日本スタートアップ大賞 内閣総理大臣賞はAI現場革新のMujin、国土交通大臣賞は空飛ぶ車のSkyDrive 経済安全保障の観点重視
2026/9/27 12:11 ジョルダンニュース編集部

政府は2026年9月25日、総理大臣官邸で「日本スタートアップ大賞2026」の表彰式を開催した。経済産業省や国土交通省、防衛省など7省庁が主催する同賞において、最高賞の内閣総理大臣賞には「フィジカルAI」で物流・製造の自動化を推進するMujin(ムジン)が選ばれ、モビリティ分野では国土交通大臣賞に「空飛ぶクルマ」を開発するSkyDriveが輝いた。今年で10回目の節目を迎えた本賞は、社会課題の解決と国内投資の拡大を牽引する次世代イノベーションのロールモデル10社を顕彰した。

「現場の生産性3倍」と空の移動 技術実装が拓く新市場
表彰式の挨拶で、高市早苗総理大臣は挨拶で「高市内閣では日本成長戦略においてスタートアップを横断的課題に位置づけている。フィジカルAIや防衛、航空・宇宙、フードテックなど戦略17分野における国内投資を牽引する重要な担い手になっていただくことを大いに期待している」と述べ、スタートアップが日本経済の成長エンジンとなる重要性を強調した。
内閣総理大臣賞を受賞したMujinは、産業用ロボットに自律的な判断力を与える独自の「フィジカルAI」と統合プラットフォーム「MujinOS」を展開する。複雑な物流倉庫や工場における多品種積み付け等の完全自動化を実現し、深刻な人手不足の解消と生産性向上に貢献している。同社CEO兼共同創業者の滝野一征氏は、「ソフトウェアで現場の生産性を3倍にする世界を目指している。多様な自動化機器を統合制御するソフトが極めて重要であり、世界中の現場でリアルデータを蓄積しながら産業の経営変革を起こす」と力強く語った。

国土交通大臣賞を受賞したSkyDriveは、電動垂直離着陸機(eVTOL)である「空飛ぶクルマ」の開発を進める。都市部の交通渋滞緩和や離島・山間部における移動利便性の向上、災害時の緊急輸送など、次世代の立体型交通インフラの構築が期待されている。同社代表取締役CEOの福澤知浩氏は、「機体の騒音レベルを既存ヘリコプターの3分の1以下に抑える技術を実現した。2028年の事業開始に向け、安全性の確立と運航管理体制の整備を着実に進めていく」と今後の展望を示した。

続いて、昨年に続き2回目の設置となった防衛大臣賞には、水上無人機群による海洋常時監視ネットワークを開発するOceanic Constellationsが選出された。同社共同代表取締役CEOの本田拓馬氏は、「3次元デジタルツインとフィジカルAIにより海洋の状況を再現・可視化し、海洋国家である日本の新たな勝ち筋を築く」とアピールした。

さらに、各分野で社会課題の解決に挑む企業へ各省大臣賞および特別賞が贈られ、各社代表者が抱負を述べた。
経済産業大臣賞を受賞したリージョナルフィッシュの梅川忠典代表取締役社長は、「ゲノム編集等により水産物の品種改良を進め、世界で戦える持続可能な水産業を目指す」と語った。農林水産大臣賞を受賞したOishii Farmの古賀大貴共同創業者兼CEOは、「施設園芸と工業の技術を結集し、日本発の植物工場システムを世界へ輸出していく」と宣言した。
文部科学大臣賞を受賞したラピュタロボティクスのモーハナラージャー・ガジャモーハン代表取締役CEOは、「既存倉庫の運用を止めずに導入できる独自の群制御AIで、物流の省人化を推進する」と説明した。厚生労働大臣賞を受賞したUbieの阿部吉倫代表取締役(医師)は、「医療AIの活用により書類作成時間を3分の1程度に削減し、医師が患者と向き合う時間を創出する」と指摘した。
総務大臣賞を受賞したSakana AIの伊藤鍊共同創業者・代表取締役社長は、「巨大な計算資源に頼らず、自然界の集合知を応用した国産AIで基幹産業を強くする」と強調した。
審査委員会特別賞には2社が選ばれた。咽頭画像解析AI『nodoca』を手掛けるアイリスの沖山翔代表取締役社長は、「信頼される医療AIの社会実装を通じ、国際展開を図る」と述べた。機密コンピューティングを展開するAcompanyの高橋亮祐代表取締役CEOは、「安全なデータ利活用とAI活用のためのセキュリティ標準を確立する」と意気込みを語った。展示を視察した高市総理は、「さらなるスケールアップに向けて強力な支援を継続する」とコメントした。
人手不足の壁を打破 産業の知能化が導く構造改革
今回の受賞企業群は、日本の産業界が直面する生産年齢人口の減少やインフラ老朽化に対し、ソフトウェアやディープテックを組み合わせた解決策を示している。特に物流や交通分野における自動化や立体的な移動手段創出の取り組みは、サプライチェーンや交通網の制約を克服する大きな波及効果を持つ。
また、防衛や医療、フードテックといった戦略分野での技術実装は、従来の労働集約的構造からの脱却を促す。経済安全保障や食料安全保障の観点からも、国内スタートアップによる先端技術の社会実装は、国際市場における日本の産業競争力を再構築する強力な推進力となる。
「実証」から本格社会実装へ 問われる制度設計と資金供給
今後の焦点は、技術開発や実証フェーズから大規模な商業展開(スケールアップ)への円滑な移行である。制度設計や安全基準の確立、既存産業との連携を深めつつ、国内外からの成長資金をいかに呼び込めるかが、日本経済の潜在成長率の底上げを左右する。
(ジョルダンニュース編集部)









