演歌歌手の嘆きとコロナ・下 拍手と声援 高揚のあの世界が懐かしい

ジョルダンソクラニュース取材班(ジョルダン)



 女性歌手が続けた。

「よくこう言われます。たった1時間のステージで、好きな歌をうたってギャラを貰って、いい商売だ。とんでもありません」

 コロナ禍以前のスケジュール帳をめくりながら内情を明かした。それによると、ある月の2週間あまりの活動は、北海道で3日営業を行い、最終便で羽田着。翌日早朝、北関東のラジオ局回りで1泊。深夜に帰宅し、1日休んで大阪、神戸、奈良と4日間でライブにゲスト出演2回とCDショップ4店を回り、東海道新幹線の終電で帰宅。

 在宅の時に美容室、ネイルサロン、マッサージ、審美歯科などに通い心身のメンテナンス。いずれも芸能人価格のため、これだけで10万円以上が吹っ飛ぶ。

 また、後援会幹部へ挨拶や冠婚葬祭、友人の歌手のライブへの陣中見舞いなど、そのたびの手土産代や会食の費用で財布がどんどん軽くなっていく。

「こうしたお金は領収書の出ない出費。事務所が負担してくれるわけではない。お付き合いを欠かせば『あいつは業界の常識をわきまえないケチだ』と陰口をたたかれる」



 緊急事態宣言が解除された。心待ちにしていたことだし、まだまだ少ないが、仕事の依頼もボツボツと入ってくるようになったという。しかし、手放しで喜ぶわけにはいかない。

 歌謡曲系の音楽事務所関係者が明かした。

「Jポップの連中も痛手だろうが、演歌の世界にとって、コロナで中断したこの2年間は痛恨の歳月だった。まず、演歌好きのシニアのお客様たちが外出しない癖がついてしまった。皆で集まって楽しもうにも家族に止められることも多いようだ。歌手を呼んでくれる興行関係者の中には、コロナを機に廃業した人もいる。果たしてコロナ以前に戻れるのだろうか」

 最後に彼、彼女らが異口同音に語る本音を伝えよう。昭和天皇崩御に伴う歌舞音曲の自粛、リーマンショック、東日本大震災など歌謡界を激震が何度も襲った。しかし、何とか生き抜いてきた。

 その合間にはいい時代もあり、休みもロクにとれないほど全国を飛び回り、自分が今、何県の何市にいるのか、今日は何曜など分からないまま、夢中で過ごしてきた。ビタミン注射を打って頑張った。忙しくて、疲れて、緊張の連続で、舞台が跳ね、関係者との打ち上げが終わり、日付けが変わるころ宿泊先のホテルに戻り、数時間の睡眠後、次の土地に向かうこともあった。

 それもこれも「歌が好きで、お客様の声援と拍手が何よりうれしかったからだ」

 あの時代が懐かしい……(おわり)

演歌歌手の嘆きとコロナ・上 収入100分の1、仕事が溶けてなくなった