スタンフォード大学発の米クレスタ日本参入 コンタクトセンター支援、顧客体験AIで人手不足対応

ジョルダンニュース編集部

米シリコンバレー発で顧客体験(CX)領域の会話型人工知能(AI)を開発する米クレスタ(Cresta)は10月8日、東京都内で「クレスタ メディアブリーフィング」を開催し、日本法人「クレスタ AI合同会社」の事業開始と日本市場への本格参入を発表した。同社はAIによる全自動化ではなく、コンタクトセンターや営業の現場で働く人をAIがリアルタイムで支援・拡張する「AIインザループ」構想を掲げる。深刻化する人手不足や2026年10月1日施行のカスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置義務化に直面する日本企業に向け、対話分析から生成AIエージェントによる自動化、オペレーター支援までを一元提供し、顧客対応業務の構造改革を支える方針だ。
▲記念撮影に応じるクレスタの関係者ら

◾スタンフォード発の生成AI大手 累計2.7億ドル超を調達

クレスタは2017年、スタンフォード大学のAIラボ(Stanford AI Lab)を起点に創立された会話型AI分野のリーディングカンパニーである。米グーグルの「Contact Center AI」や「Vertex AI」の立ち上げを主導したPing Wu氏がCEO(最高経営責任者)を務め、米オープンAI(OpenAI)の元CMO(最高マーケティング責任者)らが参画しており、先進的な技術基盤を持つ。これまでに米国のセコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツのほか、日系VCのWiLや米アクセンチュアなどから累計で2億7,000万米ドルを超える資金を調達している。

グローバル市場では、米ユナイテッド航空やアラスカ航空、マリオット、CVSヘルス、大手金融機関などエンタープライズ企業を中心に導入が進む。応答時間の15%短縮や新人の戦力化期間2週間短縮、債権回収でのROI(投資対効果)5倍など、定量的な成果を上げてきた。

日本進出に伴い設立された日本法人のVP兼日本カントリーマネージャーには、音声AI企業ElevenLabsの日本事業を率いた田村元氏が就任した。メディアブリーフィングに登壇したクレスタのアジア太平洋(APAC)担当ジェネラルマネージャー、アンドリュー・キャニントン氏は「日本は数十年間にわたり世界のテクノロジーや顧客体験の基準を築いてきた。一方で、人口動態に伴う深刻な人手不足やカスハラ防止措置義務化など現場の負荷は限界に近づいている。当社の会話型AI技術で高品質な接客を維持しつつ働く人を守る支援体制を構築したい」と参入の背景を語った。

▲クレスタのアジア太平洋(APAC)担当ジェネラルマネージャー、アンドリュー・キャニントン氏

◾「AIインザループ」で人を拡張 既存基盤を活かしカスハラにも対応

同社のソリューションは、①会話を100%分析して問い合わせ理由や課題解決状況を明らかにする「分析」、②AIエージェントが定型対応をシームレスに行う「自動化」、③オペレーターにリアルタイムで最適な回答や手順を提示する「支援」の3つの柱で構成される。既存のコンタクトセンター基盤(CCaaSやPBX/CTI)を刷新することなく、その上位層にシームレスに組み込める点が技術的な強みである。

コンタクトセンター業界ではコスト削減を狙った「AIによる人の代替」が議論されがちだが、同社は「AI対人間」ではなく「AIが人を支える」アプローチを徹底する。田村元氏は「AIが主体となる『ヒューマン・イン・ザ・ループ』ではなく、人間を中心にAIを組み込む『AI・イン・ザ・ループ』を目指す。入社1日目のオペレーターでもベテラン並みの対応を可能にし、人手不足の解消にとどまらずスキルアップや離職防止、さらには単なる問合せ対応から『顧客に信頼されるアドバイザー』への転換に寄与する」と説明する。

▲日本法人のVP兼日本カントリーマネージャーには、田村元氏が就任した

さらに、社会問題化するカスハラに対しても、AIが通話中の会話をリアルタイムで解析し、過度な要求や罵声を検知した段階で管理者にアラートを出したり、対話を自動中断・サポート介入したりする機能を提供する。法改正により従業員の保護措置が義務化されるなか、現場のオペレーターを守るセキュリティ基盤としても機能する。

◾大手企業やパートナー連携を軸に展開 11月に大型発表会を開催へ

今後の事業戦略では、複雑な問い合わせや大量の対話データを抱える金融・保険、通信、航空・旅行、B2C小売などのエンタープライズ企業を重点ターゲットに設定する。すでに国内の大手BPO企業や大手eコマース企業とのプロジェクトが進行している。販売展開にあたっては直接販売に加え、株主でもあるアクセンチュアをはじめとする大手コンサルティングファームやシステムインテグレーターとのパートナーシップを推進する。

日本法人の組織体制も急速に強化しており、営業、ソリューションエンジニアリング、導入支援、プロダクトマネジメントなどの専門人材の採用を本格化させている。田村氏は「前職のAI企業にいた頃から、日本市場に入ってきたら最も手強いと感じていたのがクレスタだった。日本の顧客が求める包括的なCX基盤を提供できる」と強い意気込みを示した。

▲クレスタの取り組みの概要

同社は2026年11月、大型イベントを開催し、国内での具体的取り組みや導入プロジェクトの成果を発表する予定だ。顧客対応の質の高さと深刻な労働力不足という二律背反の課題を抱える日本企業において、生成AIを活用した人中心の業務変革とCX向上への取り組みが国内コンタクトセンター市場の再編を加速させそうだ。

(ジョルダンニュース編集部)

記事提供元:タビリス