食料品は1%でも外食10%のままなら飲食店は大ピンチ それでも高市首相は消費税減税にこだわり続ける

J-CASTニュース

   来年4月から食料品の消費税率を2年間限定で1%に引き下げる議長案が2026年6月17日、政府の税制調査会において示された。

   歴史的な物価高に苦しむ国民にとって、日々のスーパーでの買い物負担が減るこのニュースは、救いの手のように思える。

   しかし、この政策の裏側で、ある業界が窮地に追い込まれる可能性を見過ごしてはならない。外食産業である。

9%の税率差が、消費者に外食離れをもたらす?

   今回の案では、1%の軽減税率が適用されるのは食料品のみであり、外食に関する消費税は10%に据え置かれる見通しだ。

   すなわち、同じ1000円の食事の場合、スーパーの総菜や持ち帰り弁当なら1010円、店内なら1100円と、ほぼ100円の差が生じる。

   現在導入されている8%と10%、2%の差であれば許容範囲だったかもしれない。

   しかし1%と10%、9%もの税率差が日常になれば事態はまったく異なる。

   実質賃金が上がらず、消費者が10円、20円の差に極めて敏感になっているなかで、消費者に割高感を植え付け、外食離れを劇的に加速させる可能性がある。

   帝国データバンクが2026年1月に発表した調査によれば、2025年の飲食店倒産件数は過去最多の900件を記録し、3年連続で増加している。

   コロナ禍での「ゼロゼロ融資」の返済負担が足かせとなっていることに加え、歴史的な食材費・光熱費の高騰によって利益率が悪化、さらには深刻な人手不足に伴う人件費増という、三重・四重の苦しみが現場にのしかかっている。

   限界ギリギリで暖簾(のれん)を守っている飲食店にとって、この9%の差が限りなく大きな打撃になりかねないのだ。

消費税ゼロにすると、課税システムが揺らいでしまう

   そもそも、先の衆院選で野党各党がこぞって「消費税ゼロ」を掲げて躍進したことを受け、政権与党も大幅な減税へと舵を切ったはずだが、それがなぜ、中途半端な「1%」になったのか。

   その背景には、レジのシステム改修が間に合わない、という表向きの理由がある。

   しかし、問題の根幹は、現在の日本の税制システムにおいて「課税だけれども税率ゼロ」と「非課税」の区別をつけることが極めて困難なのだ。

   0%にしてしまえば、インボイス制度などの消費税の申告システムの枠組みそのものが揺らぐ。

   さらに、期間限定ということで、将来的に税率を元に戻す際の手間やシステムの混乱を考えたときに、財務省にとっては「消費税ゼロ」は避けたい。

   一方で、高市早苗首相をはじめとする政治家は、食料品の負担減という「目玉政策」を何としてもアピールしたい。

   こうした流れのなかで生まれたのが、「1%への減税」だったという見方ができる。

現場に押し付けられるコストと「食のディストピア」

   インボイス制度の導入によって、すでに小規模事業者の経理実務は大混乱に陥り、実質的な増税を強いられたばかりだ。

   間髪入れずに期間限定となる消費減税が持ち込まれれば、レジシステムの設定変更にとどまらず、メニューの改定、値札の付け替え、持ち帰りと店内飲食の価格戦略の練り直しなど、膨大な実務負担が現場の事業者にのしかかる。

   そのコストは、体力のない中小の事業者にはまかないきれず、まわりまわって本体価格へ上乗せせざるを得なくなる公算が大きい。

   この理不尽極まりない逆風に耐えられるのは、テイクアウトへの転換や最新システムの導入が容易な、資本力のある大手チェーンくらいだろう。

   となれば、街を彩っていた多様な個人飲食店は淘汰され、どこを見渡しても同じ看板のチェーン店しか残らない。

   日本の豊かな食文化が失われ、画一的な景色が広がる──そんな「食のディストピア」が現実のものになろうとしているのだ。

   高市早苗首相は、ことあるたびに「強い経済」を訴えている。

   だが、政治のパフォーマンスのために現場に過剰な負担を強いて、街の多様性を切り捨てるような施策が、本当に日本に「強い経済」を呼ぶことになるのだろうか。

記事提供元:タビリス