敗戦の淵から挑む GMO熊谷氏のロボット独立宣言 第4回GMO大会議・秋
2026/9/28 19:20 ジョルダンニュース編集部

GMOインターネットグループは9月15日、都内で「第4回GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」を開催した。オープニングメッセージに登壇した熊谷正寿会長兼社長は、急速に進化する世界市場で日本が「周回遅れ」に直面している強い危機感を表明。2040年に懸念される1000万人の労働力不足を克服するため、国内技術を結集した「ソブリンヒューマノイド(国産人型ロボット)」の立ち上げと産業再生を訴えた。(以下、敬称略)

垂直上昇する世界の知能、取り残された技術大国
「この3年10カ月で、日本は周回遅れもいいところだ」
9月15日、東京・渋谷の熱気に包まれた会場。GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿は、詰めかけた聴衆を前に語気を強めた。壇上に立つその表情には、強い苛立ちと、背筋が凍るような危機感が入り混じっていた。

インターネット黎明期から31年。デジタル革命の波を最前線で泳ぎ切ってきた起業家・熊谷の目にも、足元のAI革命の速度は「異常」と映る。
「2022年11月にChatGPTが登場して以降、AIの成長曲線は垂直上昇の領域に入った。人間が手でコードを書く時代は終わり、AIが自らを改造する。電気さえあれば24時間連続稼働し、自己複製を繰り返す。私の率直な実感として、人工超知能(ASI)はすでに達成された」

だが、世界が超知能の領域へ疾走する一方で、かつて「ロボット王国」と称された日本は完全に過去の遺物となった。1980年代から90年代にかけて、日本は産業用ロボットで世界シェアの9割を握った。しかし、従来の成功体験に甘んじる間に、米中がAIを脳に持つ「フィジカルAI」で台頭。日本はその疾走の前に足をすくませていた。
「直近の3年10カ月で完全に置いていかれた」と熊谷は言い切る。「原因は明白だ。誇れる国産AIの不在、産官学の分断、過去の栄光への執着、そして研究開発投資の圧倒的不足だ」
さらに重くのしかかるのが、日本のコスト構造の欠陥だ。AIやロボットの稼働には膨大な電力が欠かせないが、日本の電気代(1キロワット時あたり20〜30円)は米国テキサス州(約2円)の10倍に達する。「サーバーを回すだけで10倍のコスト差がつく。この構造的ハンデを放置して世界と戦えるはずがない」と断言した。
米中巨頭の資金力に圧殺される日本の沈黙
グローバル市場の主導権争いは、すでに巨額のマネーゲームと化している。
中国勢を中心とする「オープン型」の代表格ユニツリー社は、上場時の時価総額が10兆円に達し、任天堂やパナソニックに匹敵する。「たった1つのロボットベンチャーにこれほどの価値がつくのが世界の現実だ」と熊谷は語る。
一方、自社でハードとソフトを完結させる米テスラの時価総額は220兆円に達し、トヨタ自動車(約44兆円)を遥かに凌駕する。「時価総額の差は将来の技術開発に投入できる資金力の差だ。米中の巨頭が巨額投資で突き進む中、日本人がのんきに構えていれば二度と追いつけない差がつく」
その冷酷な現実を痛感したのが、2026年8月に北京で開かれた「人型ロボット運動会」だった。16カ国157社、2000台超のヒューマノイドが開幕に集結する中、日本勢の参加はGMOの1社のみであった。「世界が火花を散らす主戦場に、日本の産業界はリングにすら上がっていない」

GDPを再定義せよ 1000万人減の暗雲を払う「独立宣言」
だが、熊谷は絶望を語るために壇上に立ったわけではない。この惨状を覆す起死回生の一手こそが、国内技術を結集した「ソブリンヒューマノイド」の確立である。
日本は2040年に1000万人の労働人口が消失する。「このままでは工場のラインが止まり、工事現場は放棄され、救急車も来ない。国としての機能が崩壊する」と警告する。
そこで熊谷が打ち出したのが、新たな方程式だ。「これまでのGDPは『労働人口×生産性』だった。だがこれからは『(労働人口+ヒューマノイド)×生産性』へと再定義される。世界中の指導者がロボットの奪い合いを始める前に、自前で機体を賄う足場を固めなければならない」
熊谷の視線は、EVシフトに揺れる国内の中小製造業へ向けられている。車の部品点数が半減し存続に揺れる技術力こそ、ロボットの体内を支える宝だ。「米中ロボットの体内にはすでに多くの日本製精密部品が使われている。技術を持つ中小企業がヒューマノイド製造へ転換し、自前のボディを供給する。それこそが日本の製造業を救う道だ」
「ソブリン」を掲げ、再び世界から頼られる国へ
GMOも背水の陣を敷く。チューリングへの50億円出資やGPU基盤の提供に加え、渋谷本社に400坪の「ヒューマノイドラボ」を開設。さらに導入時のセキュリティ点検を行う「GMOセーフ」、現場の失敗データを還元する「GMOループ」、故障時に駆けつける「ヒューマノイド救急車」など、社会実装を泥臭く支えるインフラを整えた。
「日本が再び世界から頼りにされ、リスペクトされる美しき技術大国として復興してほしい。それだけが私の願いだ」

熊谷は力強い眼差しで締めくくった。「日本のものづくり技術を結集し、全員で国産ヒューマノイドを立ち上げよう。我々には立ち上がる技術と誇りが残っているはずだ」
敗戦の淵から立ち上がる起業家の執念と、国家存亡の危機を直視した熱量。熊谷が放った「ロボット独立宣言」は、停滞に慣れきった日本経済の胸元に重い一撃を打ち込んだ。
(ジョルダンニュース編集部)









