企業の情報漏洩、不適切会計、ハラスメント対応の遅れ目立ち...リーダーに問われる「本音が出る状態をどうつくるか」

J-CASTニュース

   2026年に入り、企業経営や組織運営に関するニュースを見ていると、「リーダーとは何か」が改めて問われているように感じます。

   以前であれば、リーダーに求められていたのは、「決断力」「統率力」「強い発信力」でした。しかし現在、社会が厳しく見ているのは、むしろ別の部分です。

   それは、「現場で声が上がる組織になっているか」という点です。

「組織の空気」のほうが厳しく問われている

   今年も、大手企業による情報漏洩問題、不適切会計、品質問題、ハラスメント対応の遅れなど、さまざまなニュースが報じられました。興味深いのは、世の中が単に「問題が起きたこと」だけを見ているわけではない点です。むしろ、

「なぜ現場で止められなかったのか」
「なぜ声が上に上がらなかったのか」
「違和感を感じていた人はいなかったのか」

   という「組織の空気」のほうが厳しく問われています。

   実際、多くの第三者委員会報告や再発防止策を見ると、共通して出てくるキーワードがあります。

・心理的安全性・内部通報制度
・風通しの良い組織
・現場との対話
・上司とのコミュニケーション改善

   つまり、現在の企業経営では、「管理の厳しさ」だけではなく、「本音が出る状態をどうつくるか」が、大きなテーマになっているのです。

現場では違和感が共有されていたのに、上司に伝わってない

   私が携わったことのある企業では、次のケースが印象的でした。

   製造現場を抱える中堅企業で、小さな品質トラブルが続いていました。最初は軽微なミスだったため、現場も「すぐ修正できる」と考えていました。しかし、次第に同じような問題が増え、最終的には顧客対応を伴う大きな問題へ発展してしまったのです。

   後に社内ヒアリングをすると、現場では以前から違和感が共有されていました。

「最近、現場に余裕がない」
「確認工程が簡略化されている」
「人員不足が限界に近い」

   ところが、それが上に届かなかった。理由は単純でした。

「相談すると、まず『なぜ防げなかったのか』を問われる」
「問題提起=ネガティブと思われる」
「忙しい上司に言いづらい」

   そんな空気があったのです。現場責任者本人は、決して悪意があったわけではありません。むしろ責任感が強く、

「現場を守らなければ」
「数字を落としてはいけない」

   という思いから、厳しくマネジメントしていました。しかし結果として、その「厳しさ」が、「相談しづらさ」につながっていたのです。

   これは、いま、多くの組織で起きている問題ではないでしょうか。

「優しい組織作り」でなく、相談しやすい「心理的安全性」が大事

   かつての日本企業では、「強い上司」が理想像として語られました。即断即決し、弱音を見せず、部下を引っ張る存在。しかし、変化が激しい現在、そのスタイルだけでは限界が見え始めています。

   なぜなら、現代の組織では、「問題を起こさないこと」より、「問題を早く共有できること」のほうが重要になっているからです。

   その後、この企業では、マネジメント研修を大きく見直しました。管理職に求めたのは、「厳しく指導する力」だけではありません。

・まず背景を聞く
・途中で話を遮らない
・小さな違和感を歓迎する
・ミスを責める前に共有を評価する
・「相談してよかった」と思わせる反応をする

   こうした行動を、現場で徹底し始めたのです。

   すると、少しずつ変化が起きました。以前なら埋もれていた小さな問題が、早い段階で共有されるようになりました。現場から改善提案も出始めるようになり、結果として、大きなトラブルも減少していったそうです。

   ここで重要なのは、「優しい組織をつくる」という話ではない、という点です。最近、「心理的安全性」という言葉が広がっていますが、本質は「甘い組織」ではありません。

   本来の意味は、

・違和感を言える・分からないと言える
・ミスを早く共有できる
・上司に相談しやすい

   という状態をつくれるかどうかです。

   そして、その空気を最も左右するのが、現場リーダーです。

「問題をなぜ現場で止められなかったのか」が問われている

   いま、ニュースで報じられる企業問題の多くは、「問題が起きたこと」だけでなく、「なぜ現場で止められなかったのか」が問われています。

   だからこそ、これからのリーダーに必要なのは、「強く管理する力」だけではありません。むしろ、

・違和感を拾えるか・本音を引き出せるか
・相談しやすい空気を維持できるか

   という力のほうが、これまで以上に重要になってきているのだと思います。



【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ)/株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)、『決定版 「リーダーシップのコツ」をマンガでマスターできる本』(Gakken)

記事提供元:タビリス