URALAA、光回線で8K没入ライブ商用化 体験型エンタメの輸出産業化

ジョルダンニュース編集部

映像技術スタートアップのURALAA(ウララ、北海道浦幌町)は2026年10月25日、一般的な光回線で8K解像度の没入映像を生中継する「8Kイマーシブライブ」の商用化に世界で初めて成功したと発表した。同日、東京都港区のベルサール虎ノ門で技術発表会を開き、兵庫県姫路市でのバレーボールSVリーグ公式戦の低遅延ライブ中継を実証した。同社はみずほ銀行の出資受け入れに加え、東急不動産ホールディングス(HD)やシダックス子会社と基本合意を締結。「技術・資金・立地・運営」を結集したオールジャパン体制で2035年までに全国51拠点を展開し、体験型エンタメの産業化を目指す。

◾一般光回線で8K生中継 機材と人員を劇的削減

 従来、8K超広角映像の没入中継には専用回線や中継車、専用機材が必要で、巨額コストが参入障壁となっていた。URALAAは独自の圧縮・伝送技術により、最大10Gbpsの一般的な光回線のみで安定配信する技術基盤を確立した。

 25日の実証では姫路市でのSVリーグ(ヴィクトリーナ姫路対PFUブルーキャッツ石川かほく)を撮影し、虎ノ門の横17メートル、高さ7メートルの大型LEDへ伝送。従来方式の中継が約50人を要するのに対し、同社は現地6名、受信側2名の計8名で完結させた。中継遅延も従来の30〜50秒からわずか3秒へ短縮した。

3面の大型LEDで中継されたバレーボールの試合を楽しむ人たち

 URALAAの辻木勇二CEOは「レンズから画面まで自社で垂直統合しボトルネックを解消した」と語る。中継準備も2日前からの機材設置で対応でき、機材費・通信費・人件費を大幅に圧縮して商業採算に乗せた。

URALAAの辻木勇二CEO

◾米巨大施設に対抗 「既存改修」で勝機

 世界のエンタメ市場では、観客が映像空間に包まれる「ロケーション・ベースド・エンターテインメント(LBE)」が急拡大している。
 米国では総工費約3400億円の球体施設「Sphere」(ラスベガス)や巨大ドームで中継する「Cosm」(ロサンゼルス)が先行するが、新設には数百億円規模の投資を要する。これに対しURALAAは、空間形状に合わせて映像を自動補正する特許技術「自動画角調整機能」を持つ。既存の映画館や劇場、ホテル宴会場などの箱型やドーム空間を改修して転換できるため、低コストかつ迅速な拠点展開が可能となる。

 共創パートナーの東急不動産HDでグループCX・イノベーション推進部統括部長を務める鳥巣弘行氏は、「当社の不動産開発・運営知見とURALAAの技術を掛け合わせ、街にいながら世界中の熱狂を共有できる新たな顧客体験価値(CX)をつくりたい」と述べ、渋谷駅半径2.5キロメートルの「広域渋谷圏」をはじめとする商業施設での常設展開を見据える。

◾「デジタル小作人」脱却へ 大手3社と連合結成

 新事業の背景には、日本のコンテンツ産業が抱える構造的課題がある。日本のアニメやゲームなど知的財産(IP)の世界的人気は高く、海外配信シェアは約3割と首位で、自動車に次ぐ輸出産業となった。だが配信基盤は海外メガテックに寡占され、多額の手数料を支払う「デジタル小作人」の構図に陥っている。

 みずほフィナンシャルグループ/みずほ銀行執行役員CBDOの中馬和彦氏は、「日本はコンテンツ力で勝りながら配信網を奪われた。『体験』は日本のお家芸であり、スクリーンの2Dから空間の没入体験へ移行する領域で主導権を奪還する」と強調する。

 URALAAは「技術・資金・立地・運営」の4要素を有力企業と固めた。資金面では2026年6月にXTech Ventures等から2.1億円調達後、8月にみずほ子会社のBlue Lab1号ファンドから4000万円を追加調達し累計2.5億円を確保。運営面では飲食や自治体施設運営に強みを持つシダックス・コミュニティープラスと提携した。同社の織原智昭社長は、「食とコミュニティ形成を融合させ、全国の自治体網を活かして地方創生につなげたい」と語る。

◾2035年に全国51拠点へ 地方創生とIP循環を狙う

 URALAAは2027年秋に都内に旗艦ドーム施設を開設し、主要都市を経て2035年までに全国51拠点へ広げる計画だ。コンテンツもスポーツや音楽、アニメなど2030年までに100本を揃える。同社は2019年に北海道浦幌町の廃校を活用した「デジタルの森」から創業し、森林総合研究所との共同研究で回復効果を実証した空間VRが原点にある。

辻木CEOは「チケット入手や遠征が難しいファンに『第3の特等席』を届け、コンテンツと街を結びつけて全国に熱狂を生み出したい」と意気込む。もっとも、急拡大には施設オーナーとの収益分配設計や有力IP獲得といった課題もある。また一般光回線による同時多発配信時の通信安定性担保や現地運用の標準化も問われる。

記念写真に応じる登壇者

海外勢が配信網を握るなか、体験価値を軸に日本発のプラットフォームを確立できるか。金融、不動産、施設運営の大手を巻き込んだ北海道発スタートアップの挑戦は、日本のコンテンツ産業再編の試金石となる。

(ジョルダンニュース編集部)

記事提供元:タビリス