れた産業連関分析という手法。そうした基本も知らずに素人が否定するのはあきれる。もし、すごい間違いを発見したらノーベル賞ものだ。枯れた技術なので、今では研究者でなく中央政府や地方政府の役人でも計算できるし、その精度も低くない。

   この産業連関分析を知っていれば、万博期間中多少の赤字になっても全く問題ないのが分かる。なにしろ全国での経済効果が2.9兆円もあり、これらはほぼ準備期間で効果を発揮済みだからだ。

   その証拠は大阪府のGDPの推移をみればいい。大阪万博が決まったのは、18年11月。それから計画を練ったが、コロナ禍で20年度までは経済効果はあまり出なかった。しかし、21、22年度の大阪府の名目GDPの伸びは3.7%、4.2%と全国の2.9%、2.3%を大きく上回っている。

パチンコ愛好者をカジノに誘導できればギャンブル依存減

   となると、最近では万博後のIR(統合型リゾート)、特にカジノが批判対象だ。大阪カジノが酷くギャンブル依存を促進するとの主張だ。

   しかし、大阪カジノの期待収益率は国際的なマリーナ・ベイ・サンズ(シンガポール)の97%と同じで、国内の他のギャンブルより低い。この数字は大阪がギャンブル依存を著しく助長するとは言い難い。また、年間賭け金額は大阪74万円とやや大きいが、今のパチンコの半分以下である。今の街中パチンコより大阪カジノの方がまともである。もし、大阪府のパチンコ愛好者を大阪カジノに誘導できれば、今よりギャンブル依存を減らせるだろう。そもそも街中にギャンブルがあるのは国際的に異様であり、ギャンブルはカジノに閉じ込めるべきものだ。

   あとは、万博の開催期間中の不測の事故が起きないことを願うばかりだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

記事提供元:タビリス