【人インタビュー】(下)「Colega AI(コレガエーアイ)」エリック・ファン氏__「街角の小さなお店を守り抜く」 Yコンビネーター出身スタートアップが挑む、中小企業のためのAI

ジョルダンニュース編集部

社会に革新をもたらすテクノロジー企業は、しばしば創業者自身の強烈な原体験から生まれる。Colega AIの創業者兼CEOであるエリック・ファン氏の原点もまた、彼自身の生い立ちに深く根ざしている。ニューヨークで生まれ育った同氏は、3世代にわたって続くレストラン経営の家系に出自を持つ。幼い頃から、家族が中小企業ならではの過酷なプレッシャーと向き合いながら現場で懸命に働く姿を目の当たりにしてきた。「どうすれば彼らの苦労を解決できるのか」。その強い思いが、彼のキャリアを決定づける羅針盤となった。

17歳の時、海外就労者向けのジョブサーチエンジンを立ち上げ1000人以上の海外就職を支援した。その後、オラクルやデルといった世界的な巨大テクノロジー企業で経験を積んだ。その経験を糧としながらも、大きな組織では個人として発揮できるインパクトに限界を感じ、最も情熱を持って取り組みたい課題に直接向き合うため、起業家の道を選んだ。

Colega  AIの創業メンバー(左からケイデン・シンCTO、エリック・ファンCEO、デファニー・シューCMO)

キャリアの早い段階で、ファン氏はYコンビネーターの支援を受けたシリコンバレーのスタートアップを共同創業し、画像認識に特化した機械学習技術に取り組んだ。その経験は、AIが伝統的な産業、特にこれまで最先端のイノベーションから取り残されてきた分野を大きく変革できるという確信をさらに深めるものとなった。

「Colega AI」は、彼にとっては2社目の起業となる。ベンチャーキャピタルの支援によるプレシードラウンドを完了し、次の成長フェーズを加速させるべく、現在シードラウンドの準備を進めている。ファン氏に、起業家としての日々の生活と将来へのビジョンについて聞いた。

――エリックさんご自身の経歴について伺います。これまでどのような教育を受け、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。大企業での経験もありながら、なぜ起業家(ファウンダー)という道を選ばれたのですか。

ファン氏:私はアメリカのニューヨークで生まれ育ち、その後シリコンバレーで多くの時間を過ごしてきました。大学ではデザインの側面に焦点を当てたマーケティングと広告を学びました。ブランドにとって意味のあるメッセージを作り出し、それを「ブランドの声」として消費者に届けることでビジネスを推進することに強い関心があったからです。同時にテクノロジーにも強い興味があり、高校時代から独学でコーディングを学んでいました。

私のキャリアや起業家としての確固たる基盤は、幼少期の環境に多大な影響を受けています。私は3世代続くレストラン経営者の家系で育ちました。両親や祖父母がスモールビジネスを運営し、資金繰りや人材不足など、数々の困難や挑戦に直面して苦労している姿を幼い頃から見てきたのです。「どうすればこの過酷な課題を解決できるだろうか」と常に内面で問い続けていました。

キャリアとしては、17歳の時に海外移住を希望しビザを求める人向けの「ジョブサーチエンジン」を立ち上げたのが最初のプロジェクトです。その後、オラクルやデルといった巨大なテクノロジー企業で働きました。しかし、大企業では一個人として持てる権限や影響力が小さく、自分が本当に情熱を持っている「スモールビジネスの課題解決」に十分な時間を割くことができませんでした。

だからこそ、自らのパッションを直接的な問題解決に結びつけるため、自然な成り行きとして起業家になることを選んだのです。起業家という肩書きが欲しかったわけではなく、解決したい明確な課題があったからこそ、その手段として起業を選んだという順序です。

――日本での起業家生活は非常に多忙だと思います。資金調達の状況や、現在利用されているGoogleの支援プログラム、そして日々直面している起業家としての課題についてお聞かせください。

ファン氏:現在、日本、台湾、サウジアラビアの投資家からプレシードラウンドで80万ドル(約1億2500万円)を調達しています。日本からはミレイズとシゼンキャピタル、台湾からはSparkLabsとSanpu Travel Groupに参画いただいています。投資家の多様性は、より大きな現実を反映しています。中小企業オーナーが直面する課題は、日本に限った話ではなく、世界共通の問題なのです。現在、顧客基盤と技術の両面で着実に成長を続けており、次のシードラウンドでは250万〜300万ドルの調達に向けて準備を進めています。

Colega AIの投資家であるSpark Labが主催するデモデイで講演するファンCEO

起業家としての最大の課題は、あらゆるファウンダーに共通すると思いますが、「リソースの欠如」と「時間の不足」の2点です。極めて限られたリソースで最大級の成果を出さなければなりません。私はCEOですが、同時にCMO(マーケティング責任者)であり、CFO(財務責任者)であり、カスタマーサポートでもあります。あらゆる責務を担っています。「電話が鳴ると、まず『CEOのエリック』として出て、保留にして、『カスタマーサポートのエリック』として戻ってくる」と冗談を言うこともあります。特に初期の頃は、あらゆる役割を一人でこなしてきました。そうした深い関与はビジネスへの理解を深める一方で、高い集中力と強い意志を必要とします。

スタートアップは、ライフスタイルそのものを変えるほどのコミットメントを求めます。週7日働き、効率性が何より重要になります。時間をかけて、些細な日常のルーティンさえも最適化することを覚えていきます。

幸いなことに、現在は「Google for Startups Campus」のプログラムに選出されました。競争率の高いプログラムで、現在は他のファウンダーたちとともにGoogleのオフィスを拠点にチームと共にフルタイムで働いています。メンターシップ、インフラ、そしてコミュニティへのアクセスは、私たちの成長を加速させる上で非常に大きな力になっています。

――最後に、Colega AIが目指す中長期的な目標と、この事業を通じてどのような社会を実現したいと考えているのか、ビジョンを聞かせてください。

ファン氏:定量的な事業目標としては、3年から5年の間に、日本国内で10万社の顧客に利用していただくことを目指しています。しかし、それ以上に重要なのは私たちがどのような会社であるかということです。私たちはミッション・ドリブンな企業です。私が実現したいのは、「スモールビジネスのオーナーが常に生き残り、繁栄し続けられる世界」です。大企業が豊富な資本力とブランド力を持っているというだけの理由で、愛されてきた地元のお店が駆逐されない世界を。資金や労働力がないという理由だけで素晴らしいビジネスが失敗してしまうような社会をなくしたいのです。

この会社のアイデアが形になったのは、新型コロナウイルスのパンデミックが終わりに差し掛かった頃でした。私が幼い頃から親しんできた多くの中小企業、子ども時代の記憶と共にある場所が、閉業を余儀なくされていました。コロナが明けても二度と戻ってくることはありませんでした。私の家族もビジネスを営んでいたため、その影響は人ごとではありませんでした。あの時期、中小企業に必要なのは「頑張る力」だけでなく、構造的なサポートであると強く実感しました。

エリック・ファンCEOはコロナの時期、サンフランシスコでカフェを運営していた。この経験がスモールビジネス向けAI開発の原点となった。

日本には、家族で経営している美しく素晴らしいスモールビジネスの文化が根付いており、世界中から高く評価されています。そうした愛すべきお店が長く続いていける未来を実現することが、私の長期的な使命です。テクノロジーは、その歴史と伝統を置き換えるものではなく、守り伝えるものであるべきです。そうして地域のコミュニティが、何世代にもわたって豊かに成長し続けていける。それが、私たちの目指す未来です。

【人インタビュー】(上)「Colega AI(コレガエーアイ)」エリック・ファン氏中小企業のSNS運用はAIにお任せあれ! 米起業家が語る「Colega AI」の勝算と日本市場の潜在力

記事提供元:タビリス