会社での「肩書」を外したらあなたは何者ですか?何ができますか? キャリアの棚卸しに必要な「3つの問い」
2026/8/29 13:00 J-CASTニュース

8月は、夏季休暇を取得する人が多い時期です。帰省や旅行を楽しみ、日頃の疲れを癒やすことも大切ですが、まとまった休みは、自分のキャリアを見つめ直す絶好の機会でもあります。
まずは「会社名と役職を使わずに、自分の仕事を説明してみる」
ただ、「今後のキャリアを考えよう」と言われても、何から始めればいいのかわからない人は少なくありません。
そこで、まず試していただきたいのが、「会社名と役職を使わずに、自分の仕事を説明してみる」ことです。
「〇〇社の営業部長です」
「大手企業で人事を担当しています」
「課長として20人の部下を管理しています」
普段の自己紹介では、会社名や役職を伝えれば、相手はおおよその立場を理解してくれます。しかし、それらを外した途端、自分が何者なのか説明できなくなる人がいます。
これは、会社の肩書にキャリアを預けすぎている状態かもしれません。
大切なのは何を変え、成果を生み出したか説明できること
「部長をしてきた」だけでは伝わらない――。
ある企業で、長く管理職を務めてきた50代の社員がいました。部門長として数十人の部下を束ね、社内では誰もが知る存在です。本人も、これまでの経験には相当な自信を持っていました。
ところが、社外の人との交流会で仕事内容を尋ねられると、うまく説明できません。
「営業部門の責任者をしています」
「部下のマネジメントが中心です」
「経営会議にも参加しています」
どれも間違いではありません。しかし、相手が知りたいのは役職の説明ではなく、その人が「どのような課題を解決できるのか」「何を任せれば成果を出せるのか」ということです。
部長という役職は、その会社の中では価値を持ちます。しかし、社外に出れば、同じ役職名でも担ってきた仕事や責任の範囲はまったく異なります。
大切なのは、「部長をしてきた」ことではなく、部長として何を変え、どのような成果を生み出したのかを説明できることです。たとえば――。
「伸び悩んでいた営業組織の役割分担を見直し、若手が早期に戦力化する仕組みをつくった」
「部門間の対立を解消し、新商品の提案から発売までの期間を短縮した」
「離職が続いていた職場で、管理職との対話を増やし、組織の立て直しを行った」
このように説明できれば、その人の経験や強みが具体的に伝わります。
会社名や肩書ではなく、「解決してきた課題」で自分を語ることが、これからのキャリアでは重要になります。
社内の評価と社外の評価は同じではない
社内の評価と社外の評価は同じではない――。
会社で高く評価されている人が、必ずしも社外でも同じように評価されるとは限りません。
社内では、過去の実績や人間関係、所属部門の重要性なども含めて評価されます。長く在籍していることで、社内の事情に詳しいこと自体が強みになる場合もあります。
一方、社外では、その会社特有の事情に詳しいだけでは十分ではありません。
別の会社や業界でも再現できる能力なのか。環境やメンバーが変わっても成果を出せるのか。これまでの経験を、他の組織でも応用できる形で説明できるのか。そうした点が問われます。
これは転職を考えている人だけの問題ではありません。
一つの会社で働き続けるとしても、事業再編、組織変更、役職定年、出向などによって、現在の立場が変わる可能性はあります。生成AIの普及をはじめ、仕事の進め方も急速に変化しています。今の役割や評価が、この先もそのまま続くとは限りません。
だからこそ、会社の中で評価されることに加えて、社外でも通用する強みを意識する必要があります。
「キャリアの棚卸し」に3つのことを書き出してみる
夏休みに「キャリアの棚卸し」をしてみる――。
とはいえ、いきなり転職サイトに登録したり、資格の勉強を始めたりする必要はありません。
まずは、この夏休みに30分だけ時間を取り、次の3つを書き出してみてください。
1つ目は、「これまでに解決した課題」です。
売り上げを伸ばした、業務を効率化した、部下を育成した、職場の雰囲気を改善したなど、規模の大小は問いません。自分が関わったことで、何がどのように変わったのかを振り返ります。
2つ目は、「他の会社でも生かせる経験」です。
現在の会社でしか通用しない知識と、業種や組織が変わっても活用できる能力を分けて考えます。顧客との関係構築、プロジェクトの推進、部門間の調整、人材育成などは、社外でも評価される可能性があります。
3つ目は、「これから増やしたい経験」です。
過去の実績を整理するだけでは、キャリアは前に進みません。新規事業に関わりたい、経営数字を理解したい、社外の人と協働したいなど、今後身につけたい経験も明確にしておきましょう。
書き出してみると、「意外に多くの経験をしてきた」と気づく人もいれば、「社内の調整ばかりで、外に説明できる成果が少ない」と感じる人もいるでしょう。
どちらであっても、気づけたことに意味があります。
肩書があるうちに、その肩書を使って経験の幅を広げておく
肩書があるうちに、肩書の外へ出る――。
会社の肩書は、仕事を進めるうえで大きな力になります。役職があるから参加できる会議もあれば、会える人、動かせる予算、関われるプロジェクトも増えます。
問題は、肩書に依存することではなく、その力を自分の成長に生かさないことです。
管理職であれば、部門を越えたプロジェクトに参加する。社外の勉強会で自分の経験を話す。異業種の人と交流し、自分の仕事がどの程度通用するのか確かめる。部下に仕事を任せ、自分は次の課題に挑戦する。
肩書があるうちに、その肩書を使って経験の幅を広げておくのです。
長い休みが終われば、再び目の前の仕事に追われる毎日が始まります。だからこそ、少し立ち止まれるうちに問いかけてみてください。
「会社名と役職を外したとき、自分は何ができる人なのか」
すぐに答えが出なくてもかまいません。この問いを持つことが、会社任せではないキャリアをつくる第一歩になります。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ)/株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)、『決定版 「リーダーシップのコツ」をマンガでマスターできる本』(Gakken)









