いつ転職活動を始めるべき? 目標・キャリアビジョンは明確でなくてもいいのか...判断のポイントは【専門家が解説】

J-CASTニュース

   転職活動をするにあたっては、「5年後・10年後・20年後~に自分がどうなっていたいか、将来ビジョンを描いたうえで企業選びをするとよい」とも言われています。たしかに目指すゴールが明確になっていれば、そこから逆算して、今どんな経験を積めばいいかを判断しやすいでしょう。

   しかし、必ずしも目標をしっかりと設定してから転職活動を始めなければならないわけではありません。

   今回は、転職活動を進める中で「自分が大切にしたいこと」を明確化した方の事例をもとに、企業選びの判断基準について、リクルートエージェントでキャリアアドバイザーをつとめる西山知壱が解説します。

転職先の最終候補は2社 比較検討したとき「判断軸」が明確に

   大手メーカーで営業をつとめた後、仲間たちとベンチャー企業を立ち上げたAさん(20代後半)。仲間の一人に会社を委ね、自身は新たなキャリアを築くため転職活動を開始しました。

   当初のご本人様の希望条件は、こうでした。

「ベンチャー企業で経営企画や新規事業開発を経験し、面白いと感じたので、この方向性でキャリアを伸ばしていきたい」
「家族を安心させるため、できれば大手企業がいい」

   まずはこの条件に当てはまる求人に応募するところからスタート。複数企業で選考を受けた結果、最終的に選択肢が2社に絞られました。大手メーカーの企画部門と外資系コンサルティングファームです。

   具体的に企業を比較検討する段階になって、Aさんの中で、ある「判断基準」が明確になりました。それは「やりたい仕事」「目指すキャリア」「報酬」だけではなく、「人生で実現したいこと」です。

「人生は一度きりだから、海外に住んでみたい」

   その判断軸で2社の候補企業を比較すると、「この外資系コンサルティングファームのこのポジションだと、日本法人勤務が基本であり、海外赴任は難しいだろう」と判断。一方の大手メーカーは、海外展開しており、将来的には海外駐在のチャンスもあると考えました。

   その結果、提示された年収はコンサルティングファーム の方が高かったものの、思い描く生活を実現できる可能性があるメーカーへの転職を決断したのです。

具体的な選択肢があると、イメージを描きやすくなる

   Aさんのように、まずは大まかな方向性を決めて転職活動を開始してみて、具体的な選択肢が挙がった段階で、その企業で働くイメージを将来にわたって描いてみるのも有効な手段だと思います。

   実際、転職活動の途中で自分の潜在的な希望条件に気付くケースもあります。

   Bさんの場合は、リモートワークが可能な企業に出会ったことで、離れて暮らす家族のことを思い浮かべ、「何かあったときにすぐに駆け付け、ケアができる環境で働きたい」と考えるようになり、リモートワーク制度がある企業への転職を決めました。

   このように具体的に検討する材料があってこそ、自分の志向や価値観に照らし合わせやすくなり、自分が求めているものが明確になることもあるかもしれません。転職の目的や将来ビジョンがまだ固まっていなくても、まずは一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

   なお、求職者の皆さんと面談をしていると、「私は○○です」とはっきり口にはしなくても、これまでのお仕事のエピソードを聞くうちに「この方は○○を大切にしているんだな」という志向がつかめることがあります。

   キャリアアドバイザーという第三者の視点だからこそ見えることがあります。ですから、志向の気付きや整理に、私たちとの面談も役立てていただきたいと思います。また、キャリアアドバイザー以外の身近な第三者への相談でも整理につながることもあります。まずは誰かに話してみる、という選択肢も大事だと思っています。

「不採用でもいい」と、突き進むことも成長・成功に

   Aさんの転職事例には、ポイントがもう1つあります。それは「不採用になることを恐れず、さまざまな企業の選考を受けながら自身を成長させていった」ということです。

「選考を受けてみて通らなかったら、それはそれでいい。職務経歴書を見直してブラッシュアップしていけばいいし、面接も経験として活かせる」

   そんなマインドで、面接で得た気付きを次の面接に生かしていった結果、だんだん通過率が高まったのです。

   また、私からも、企業からの面接フィードバックを伝えました。採用を見送った大手企業からは、「Aさんが経験したベンチャー企業での事業開発と大手企業での事業開発では、活用するリソースや規模感の差があるので、即戦力としてのイメージが難しかった」という指摘がありました。

   そうしたフィードバックもAさんにとって気付きとなり、次の面接対策に生かせたと思います。

   ほかにも、不採用となった別の企業では、評価されなかったわけではなく、「実力がある方だと思うが、自社のカルチャーとは合わない」という声が寄せられました。

   このようなケースは決して少なくありません。不採用になることを恐れず、「合わなかっただけ。合う企業を探せばいい」と捉えれば、ポジティブな気持ちで転職活動を進めていけるでしょう。



【プロフィール】
キャリアアドバイザー 西山知壱/新卒では他社へ入社し、リクルートに転職。やりたいことが明確でなかった頃にお世話になったキャリアアドバイザーとの出会いをきっかけに、「人の人生を好転させるような気づきを提供したい」との思いから入社を決意。現在は求職者一人ひとりに寄り添い、キャリア選択をサポートしている。

記事提供元:タビリス