なぜ「AI画像は気持ち悪い」のか 嫌悪感が止まらない一方で「デザイン会社」の倒産ドミノが始まった
2026/8/10 19:40 J-CASTニュース

AIが日常生活に浸透し始めている。メディアや広告をはじめ、企業がAI画像を利用する例も増えてきた。
便利さの一方で、AI画像には「どこか気持ち悪い」「理由は説明できないが不気味」「味気ない」といった反発が根強くある。企業広告では、消費者の拒否感が炎上騒動に発展する例も相次いでいる。なぜ人間はAI画像に違和感を持ってしまうのか。
「AIを使った広告」が炎上し続けるワケ
日本マクドナルドは24年8月、AIクリエイターと組み、AIで生成された女性キャラクターがフライドポテトを手にする広告動画を公開。肯定的な反応もあったが、「なんか不自然」「創作性が感じられない」といった批判の方が目立った。
25年12月には、サクラクレパスの子会社が、スペインのマンガイベントで生成AIによる販促ポスターを展示していたことが問題視された。画材メーカーがAIイラストを使ったことへの反発に加え、商品やロゴの描写も不正確だったため、同社は撤去と謝罪に追い込まれた。
26年5月には、化粧品メーカーのウテナが、スキンケアブランド「ウテナ モイスチャー」のPR動画を削除する事態になった。動画は生成AIで作られたが、登場人物やロゴなどが『美少女戦士セーラームーン』に似ているとの指摘が続出したためだ。同社は「既存の創作物の独自性や文化的背景に対する敬意を欠き、また既存作品を愛するファンの皆様の心情への配慮が不足していたことを深く反省しております」と謝罪した。
本物に近いからこそ「不気味」に見える
AI画像に感じる不気味さを説明する言葉として、よく挙げられるのが「不気味の谷」だ。人間に似せたロボットやCGは、似れば似るほど親しみやすくなる。ところが、本物に極めて近くなると、わずかな不自然さが目につき、かえって強い違和感や嫌悪感を抱かせるという現象だ。
米テキサス大学オースティン校の公式サイトでは、26年3月にデビッド・ハリソン研究担当副学部長が、AI画像は本物に近づいているが、手の形や光の反射、文字の崩れなどの細かい部分に小さな不自然さが残り、それが見る側に「不気味の谷」を感じさせる要因になると指摘している。
明らかに下手な絵なら、見る側も最初から作り物として受け入れられる。ところが、肌や髪、目の質感、背景まで写真のように精巧なのに、指の形がおかしい、目線が合わない、光の向きがおかしい──本物に近いからこそ、少しのずれが強烈に引っかかるのだ。
また、AIで生成されたイラストに関しては、似通った絵柄や色調、構図が大量に出回ることも違和感や嫌悪感につながる。低コストで作った画像が街やネット上にあふれれば、見た瞬間に「またAIか」「手を抜いたのでは」と判断される。さらに、生成AIが既存の作品を学習に使うことへの反発が加わり、拒絶感がいっそう強まる。
誰もがAI広告を嫌っているわけではないが、違和感や嫌悪感を持つ人が多いのも事実だ。生成AIの使用で目先の制作費を削った結果、「気持ち悪い」「雑に作っている」「創作への敬意がない」と思われれば、削減したコスト以上の代償を払うこともあり得る。
安くて早いAI時代、「デザイン会社」は倒産ドミノ
一方で生成AIは、デザイナーの仕事を本格的に奪い始めたようだ。東京商工リサーチは2026年8月2日、グラフィックデザインやインテリアデザインなど「デザイン業」の倒産が急増していると発表した。26年上半期(1~6月)の倒産件数は40件。前年同期から166.6%も増えた。
倒産した企業のうち、従業員5人未満が36件で全体の9割を占め、小・零細企業の苦境が見える。現在のペースが続けば、年間では11年の80件を上回る可能性があるという。
苦境の背景としては、紙媒体からデジタル広告への移行、住宅市場の不振によるインテリアデザインの需要減などが指摘されている。さらに、東京商工リサーチが不振の大きな要因に挙げたのが、顧客による「デザインの内製化」だ。生成AIなどの普及によってデザイン会社に頼らず、短時間かつ低コストで広告や画像を作れるようになった。
かつてならデザイン会社へ発注していたチラシや掲示物も、今では生成AIに文章で指示を入力すれば、それらしいイラストや実写風の画像がすぐに出てくる。レイアウトまで自動で提案するサービスもあり、飲食店のメニューやセール告知、地域イベントのポスターといった小規模案件ほど、デザイン会社に外注する必要性が薄れている。
AI時代になっても「人間の目」は必要
価格と速さだけで比べれば、人間がAIに勝つのは難しい。独自性を打ち出せない事業者を中心に、今後も淘汰(とうた)が続くと東京商工リサーチはみている。
一方で、AI生成物には著作権などの確認が欠かせない。問題を見逃せば、発注元のイメージまで傷つく恐れがある。AI時代となっても、権利面や品質管理まで担えるデザイン業者の存在感は、むしろ増す可能性があると同社は分析した。
このまま生成AIはデザイナーの仕事を奪っていくのか。それとも、AI画像への拒否感が広がることで、「人が生み出すデザイン」が再評価される日がくるのだろうか。









