アクセルスペース、次世代衛星7機を同時打ち上げへ ニコンと協業拡大、広域を毎日観測 中東情勢などで衛星画像の需要増

ジョルダンニュース編集部

宇宙スタートアップのアクセルスペース(東京・中央)は19日、次世代地球観測衛星「GRUS-3(グルース・スリー)」7機にニコン製の特注望遠鏡を搭載し、2026年7月以降に打ち上げると発表した。1つのロケットで打ち上げた後、軌道上に均等に配置することで、北緯25度以上の同一地点を1日1回の頻度で観測できる体制を構築する。

アクセルスペースの中村友哉社長(右)とニコンの大村泰弘社長(左)

今回打ち上げられるGRUS-3は、重量約150キログラムの小型光学観測衛星だ。地上分解能(地上の物体を識別する能力)は、従来の2.5メートルから2.2メートルへと向上した。同日の記者会見でアクセルスペースの中村友哉社長は、「望遠鏡は同じだが、イメージセンサーを非常に高性能なものに変更した。実質的には見た目を含めて大きな改善がある」と説明した。さらにソフトウェア処理による画質向上も組み合わせることで、「実際の数字上よりもかなり良く見える」と自信を示した。

アクセルスペースが打ち上げる次世代地球観測衛星「GRUS-3」

これにより、ニコンの宇宙望遠鏡開発ノウハウと組み合わさることで、「羽田空港に並ぶ航空機の種類が識別できる」ほどの高精細さを保ちつつ、「東京23区の幅」に相当する1機あたり28.3キロメートルという広大な観測幅を安定した品質で実現する。

GRUS-3に搭載する望遠鏡

■ 安全保障と「中分解能」の強み

海外の衛星事業者が安全保障向けの「高分解能」にシフトするなか、アクセルスペースはあえて広域を一度に撮影できる「中分解能」に特化する戦略をとる。中村社長は「世の中に商用で活用できる中分解能の衛星がほとんどない」と指摘。緊迫するホルムズ海峡などの情勢を念頭に「衛星から見るというニーズが高まっている」と言及し、画像撮影等への制約がかかりにくい中分解能の利点と、国産である強みを最大限生かして事業展開すると述べた。将来的には防衛省の事業へも貢献していく方針だ。

■ 量産の壁と、今後の連携

7機への大幅増強は、事業収益の面でも大きな意味を持つ。これまでの5機体制では、短期間での広域モニタリング要請に応えきれず「ギブアップするケース」もあったが、今回の増強で観測の取りこぼしを防ぐことができる。中村社長は「これまで以上に大きく収益に貢献する」と強調した。

一方で、一度に7機を製造することについては「どうしても個体差が出てしまうため、それをどうカバーしていくかという量産に関する部分で大きなチャレンジがあった」と開発の苦労を明かした。将来の量産を前提としたコスト効率の向上も目指すなか、現在のところイメージセンサーはアクセルスペースの内製だが、今後の両社のパートナーシップについて中村社長は「(連携を)深めるということも是非今後議論していきたい」と意欲を見せた。

ニコンの大村泰弘社長も、「1971年にNIKKORレンズがアポロ15号に搭載されて以降、幅広い製品が宇宙分野で活用されてきました。アクセルスペースの小型衛星に、当社の望遠鏡を採用いただいており、大変光栄です。今後も同社とのパートナーシップのもと、衛星による地球観測へ貢献していければと思います」とのコメントを寄せた。

【記者の目】「非・最高画質」の逆張り戦略、量産化の壁越え真価問う

アクセルスペースの次世代衛星戦略は、世界の宇宙ビジネスにおける「逆張り」とも言える興味深いアプローチだ。現在、世界の地球観測衛星市場では、より細かなものを識別できる「高分解能」への開発競争が激化している。特に欧米の有力プレイヤーは、各国の安全保障上の需要を確実に取り込むため、こぞって超高解像度へとシフトしているのが現状だ。

しかし、解像度を極限まで上げれば、一度に撮影できる範囲はどうしても狭くなる。アクセルスペースはあえて「中分解能(2.2メートル)」に留めることで、一度に28.3キロメートルという広域を捉える道を選んだ。災害時の広域状況把握や、サプライチェーンの監視、さらには中東情勢を受けたエネルギー関連施設のモニタリングなど、広範囲の変化を「面」で、かつ「毎日」捉えたいというニーズは民生・安保の両面で根強い。海外勢が手薄になっている中分解能の市場において、画像撮影の制約が少ない国産衛星の優位性を活かせば、ニッチながらも巨大な市場を開拓できるポテンシャルを秘めている。

課題は、製造の「スケールアップ」だ。今回、同社は7機もの衛星を同時期に製造する過程で、個体差を調整する「量産化の壁」に直面したという。宇宙空間という過酷な環境で稼働する精密機器を、一定の品質で安価に大量生産するノウハウは、一品モノの衛星開発とは次元の異なる難しさがある。将来的に20機、25機と需要に合わせて機数を柔軟に増やしていく構想を描くなかで、量産体制の確固たる構築は避けて通れない。

そこでカギを握るのがニコンとの協業深化だろう。ニコンが長年培ってきた精密な光利用技術やコスト効率向上の知見は、宇宙スタートアップにとって喉から手が出るほど欲しいリソースだ。単なる部品供給にとどまらず、センサー部分の共同開発などにまで踏み込めるかが焦点となる。日本発のスタートアップが、老舗光学機器メーカーの力を借りて世界の宇宙ビジネス市場で勝ち残れるか。7機の同時打ち上げは、その試金石となる。

記事提供元:タビリス