30周年を迎えた東京ゲームショウ、目立つ欧州勢。イタリア・フランス・スウェーデンは団体で、戦時下のウクライナからも選出
2026/9/21 19:39 ジョルダンニュース編集部

アジア最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2026(TGS2026)」が9月17日から開催された。30周年を迎えた今回、欧州勢の存在感が目立った。イタリアやフランス、スウェーデンはゲームおよびデジタルコンテンツ企業が代表団を組んで参加し、日本市場でのパートナーシップ獲得に向けたビジネス商談に取り組んだ。戦時下のウクライナからも、インディーゲームのチームが審査企画「Selected Indie 80」に選出されて参加した。日本企業との共同開発やパブリッシング契約を見据え、国境を越えたアライアンス構築が急速に進んでいる。
TGS2026は一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催し、株式会社日経BPおよび株式会社ソニー・ミュージックソリューションズが共催した。史上最長となる5日間(台風の影響で1日短縮し、4日間)の会期で、53の国・地域から過去最多の1,138企業・団体が出展し、4日間のリアル会場来場者数は25万7,642人に達した。

過去最多出展のTGS2026と欧州・新興勢の熱気
イタリア貿易促進機構(ITA)とイタリア・インタラクティブ・デジタル・エンターテインメント協会(IIDEA)が共同で設置したイタリアパビリオンには、精鋭のゲーム開発スタジオ11社が集結した。9月18日夜には、東京・渋谷で、出展各社によるピッチセッション「Italian Game Showcase」が開催され、1分間で自作の強みをアピールする「フラッシュピッチ」が展開された。
セッションで壇上に立った在日イタリア大使館参事官(経済成長・輸出促進部長)のアントニオ・ノルフォ氏は、「2024〜2025年のイタリアにおけるゲーム市場価値は20億ユーロ近くに達し、2023年比で3%の成長を記録した」と市場動向を定量的に示した。その上でノルフォ氏は、「4,000万人以上のプレイヤーを抱える国内基盤を背景に、創造性豊かなイタリア企業が日本のパートナーと関わりを深めることを期待している」と語り、日伊の提携強化を力説した。
続いて挨拶に立ったイタリア大使館貿易促進部部長のジャンパオロ・ブルーノ氏も、「イタリアのゲーム産業は若いが、非常に高い潜在能力と豊かなクリエイティビティを有している」と評価した。ブルーノ氏は、「3年連続のTGS参加となり規模も拡大しているが、我々の目的は単なる展示会出展にとどまらず、世界最高峰のエンターテインメント市場である日本と長期的な協力関係を築くことだ」と述べ、単発の露出を超えた相乗効果の構築に強い意欲を示した。

イタリア、税制優遇などで支援 ゲームスタジオの戦略
現在、イタリアには200社以上のゲーム開発会社と2,800人以上の専門職が在籍している。業界団体のIIDEAにはコンソールメーカーやパブリッシャーなど90社以上が加盟し、欧州のVideo Games EuropeやEuropean Game Developers Federation(EGDF)とも連携している。イタリア市場の最大の強みは、適正な制作コストの25%を対象としたゲーム向け税額控除制度やアクセラレーションプログラムといった強力な公的支援体制にある。これにより、インディー規模の予算でありながら、大手に迫る高品質なタイトルを効率的に制作する競争力を備えている。
出展した11社の顔ぶれは、技術力と独創性を両立させたポートフォリオを見せる。ジェノヴァ拠点のUntold Games(アントールド・ゲームズ)は、原子力事故により隔離された都市を描くオープンワールド・サバイバルシミュレーター「City 20」を早期アクセス公開し、日本・アジア市場でのパブリッシングパートナーの開拓を目指す。また、Aion Interactive(アイオン・インタラクティブ)は心理学と歴史伝承を融合させた心理ホラー「Hyperarousal」を掲げ、プレイヤーの行動パターンを分析する独自の心理システムでアジア圏の提携先を求めている。さらに、Megalith Interactive Studios(メガリス・インタラクティブ・スタジオ)はUnreal Engine 5とMetaSoundsを活用した「IDILI: Awakens」でリアルな没入感を提示し、34BigThings(34ビッグシングス) やStupidi Pixel(ストゥピディ・ピクセル) なども独創的なIPで日本市場への本格参入を目指している。

ウクライナ分散型チームの挑戦 「Selected Indie 80」で「DDoD」披露
欧州勢の対日アプローチにおいて、地政学的試練を乗り越えグローバル展開を狙う東欧・ウクライナのインディーデベロッパーも顕著な存在感を示した。CESAが厳選するインディーゲーム開発者の登竜門企画「Selected Indie 80」において、ウクライナ発のスタジオであるThe Future Entertainment Company(フューチャー・エンターテインメント・カンパニー)の最新作「DDoD」が公式選出された。「DDoD」は、射撃の手応えとミュータントとの戦闘を楽しめる見下ろし型ローグライトシューターであり、名作RPG「Diablo」のようなスタイルとテンポに、「S.T.A.L.K.E.R.」を思わせるダークで重厚な雰囲気を融合させた作品である。プレイヤーは意思を持つ物質「霧」に侵された封鎖工業地帯「紫の大地」を舞台に、生存をかけた苛烈な浄化ミッションに挑む。
同スタジオは、本国が戦時下にあるという状況も踏まえ、開発拠点と人材のグローバル分散という現代的な組織形態をとっている。Future Entertainment Companyの開発チームは、「私たちは約15人の小さなインディーチームで、メンバーはウクライナからヨーロッパ各地、そしてカナダまで、世界中に散らばっている」と過酷な環境下での体制を明かした。
フランス「France 2030」、映像関連企業が日本との協業狙う
フランス政府も国家長期投資計画「France 2030」の一環として、文化省のもとフランス貿易投資庁(ビジネスフランス)およびアンスティチュ・フランセが共同運営する「ICC イマージョン・ジャポン2026」ミッションを組成した。9月14日から18日にかけてアニメ、没入型(VR)コンテンツ、ゲームを手掛ける企業9社が来日し、9月15日のフランス大使公邸でのレセプションやTGS会場内のビジネスミーティングエリアに設置された「French Delegation」ブースで個別商談を重ねた。
文化産業が国内GDPの2%を占めるフランスでは、フランス国立映画映像センター(CNC)と日本の映像産業振興機構(VIPO)の合意文書締結に見られるように、官民連携による国際共同制作が活発化している。代表団には、Roblox上で没入型ゲーム開発を行うRIVRS や、NetflixやUbisoftと協業実績を持つSun Creature、日本のスタジオと協業するTCHACK など多彩なスタジオが参加し、日仏間でのIP相互利用や共同資金調達の協議を進めた。
スウェーデン、地方拠点が連携・出展
スウェーデンも「Sweden Game Arena」のもとで12社のインディースタジオをTGS2026に派遣した。人口約1000万人でありながら、同国のゲーム産業売上高は年間約5520億円に達し、1100社を超えるゲーム関連企業がひしめく一大産業へと成長を遂げている。欧州の主要ゲーム開発国の中で、スウェーデンはゲーム産業に対する国家的な財政助成金制度を持たない唯一の国だという。1990年代に政府が推進した家庭用PC導入支援策などを契機にテクノロジー国家へと飛躍し、助成金に依存しない自立的なエコシステムを構築した。現在ではゲーム産業が同国の世界サービス輸出総額の3%以上を占め、国内で9000人以上を雇用している。「Minecraft」や「Helldivers」など世界的な大ヒット作も数多く輩出してきた。
今回の来日では、南部マルメの「Game Habitat」や人気作「Valheim」を生んだ「Skövde Science Park」など、国内4つの主要エコシステム組織が結集した。地方ごとの育成拠点や共同オフィスを通じて多様な開発者を抱えており、東京ゲームショウに先立つ9月16日、東京のTiBで、ゲーム産業の全体像の説明や自作のPC・コンソール向けタイトルを抱えるインディー開発陣が、日本やアジアでの資金調達やパブリッシングパートナーの獲得に向けて意気込みを語った。

日欧・新興デジタルエンタメ共創の可能性
世界的なゲーム開発の大型化と長期化に伴い、開発コストの増大リスクをいかに低減するかがグローバル市場における経営課題となっている。国境を越えたオープンイノベーションは必須だ。単なる言語対応やカルチャライズにとどまらず、企画初期段階からの共同資金調達やグローバル配信権を考慮したアライアンスの定着は進むのか。日本のコンテンツ企業は欧州勢の優遇措置や先進技術、多様なグローバル人材を取り込み、世界市場に向けた共創体制を構築できるのか。今後のデジタルコンテンツ市場における競合優位性を左右することになりそうだ。
(ジョルダンニュース編集部)









