東京都、新興支援へ10億ドルの新枠組み 「スシテック」開催、首相は育成3本柱を表明
2026/5/7 11:27 ジョルダンニュース編集部

東京都などが主催するアジア最大規模のスタートアップとイノベーション会議「SusHi Tech Tokyo(スシテック東京)2026」が4月27ー29日に開催された。エネルギー問題やAI(人工知能)革命など不確実な国際情勢のなか、最先端テクノロジーを活用した持続可能な都市の実現を目指す同会議には、世界から6万人以上が集結した。東京都はスタートアップの海外展開を後押しするため、来年度までに官民連携で新たに10億ドル規模の投資マネーを呼び込む新枠組み「SusHi Tech Global Funds」の創設を発表した。高市首相も登壇し、国と都が連携して新興企業を育成する姿勢を鮮明にした。

■ 東京都、「10×10×10」の野心と実効性の可視化
小池百合子都知事は、「世界秩序が深い変化を遂げている今、企業として、都市として、そして次世代として団結しなければならない」と呼びかけた。都は「5年間で10億ドルをスタートアップ施策に投じる」というこれまでの目標を1年前倒しで達成する見通しだが、さらなる成長資金の呼び込みに向け、スタートアップの数、ユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)企業の数、そして官民協働をそれぞれ10倍にする「10×10×10」という野心的な目標を紹介した。
具体策として、スタートアップ企業の中でも成長可能性が高い「スケールアップ企業」育成の第一弾となる77社を選定した。さらに、過去4年間で東京都が連携した約1000社の市場価値がほぼ倍増した実績を示す「東京スタートアップ・データベース」も公開した。また、小池知事は多様性(DE&I)を喫緊の課題と位置づけ、今回の登壇者の50%以上を女性が占めたことを強調したほか、世界50都市以上のリーダーが集う「G-NETS」リーダーズサミットも併催して国際協力をアピールした。

■ 高市首相、ディープテック育成と政府調達の「3本柱」
特別講演には高市首相と小池知事がそろって登壇し、国と都の強力な連携を強調した。高市首相は、スタートアップが生み出す付加価値が日本の名目GDP比で4%を占め、過去2年間で32%増加したデータを引き合いに出し、経済成長の主要な担い手として強い期待を表明した。
そのうえで、スタートアップ育成の「3つの柱」を新たに提示した。第1の柱は、東京をゲートウェイとしたグローバルな資金調達環境の強化である。第2の柱はディープテック支援で、AIや半導体など17の戦略分野において研究開発から事業化までを支援し、各省庁での試験導入を通じて政府調達(SBIR)へのハードルを大幅に引き下げる方針を明確にした。第3の柱としては、地域の大学・高専発技術を活用した起業や、自治体による調達の後押しを掲げた。

■ ピッチ優勝はマレーシアの「カーボテック」
注目のピッチコンテスト決勝では、マレーシア発の「カーボテック(Qarbotech)」がグランプリ(賞金1000万円)を獲得した。同社はもみ殻などの農業廃棄物を原料に、酸を使用しないプロセスで有機「炭素量子ドット(CQD)」を製造する独自技術を持つ。この技術を用いた葉面散布型スプレーは、植物が通常吸収しきれない光を変換し、曇天時でも晴天時と同等の光エネルギーを補うことができる。

米国企業の競合製品が重金属ベースであるのに対し、同社の技術は農業廃棄物由来で直接作物に使用できる安全性が強みだ。ザンビアのトウモロコシで31%増、パキスタンの綿花で82%増の収量アップを1エーカー19ドルという低コストで実現してきた。日本市場への参入も本格化させており、茨城県の実証実験では米の収量が17%向上した。既存の肥料等と混合して一度に散布できるため、高齢化が進む日本の農業現場でも作業負担なく導入しやすいという。同社は現在、新たに400万ドルの資金調達を進めており、将来的にはIPOやM&Aを視野にグローバル展開を加速させる構えだ。









